お花摘み2
前回のあらすじ。
白百足(ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!(汗)
「大丈夫?! ……んん~……今のどっち!?」
私です、お母さん。
悲鳴(奇声)を上げたことで、母親組と姉妹が集まってしまった。
そんで、すんげぇ心配されてる……。
単にビビっただけなんだけど、原因は逃げてしまっていて説明のしようがない。
取り合えず、フローラちゃんと共に手足に虫刺されが無いかだけを確認されて、一件落着した。
「で、どうしたの?これ、綺麗ね♪」
捲り上げていた袖を戻し、お母さんの視線が私の左手に注がれる。
まぁ、気付くわな。
もう少し集めてからのサプライズにしようと思ってたんだけどねぇ、見られてしまったからには仕方がない。
「ん!♪」
香りを楽しんでいたという意図を理解してもらうべく、私はお粗末な花束をお母さんの顔に差し出した。
ガサ。
「むぐっ……」
と、距離を見誤り、鼻と口を塞いでしまった。
あっと、ごめん!
まさかの事態にビクッと開いた手から、花がパサパサとこぼれ落ちる。
「あああああ……」
緑の絨毯に色とりどりの花が散乱した。
やらかしたぁ……。
拾おうと慌ててしゃがみこ――
ゴッ!
「「んがぁ!」」
不意に、頭が強い衝撃に貫かれる。
体も弾かれ、景色は流れ……瞼を上げると私は、おでこに重い鈍痛を感じながら、地面を背に青い空を見上げていた。
雑草の枕が、耳元をカサカサ撫でてくすぐったい。
「ちょっ!?」
「なんっ、ええぇぇ!?」
エレオノールさんとクーテルさんの驚愕が視界外から耳に届く。
「っつうぅぅ……ぁあごめん! 大丈夫!?」
慌てて覗き込むお母さんの、痛そうにおでこを手で押さえている姿を見上げて、私はやっと事態を把握した。
どうやら私達は息ピッタリ親子だったらしい。
頭がぐわんぐわん揺れ、鉄臭さが鼻につく。
次第に、視界がグニャっと涙で歪んだ。
「ん~ぁぁああああああ~~~!!」
ついに、堪えられなかった幼い体が、私を置き去りに泣き始めた。
どうしてこうなった……。
なんかもう、色々と取っ散らかっちゃったよ。
暫く皆にあやされ、体がようやく泣き止んだ頃。 私がエレオノールさんとクーテルさんから、わざわざ拾い集めてくれた花を受け取る所を見ていたお母さんが、「あ、そっか……」と呟いた。
辺りを見渡し、背後にあった猫じゃらし似の稲科っぽい植物を一本摘む。
その様子に「あぁ~」とエレオノールさんが納得する。 何だろうか。
お母さんは慣れた様子で、手にした草の葉を除くと、稲穂と茎だけにし、私の手から花束をスルリと抜き取った。
「エメルナ、こういう時はこれでこうグルグルっと巻いて……ここで結べば、ほら♪」
おぉ!♪
細長い花弁の花を中心に、2本づつで囲んだだけの安直な組み合わせだったのが、稲穂が良いアクセントとなって見た目にも綺麗に纏った。
よく見ると花の配置が少し変わってる? 背の高い花は後ろへ、低いのは前へ。
花環みたい。(オープンした店の前に、お祝いで置かれてるでかいやつ)
巻く前に少し整えてくれたっぽい。 手際の良さからして、お母さんも相当なお花摘み経験者だな?
帰ったらこのまま花瓶に入れられるね。 いや、サイズからしてコップの方がしっくりくるかも。
「はい」
お母さんから花束を受け取る。
「んん。 あい♪」
受け取ってすぐ、私は改めてお母さんにその花束を差し出した。
「……」
「ん?」
何故かフリーズして動かないお母さん。
次は当たらないようにと気を使ってみたのだが……。
と、「……あぁ! そうだったね」と思い出したように再起動した。 忘れてたのか……。
改めて、お母さんが顔を近付けクンクンする。
さぁ、お花摘み経験者の感想や如何に。
「……うん……甘いね♪」
何だろう、今の間は。
「ねぇ、お母さんもエメルナと一緒にお花摘みしたいな。 良い?」
「あい!♪」
あれ? 体良く誤魔化されてね?
断る理由も無いので反射的に応えてしまったが、依然として奥歯に物が挟まったように何かが引っ掛かる。
いやまぁ、物珍しさだけで手にしていたから、何一つ気にする必要は無いんだけどね。
そっかぁ、微妙だったかぁ。
残念。
考えてもみれば、私は個々の色や香りを楽しんでいたから気にならなかったけど、ラムネ+桜+バニラ+レモン+蜂蜜なんだよな。 甘ったる過ぎて胃にもたれそう。
うん、これは一人で楽しんでれば充分なやつだわ。
次だ次。 今日という日はまだまだ一杯あるんだから、切り替えていこう!
理由はともあれ、やっと皆揃ったんだし。
本当のお花摘みはこれからだ!
「じゃぁ、皆で遊ぼっか♪ 良いですよね、クーテルさん、エレちゃんも」
「はい♪」
「もちろんです♪」
お母さんの提案に、笑顔で頷く母親二人。
さすがだ、もう主導権を握っていらっしゃったとは。
娘としてその手腕、しっかり見習わないとね。
・ ・
それから暫く、私達は7人でお花摘みを楽しんだ。
手を繋ぐ姉妹とその後ろにクーテルさん。 手を繋ぐ私とフローラちゃんペア、の後から付き添うお母さんとエレオノールさん、ってな形で。
基本、自主的に行動させてもらっているのだが、たまに「こっちに良いのあるよ」とか「おーい、ここ♪ ここ♪」とサポートを入れてくれている。
ありがたい。
そうそう、姉妹と行動を共にしてみて、一つ気付いた事がある。
姉妹は良さげな花を見付けると揃って歩み寄り、一旦手を離して物色する。 そしてそれぞれが花を選び終わると、わざわざ手を繋ぎ直してから歩き出すのだ。
どうやら歩く時は手を繋ぐのがルールっぽい。
迷子対策? いずれ参考にさせてもらうとしよう。
にしても付き添いとは言え、いい大人なお母さん達にはお花摘みなんて退屈だろうなぁ……なんて気がかりだったんだけど、見た感じそうでもなさそうなんだよね。
懐かしさからか、まるで童心に還ったように頬が緩んでいらっしゃる。 さすがに摘んではいないけれど。
もちろん私も。
元来植物好きということもあってか、この歳(精神年齢)にも関わらず気兼ね無く満喫できている。 超ありがたい。
今なんて二つ目の花束を作っている真っ最中だ。 最初のは形を崩したくないので、お母さんに預かってもらっている。
だってあそこから修正できる自信無いもん。
さっきのは物珍しさ重視、こっちは香り重視ってことで。
量や組み合わせごとに香りが変化するので、気に入ったアロマを自分で作れるオリジナリティが面白くなってくるのだ。
けど、理由はそれだけじゃない。 やっぱりお母さん達が加わるってだけで、全然違うもんだね。
例えば……
「ぁあ見て見て皆! ほらアレ♪」
クーテルさんが遠くを指差す。 そこでは2頭の青い蝶が追いかけっこでもしてるかのように、花咲く草原をステージにヒラヒラと舞い踊っていた。
おぉ! 足元ばかり探してたから全然見えてなかったよ。
良いねぇ♪
ただでさえ華やかなのに、そこに『動き』が加わることで目にも楽しくなった気がする。
ホント、新鮮な発見が多くて飽きる暇がない♪
文字通り、眺めているだけで何時までもボーっとしていられそうだ。
――とまぁこんな風に、ちょっと顔を上げるだけでもまた違う魅力に出会えたのは、偏に視点の高いお母さん達のおかげだろう。
最初っからこうしてりゃ良かったんだ……。
「皆、あれは何て名前だったっけ?」
クーテルさんの問い掛けに、姉ちゃんが「チョーチョー!」と手を上げる。
なに?突然。
「チョーチョー!」
僅差遅れで、妹ちゃんの手も主張するようにピンッと上がった。
なんか我先に感が、餌に背伸びする雛鳥みたいで幼可愛い。
「二人共せ~かい♪ じゃぁ、はい、ご褒美ね♪」
と二人の頭を軽く撫で、クーテルさんはいつの間にか手にしていた紙袋から、コロコロと丸いお菓子を二人の手に乗せていった。
白っぽい……パンケーキみたいに美味しそうな焼き色をしている。
一粒口に入れて「ンフフ♪」と満ち足りた笑顔で華やぐ姉妹。
イルカの調教師かな?
「へぇ~、そうやって物の名前を?」
目新しい教育アイデアにお母さんが食い付く。
「あっ、はい。 と言っても、理解している言葉だけで遊んでいるので、教育というよりは遊びがメインなんですけどね」
「充分でしょ。 ただ暗記しようとするよりも断然覚えやすいんじゃない?」
だね。
私も、真剣に努力するよりは、楽しい方が記憶に残りやすいタイプだ。
118種類だったかの元素記号より、807匹いたポケ○ンの名前とタイプと弱点をほぼ暗記していたみたいに。
暗記系科目を対戦ゲーム化出来ないもんかね。
クーテルさんが腰にぶら下げていた革袋に、お菓子の紙袋を仕舞いながら振り返る。
「あぁ~……そうかもですねぇ。 やり初めてからは頻繁に『アレ何?』『これ何?』って聞いてくるようになりましたから」
玩具や果物なんかを指差して『ママッ! コレ何?♪』と聞く姉妹を容易に想像出来て軽く萌えたんですが♪
こりゃぁ、教える方も毎日が楽しいだろうな。
……にしても、さっきから視界の隅でお菓子をモグモグしている姉妹が気になって仕方がない。
即答してた割りに、早い者勝ちじゃないんだね?
この歳の子を競わせてギクシャクさせるよりはマシだけど。 ……にしては何であんなに食い気味だったんだろ。
女の子って男子よりは競争心が薄く、平和的にほのぼの遊んでるイメージだったんだけど。
お姉ちゃん的にはどう思う?
聞かれたお姉ちゃんが、少し姉妹を見詰めて首を傾げる。
(多分、『私知ってるよ!♪』って教えたかったんじゃない?)
あぁ~。
なんて言うお姉ちゃんも当てずっぽうらしいけど。
にしては的確だな、さすお姉。
なんか分かるわぁ。
知ったこと、覚えたこと、出来るようになったこと。 自分の成長を喜ぶ親の顔が見たいっていう、あの感覚。
自慢とは違うぞ。 強いて言うなら『嬉しさの共有』かな?
自分の嬉しいで相手も喜んでくれるのって、もっと嬉しくなるもんだよね。
姉妹も丁度、そんな時期なのかも知れない。
せめて、お菓子欲しさじゃない事を祈るばかりだ。
って、あっ!
振り返ると、いつの間にか蝶の姿は見当たらなくなっていた。
しまった……。
姉妹の大声に警戒されたか、それとも単に目を離していたためか……せっかくのステージが、いつもの花咲く草原へと戻っている。
もうちょっと見ていたかったのに……残念。
次はガン見してよう。
「あっ! こらぁ、指噛まないの」
エレオノールさんの声に隣を見ると、自分の親指をモグモグしているフローラちゃんが目に入った。
姉妹に食欲を刺激されたらしい。
奇遇だな、私もだよ。
てことで、私もこれ見よがしに人差し指の第二関節をハムハムしてみる。
お母さんと目が会う。
「何で真似してんのよ」
半笑いでつっこまれた。
口が寂しいからだよ!
常日頃から間食をしてこなかった弊害か? でも咳だと喉が渇いたって受け取られそうだし、ぐぬぬ……。
「あぁ~、ごめんなさい、お菓子食べたくなっちゃいましたかね?」
クーテルさんが私とフローラちゃんの異変に気付き、申し訳なさそうに眉を八にする。
そうだ!
クーテルさんから貰おう。 まだ残ってた筈だし、付け込むようで悪いけど今なら察してくれそうだもん。
ついでに味見もできて一石二鳥だし♪
そうと決まれば、新必殺『上目遣いおねだり』で……。
とここで、お母さんが動く。
「クーテルさん、私達おやつ持ってきてないから、良ければさっきのを少し分けてもらえたりって出来ない?」
お!? ナイス!
私の出る幕じゃなさそうね。
親からの申し出なんだ、これならクーテルさんも安心して……。
しかし、そんなクーテルさんの表情は難しいままだった。
「ん~……すみません。 これ他人にあげると、二人共すごく機嫌悪くなっちゃうんですよ。 一日分の量を決めてますから」
「あらら、じゃぁ仕方ないね」
あっさり折れたのはお母さんの方だった。
姉妹を出されては付け入る余地も無い。
ガクッ↓。
詰んだぁ。
期待からの急転落に項垂れる。
いくら歳上でも、幼児から数量限定のお菓子を恵ませる程、私の食欲はぶっ壊れてなどいない。
もうこうなったら、そうだな……出来る事と言ったら甘ったるい花束でも嗅いで脳を誤魔化すくらいか?
フローラちゃんにも効くと問題解決なんだけどね。
そんな思いで、お母さんに預けた最初の花束を見詰めていると、その視線に気が付いたお母さんも、私の花束に視線を下ろした。
「なら……エレちゃん、久しぶりにアレ探そっか♪」
お母さんの代案に、エレオノールさんが笑顔で頷く。
「アレですかぁ、子供の頃以来ですねぇ♪」
「お腹は膨れないけど、ここに来るとアレばっか探してたもんね、二人して♪」
昔を懐かしみ、可愛く笑うお母さん達。
ん?
アレって?
やっと更新できましたよ……
一回休憩しないとまた更新遅れそうなので、好きな小説で脳をリセットしてから続き書きますわ。
ブックマ16人になってて驚きました。 飽きられないよう頑張ります。
でわノシ




