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家族三人で異世界転移? 羊な車と迷走中。  作者: 澤梛セビン
一章 スワーレイド湖国
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17話 魔法と魔力の事情

やや説明回ですね。

 魔物素材と動物素材の査定が終わり、再び受付まで戻ってきていた。大物が多かったため、既に結構な時間が経っている。

 サラティナとオルフェナの商談も無事終わったようだ。


 歩きながら、受け取った内訳を見ると、細かい品目の評価やそれぞれの評価額が書かれていた。どれも評価が高いようで、買取金額のほぼ上限値が付けられているようだ。


 巨大な火吹きオオカミのヘルウルフ3体を始め、大きな毒蜘蛛のヴェノムスパイダー2体、これまた大きな牛のランペイジオックス1体、角付き兎のホーンラビット2体。

 さらにオルフェナはワイバーンも1匹狩っていた。


 どれも頭を一撃で貫いて倒したようで、他に目立った傷もなくきれいな状態だったらしい。

 さらにオルフェナの倉庫にかけられている時間停止のおかげか、置かれた素材が全て温かい状態なのも高評価の要因だったのだとか。

 畜産が弱いため、食用の肉に関してはどうしても壁外の魔物や、動物に依っているようで、今回のように新鮮な素材はありがたいのだとか。


 素材は全部で金貨43枚と銅貨20枚にもなった。

 正直、かなりの額だった。鉄貨を基準に換算すると、4300万にもなる。しばらくお金には困らなくて済みそうだ。この分なら家も買えるかな?

 買取を了承すると、査定してくれていた職員が、慌ただしく素材の運搬を始めた。



「それでは、こちらが金貨40枚と銀貨300枚、銅貨20枚になります。

 ご希望通り、金貨3枚を銀貨300枚に替えてありますが、篤紫さんたちであれば重さの心配は必要ないですね」

 篤紫はサラティナさんから袋を受け取ると、銀貨数枚と銅貨を自分の財布に入れて、残りをオルフェナの倉庫にしまってもらった。


「オルフェナさん、また空間拡張袋の件よろしくお願いします」

 去り際に、サラティナさんがオルフェナの横にしゃがんで耳打ちした。いや、耳打ちしようとしたが耳に届いていない。

 やっぱり絵面がおかしい。

 しゃがんだエルフが、足下の羊に声をかけている図。ものすごくシュールだ。


『わかった、篤紫を通して連絡をもらえれば、大きな問題はないだろう』

 問題だらけだと思うよ……。



 探索者組合を出る頃には、既にお昼をまわっていた。

 ユリネさんに近くの食事処を紹介してもらい、2人と1匹でお昼ご飯を食べることにした。もちろん、食事の会計は案内のお礼として篤紫が支払った。

 なぜかオルフェナもお礼として収納袋を渡していたが……。




 今日の用事も済んだので、今度は歩いて家に向かうことにした。冬とはいえ、日中は暖かい日差しが出ているので、お散歩にはもってこいだ。

 ちなみに朝走ってきたせいか、足の筋肉がつっていた。



「なあ、オルフェナ。収納魔法って難しいのか?」

 歩幅が違うため、隣で駆けているオルフェナに篤紫は尋ねた。


『いや、難しくはないな。だが、大変ではあるぞ』

「どういうことなんだ?」

『魔法を使うときに、魔力を消費することは知っておるな?

 単発効果で終わらせるのではなく、魔法の効果を維持する場合においては、継続して魔力を使い続けなければならないのだよ』


 ユリネが手に抱えている収納袋を指す。今日案内してもらったお礼として、オルフェナがユリネさんにプレゼントした物だ。

『その袋に魔術としてかけてあるのだが、時間停止と空間拡張魔術で10倍の容量を維持するためには、1時間当たり600の魔力を消費し続けなければならないのだよ。

 魔法よりも低燃費の魔術ですら、たくさんの魔力が必要だ』

 ちなみに、その収納袋は使用者登録をしていないのいで、まだ魔術が発動していない。


「でもそれだと、普通に魔力が枯渇するんじゃないか?」

『大丈夫であろう、魔族や魔獣の魔力は通常、1時間もあれば魔力0から満タンまで回復するからな。

 食物を摂取しないと、時間ごとに回復率は下がるが、普段であればあまり心配する必要はないだろう』

 最近魔族になった篤紫にはその辺の仕組みをしっかりと理解できていなかった。

 朝起きてすぐ、空腹の時に魔法が使えなかったことだけは、体感でわかってはいたが。



『それに篤紫は、生命力と魔力が、存在値を基準にして計算されていることは知っておるな?』

「いや、知らないよそんなこと」

『ふむ説明が必要か。

 魔族であれば、幼少の頃から普段の生活で魔法を使うだろう? そうして生活していれば、20歳頃には存在値が最低でも10にはなるはずだ。

 存在値は、魔法や魔術を使って世界に魔力を放出する対価として、徐々に増えていく、特殊なパラメータだな』

「確かにそのようですね、私でも存在値は20近くあります」

 ユリネさんが自分のソウルメモリーを見ながら応えた。

 あの氷の大魔法を使いこなしていたユリネさんでも存在値はその位の数値なのか……。


 さすがに篤紫は自分の存在値を告げる気にならなかった。存在値だけで777万8777もあると知られたら、絶対問題になる。

 無理でしょ。

 多いのは生命力と魔力だけだから、普段の生活で他人に漏れる心配はないが。


『それでだ、全ての生き物がこの世に魂をもって生まれたとき、生まれたての時点で能力値は全て5なのだよ。

 それから毎年、歳をとっていく中で、1年に5ずつ増加し、20歳で全ての能力が100になることは知っておるな?』

「いえ、さすがにそれは知りませんでした」

「もちろん、そもそも俺は知らんぞ?」

 オルフェナは何でそんなに知っているのだろう?


『ふむそうか、つまりはそういうことだ。

 そこに関わってくるのがさっきの存在値なのだが、生命力と魔力には存在値を積算する。そして計算された値が、実際の生命力、魔力として世界に認識されるのだよ。


 ちなみに他の能力値には、努力と経験で、経験値が加算される仕組みとなっておる。

 だから、同じ種族同士であればほとんど運動能力が変わらないわけだ』


 つまり、ただ生活しているだけでは本質的な成長ができないと言うことか。筋肉トレーニングをすれば筋肉が付き、勉強をしっかりすれば賢くなれると……当たり前のことを数値で表しているだけなのか。


『篤紫が前にいた、日本がある次元世界でも、この法則は変わらんよ。

 魔族や魔獣に関しては、さらに種族補正がかかるがな』

「ああ、だから運動会とかやっても、参加者の運動能力がほとんど変わらない理由なのか」

 マラソンは得意な方だったが、毎日辺境警備で体を鍛えているユリネさんに勝てないわけだ。

 むしろ、最近は運動不足だから、これを機会にちゃんと身体を鍛えないと行けないな。大量のお金も入ったから、何とかなるだろうし。



『話がそれたが、つまりはアイテムボックスなるものは再現できるが、それ相応のコストがかかると言うことだ。さらに収納魔法は、世界に魔力が還元されないから、魔力の無駄遣いになってしまうのだよ。

 もっとも、我は必要だからそのコストである魔力を捨ててでも維持しているのだが。車でも羊でも、もって歩ける体型ではないのだよ』

 そうか、物語のように簡単に収納魔法はできないのか……。


 それでも、オルフェナが収納魔術を使えるようなので、大きな問題は無いような気がしてきた。

 収納魔法の使い方としては、桃華や夏梛に見られたくない物をこっそり使うときに便利かもしれない。

 もっとも、今のところ隠してまで収納する物はないが……。



『あぁそうだ、篤紫がイメージしている普通の収納魔法は、睡眠をとると魔力が自然消滅するから、中の物を出しておかないと寝ている間に中の物がその辺にばらまかれたりするぞ』


 なん……ですと……?

 相変わらずの爆弾発言に篤紫の頭は真っ白になった。


オルフ『遅いぞ、篤紫。気合いが足らん』

篤紫「くっ……小玉羊に……負けはせん」

ユリネ「やっぱり、また走ってるし……」


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