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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

フリヰクス

作者: 永久野 和浩

○登場人物

岸村久繁

久子

蟹助

紅太郎

イヌ

イワ

蛇苺

昭吉

みつゑ

【第一場】


遠くの方から、祭り囃が聞こえてくる。

明転。

おどろおどろしい雰囲気のたたずまい。

廓のような赤い檻。その檻の中に、彫刻かなにかのように目を閉じて奇人達が並んでいる。

胴体で繋がったシャム双生児の少女たち、蛇肌の軟体中国女、碁盤の上で剣を持ち佇む半陰陽。

檻の前に、香具師の蟹助が立っている。その手に指は2本しかない。

妖しい音楽が流れてきて、中国女が踊り出す。

同時に蟹助が口上を述べ始める。


蟹助「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。

こちらに並んだ娘たち。

見目麗しい器量の影に背負ったふかぁい深い業。

神の悪戯か仏の罰か、先祖の因果が報いたか。

報いた果てのこの姿、どうぞとくとご覧あれ。

お代は見ての帰りだよ、さあさあさあさあ押さない押さない。

じっくり見てって貰おうじゃないか、見れば末代までの語り種。

まずは遠路はるばる大陸からきた別嬪さん。

親は宮廷専属の芸事師で、その親から譲り受けたこの体の軟らかさ。

しかして哀しいかなその体はオロチに勝るとも劣らぬ悍ましい鱗で包まれているのでございます。

なんでもこの娘の親は、仕えた主の命により、何匹ものオロチを芸の為に引き裂いたとか…

さあさあ踊るよ娘が踊る。

キラキラと光る鱗がなんともなまめかしいじゃねぇか」


中国女が踊りながらシャム双生児のほうへ向かう。


蟹助「お次はこちらの双子の少女。

同じ日、同じ腹から生まれた二人は、顔も体も瓜二つ。

しかし、よおっく目をこらしてご覧いただきたい」


中国女がシャムの間に割って入ろうとする。

顔をわざとらしくしかめるシャムの二人。

女の体は途中で止まる。

一度抜けて、今度は手を差し入れる女。

双子の体が繋がっていることを主張する。



蟹助「脇腹で繋がっているのでございます。

母の腹から生まれ出る時に離れがたいと思うたか、二人にもなれず一人にもなれず。

さあさあよくご覧下さい。ちゃあんと皮膚で繋がっております。

二人で同じ血を共有しているからか、二人は感覚も共有しております」


蟹助はシャムの片方の腕をつかむと、持っていたキセルの灰を捨てて、キセルを腕に押し当てる。


イワ「…ッ!」

イヌ「あああああッ!!」


蟹助、二人の反応を確認するとキセルを離す。

中国娘が腕を捧げ持ち、ぴちゃぴちゃと舐める。


蟹助「…可哀相に、二人の親は、この異端児を産んでから気を患い、今も病院に隔離されておるのです。

哀れな二人は健気にも、母の病を治すため、引いては自らの業のため、こうして自らを見て貰い、治療代を稼いでいるのでございます。

さあさあさあ、とくとご覧下さい!」


中国娘が踊りながら、今度は半陰陽の方へ。

半陰陽、持っていた日本刀を鞘から抜き、中国娘に切り付ける。

ひらりとかわす娘。

半陰陽はそのまま碁盤の上で刀を持ち踊り始める。

その間、娘はストップモーション。


蟹助「さあ踊り始めましたるは、碁盤の上で踊れる程の小さな娘でございます。

ただの娘ではございません。…いや、娘と言うのが正しいのかどうか…。

なんとこの者、娘としてのしるしも、男としてのしるしも持ち合わせておりません。

足と足の間には、何もないのでございます。

娘として愛されることもなく、男として愛しいものを抱くことも出来ぬ、哀れな愛の亡者でございます」


踊りを不意に止めた半陰陽。

娘が半陰陽の着物の裾をめくりあげ、ふとももまであらわにする。


蟹助「いかがです、この白い御足。まるで娘のようではありませんか。

…おや、疑っていらっしゃる?よろしい、ではそこのお兄さん」

岸村「…は、はい?」


客席に座っていた岸村、突然声をかけられて驚く。


蟹助「そーう、貴方。ちょっとこちらへ来ていただけますか」


手招きされて、おずおずと舞台上へ上がる岸村。


蟹助「はい、ありがとうございます。ではちょっと、お手を拝借…」

岸村「うわあ!」


岸村、蟹助の手に驚いて、一度取られた手を振り払う。


蟹助「ひゃっははは!驚かれましたか!

なに、たいしたこたぁありません。あたくしも同じ穴のムジナってわけでさぁ」

岸村「は、はぁ…(イラッ)」

蟹助「どれ、驚いているところ申し訳ありませんがね…」


蟹助、強引に岸村の手を取り、紅太郎の股間に押し付ける。


岸村「ぎゃあ!…え?まさか、そんな…本当に?」

蟹助「えーぇ、本当ですとも…」


蟹助は紅太郎の着物の裾をまくりあげて、股間を見せる。

息を飲んで凝視する岸村。


紅「…おい」

岸村「…え?」

紅「いつまで見てやがる」

岸村「あ、ご、ごめ…!」


岸村、気がつくと紅太郎に刃先を向けられていた。


岸村「ひいぃ!」


慌てて転がるように舞台から降り、席に戻る岸村。

蟹助はクツクツと笑っている。


蟹助「さあさあさあさあよってらっしゃいみてらっしゃい!お代は見ての帰りだよ!」


そこに、男に車椅子を引かれた、手足のない女がやってくる。

奇人たち、道を開けて二人を通す。

車を押すのは、人間にそっくりなからくりの活人形。

二人は、中央でたちどまる。


久子「ようこそ!宵闇白幻一座へ!」


暗転



【第二場】


翌朝の見世物小屋。

早朝の誰もいない境内の中、岸村が一人見世物小屋をまじまじと眺め回っていた。


イワ「こっちこっち!」


岸村、イワの声に驚き、物影に身を隠す。

シャムのイヌとイワが紅太郎の手を引いてやってくる。


イヌ「ほら、早く!」

紅「ちょ…イヌ、イワ!いいよ、自分で出来るから…」

イワ「だぁーめ!そういってこの前紅太郎が自分でやった化粧は酷かったじゃない」

見れたものじゃなかったわ。一応性別不明が売りなんだから、それらしく見えなくちゃ」

イヌ「紅太郎の化粧は私達の仕事なんだから、観念なさい!」


紅太郎、舌打ちするも二人に従う。

イヌとイワ、紅太郎を座らせて化粧道具を開く。


イワ「そうそう、そうやって大人しくしてて頂戴。私はあんたなんかより早く昭吉を見てやりたいんだから」

イヌ「イワは本当に昭吉がすきね。私にはあんなからくり人形の何がいいのかわからない」

イワ「あら、昭吉はただの人形じゃないわ。精密機械であり、人間に似せて造られた芸術作品でもあるわ。モダンだと思わない?」

イヌ「どちらかというと前衛的ね。シュールだわ」

イワ「ちょっと、どういうこと!?」

紅「シュールだろうがモダンだろうがどっちだって構わないだろう。それを言ったら俺らなんて全員前衛的だ」

イヌ「はは、確かにね」

イワ「紅太郎まで!もう…」

イヌ「紅太郎、顔をこっちへ向けて。紅をさすわ」


紅太郎の頤に手を添え、口紅を塗ってやるイヌ。


イヌ「紅太郎は肌が綺麗ね。羨ましいわ」

イワ「本当ね。とてもきめの細かい肌だわ。おんなじゃないなんてとても思えない」

紅「嬉しかねぇよ」

イヌ「そう?でもこの肌を触れるの、私は楽しいわ」

蟹助「おーおー。どこのお嬢さんたちかと思えば、シャムの二人と紅じゃねえか」


そういいながら、蟹助がやってくる。


イヌ「兄さん」

イワ「兄さん」

紅「…蟹助」

蟹助「おう、イヌにイワ。おはようさん」

イヌ「お早うございます」

イワ「お早うございます」


紅太郎、蟹助に背を向ける。


蟹助「なんだ?そっちのお嬢さんはシカトか?」

紅「うるせえぞ、口先だけの蟹男」

イヌ「ちょっと、紅太郎」

蟹助「おお、こわいこわい」

紅「冷やかしにきたならとっとと戻れ」

蟹助「可愛いげがねえなぁ。吉原にでも行って媚の売り方でも教わってきたらどうだ」


紅太郎、蟹助に無言で歩み寄り、唐突に一発殴る。


イワ「兄さん!」

イヌ「紅太郎!」

紅「黙れよ。その減らず口、二度ときけないようにしてやる」

蟹助「あ?上等だやんのかコラ?娘っこの分際で何が出来る」


再び蟹助を殴る紅太郎。今度は蟹助もやり返す。

喧嘩をおっぱじめる二人。


紅「てめえ、大体なんだ昨日の口上は!愛の亡者だの何だの人を売女扱いしやがって!」

蟹助「てめえなんぞが踊ったところで面白みなんかありゃしねえんだよ。

付加価値を付けてやってるんだ、有り難く思いやがれ!」

紅「なんだと!?」


喧嘩しているのを見てオロオロするイヌとイワ。岸村もハラハラしながらそれを見ている。


イヌ「ど、ど、ど、どうしようイワ!」

イワ「えええええ、そんなこといっても…」

イヌ「止めたほうがいいのかなぁ」

イワ「私達に何が出来るのよ」

イヌ「それもそっか…」

イワ「それよりさ、どっちが勝つか賭けてみない?」

イヌ「あ!それいいかも!あー、でも兄さんの圧倒的勝利になっちゃうんじゃない?」

イワ「いやぁ、わかんないわよ。ああ見えて、紅太郎だって逞しいんだし」


岸村、一人物影でオロオロしている。

そこに、背後から突然蛇苺が現れて、岸村に絡み付く。


岸村「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!!」


全員、動きを止めて岸村に注目する。

しまった、という表情をする岸村。


蛇苺「大哥ダーグー小姐シャオジェ。コイツあやしいアル。ここ隠れてたよ?」


大哥ダーグー兄さんの意。蛇苺はこれを肉親以外の年上男性に使う。

小姐シャオジェお嬢さんの意。同じく、肉親以外の女性に使う。

…が、舞台では解りにくいので単に名前で呼ぶようになるかも。


岸村「いや!僕はけして怪しいものでは…!」

蟹助「…なんだ?おまえ」


素早く歩み寄るシャムの二人。

岸村の至近距離に迫る。


岸村「うわっ…」

イワ「兄さん、こいつカメラ持ってるよ」

蟹助「カメラ?」

岸村「いや、これはそのなんというか」

紅「そいつ、見覚えがあるぞ。昨日の公演中に客席から引っ張りあげて俺の股間を触らせた奴だよ」

蟹助「へえ、よく覚えてるな」

イヌ「その人がこんなところに隠れて、一体何を撮るつもりだったの?」

岸村「ええと、それはですね」

蟹助「答えようによっちゃぁ…」


短刀を抜く蛇苺。刃先を岸村にちらつかせる。

固まる岸村。


蛇苺「…ちょと痛い目見て貰うヨ?」

久子「いいかげんにしねぇかてめえら」


昭吉に車椅子を押されて久子がけだるげにやってくる。


久子「ったく、朝っぱらからなんなんだい騒々しい」

イヌ「姉さん」

イワ「姉さん」

蟹助「おはようごぜえやす、久子さん」

久子「蟹助、何の騒ぎなんだい?」

蟹助「いや、昨日の客の一人がここに隠れてたんでさぁ」

久子「公演中でもないのに一般人脅かしてんじゃないよ、

そうでなくても肩身が狭いんだからサ」

蟹助「それが、カメラを持ってまして」

久子「ふうん…?」


久子、岸村を一瞥する。

岸村、一瞬ひるむが、久子を見つめかえす。


久子「兄さん、何もんだい?新聞記者か?」

岸村「いえ…」

久子「じゃあ、活動写真でも撮りにきたかね?

道楽で持つにしちゃあ立派なカメラじゃないか」

岸村「家が、写真屋で…このカメラは父が仕事で大陸に行った時に、僕に買ってくだすったものです」

紅太郎 はん、お坊ちゃんってわけか」

蟹助「なんだ、ひがみか?」


紅太郎、蟹助を睨んで舌打ち。

蟹助、睨み返す。

因縁をつけあうふたり。


久子「やかましいぞ、てめえら」

蟹助「へぇ、すいやせん」

久子「ったく、うちの連中は血の気が多くていけないね。で、その写真屋の息子がうちに何の用だい」


しばし沈黙する岸村。

小屋の人間達、じろじろと岸村を凝視する。


岸村「…撮らせて欲しいんです。

僕はステイタスのためにカメラを持ってるんじゃない。撮るためにもっているんだ。

僕はあなたがたを撮りたい!」


一瞬の沈黙。

やがて、久子が笑いをこらえるようにくつくつと笑い出す。

同じようににやにやする蟹助。

意味がわからず眺めるシャム。

冷たい目で岸村を見る紅太郎。


岸村「な…何がおかしいんですか!」

久子「くっくっくっ…いや、あぁ、うん。悪かった。

するってえと、あれか。おまえさんはただ単純にうちらを被写体にして写真を撮りたいって事か」

岸村「そうです」

蟹助「その写真は、何かに使うあてはあるのかい?」


蟹助にそう聞かれて、はっとする岸村。


岸村「…考えてませんでした」


いよいよ笑いが止まらなくなった久子。

声を上げて泣きそうな程笑う。

蟹助も冷静を装ってはいるが、口もとを隠して笑っている。


久子「おもしろいなぁ、おまえさん」

蟹助「それじゃ、お坊ちゃんと言われても文句は言えねぇな」

岸村「え?」

久子「面白いな、うん、面白い。いいじゃねえか。勝手に撮るがいいさ」

岸村「あ、ありがとうございます!」

久子「ただし!ただで撮らせるわけにはいかねぇな。

うちらの一座がこの街で興行するのは三日間。その間、ここに住み込みで興行の手伝いをしてもらおう。なんせ、このなりの寄せ集めだ、人手はあればあるほど助かるんでね」

岸村「願ったりです!舞台裏も撮らせていただけるってことですね!?」

久子「…ハァ?」

岸村「よろしくお願いします!」

久子「あ、あのな…。…あー、まぁ、いいか」

蟹助「…すげえポジティブシンキング」

久子「まぁ、そういうの、嫌いじゃねえよ。

あたしは久子。宵闇白幻一座の座長だ。後ろであたしの車椅子を押してるのが昭吉。こいつぁからくりの人形でな。シャムの片割れのイワが面倒を見てる。イワはそういう作業が得意だ。

後は昨日の興行に出ていたからわかるだろうが、口上師の蟹助、軟体蛇女が蛇苺シャーメイ、シャム双生児のイヌとイワ、半陰陽の紅太郎だ。この7人で興行をやってる」

岸村「僕は岸村です。岸村久茂と申します」

イワ「岸村…あー!ひょっとして岸村写真工業の!?

あそこの社長のカメラコレクションは有名よ。私も一度見てみたいわ」

岸村「…社長は父です。つまらない道楽ですよ」

紅「いいじゃねぇか。カメラ一台に家一軒分の金がかかるって聞いたぞ。

そんなもんを収集できるぐらいの財力を持ってるんだ。なんの文句がある」

岸村「だからこそ、です」

久子「まぁいいじゃねぇか紅太郎。そう突っかかるなよ。

蛇苺。岸村を奥へ連れてって、作業を教えてやりな」

蛇苺「シー


蛇苺、ニヤリと笑い、岸村の手をとる。

苦笑いしながら、ちょっとひるむ岸村。

そのまま、小屋の奥へ。


久子「あぁ、イワ。紅太郎の準備が終わったら(昭吉を目で指して)こっちを頼む」

イヌ「えぇ~…」

イワ「はぁーい!」

久子「そう落胆するな、イヌ。お前に頼むこともちゃんとある」

イヌ「まったく、体が二つあったらいいのに!」

イワ「同感だわ」

蟹助「ははは、ちげえねぇ」


和やかな空気の中、紅太郎だけが不機嫌そうにしている。


紅「姐さん、なんであいつに撮影を許したんだ。あの道楽息子はただ俺たちが物珍しいから撮りたいだけじゃないか」

久子「それになんの文句がある、紅太郎。

物珍しい、大いに結構。それがあたしらの売りだろう。それをわざわざ撮りたいって言ってくれてるんだ、光栄じゃねえか」

紅「俺は姐さんみたいに達観できない!

イヌやイワ、蟹助だって、この奇形がなければ普通の生活を送れたと思わないのか?親が普通の体に産みさえすれば、こんなところで体を見せて生きることもなかったのに、その親に売り飛ばされて…!!」

蟹助「紅太郎!」

久子「いい、蟹助。その通りだ、紅太郎。お前はあたしが、お前の親から買ったんだよ。

だからグダグダと文句を言う暇があったら、その分しっかり働け」

紅「…ちっ、話にならねぇ」


紅太郎、そういい捨てるとその場を走り去ってしまう。


イヌ「紅太郎!」


そういって追いかけようとしたイヌのせいで、イワもバランスを崩す。


イワ「ちょっと、イヌ!」


イヌとイワ、転ぶ。


イヌ「いたたた…」

イワ「もう、だから言ったのに!」

イヌ「ごめんなさい、イワ…」

イワ「ほら、立って。紅太郎を追いかけるんでしょ?」

イヌ「イワ…うん!」

イワ「もー、だから体が二つ欲しいのよ!」


そういいながらも、2人で紅太郎を追いかけるイヌとイワ。

それを目で追う久子。


蟹助「姐さん…すいやせん。あたしもちょっと紅太郎を挑発しすぎました。ふて腐れていたんでしょう」

久子「かまやしねえ。おまえのせいじゃねぇよ、気にすんな。

さて、それじゃあちょいと帳簿でも開こうかね。昭吉、寝室まで頼むよ」


昭吉、大きく頷いて久子の車椅子を押す。



【第三場】


昭吉に連れられて、控室のような小部屋にやってくる久子。

久子は車椅子から降りて、机の前に座る。

着いて来た蟹助はその隣にすわり、キセルをふかしはじめる。


久子「ありがとう、昭吉。イワは暫く戻らないだろうから、お前も休んでいて構わないよ」


昭吉、久子をじっと見つめた後、大きく頷く。

部屋の隅で横になり、胸の前で手を組んで、目を閉じる。


蟹助「しかし、あたしも不思議には思ってるんでさぁ」

久子「何がだい?」

蟹助「なんであの男を受け入れなすったんで?」

久子「…さぁてねぇ、あたしも結構適当で、思いつきで物事を決めるからねぇ」

蟹助「あんまり褒めれたもんじゃねぇですよ、それは」

久子「ただ、なんとなくね。

あいつはへたれているようにこそ見えるが、案外面白い奴なんじゃないかと思ってさ。そこに興味を持ったんだよね。

それに、純粋に楽しみでもあるよ。写真という媒体に、あたしらがどう写るのかっていうのも」

蟹助「そうですかい?」


そこへ、蛇苺がやってくる。


蛇苺「大姐」

久子「なんだい、蛇苺。さっきの兄さんはどうした」

蛇苺「王さん来たアル」

久子「王が…?」


蛇苺の後ろから王がやってくる。


王「や、どーもどーも。お邪魔しますよ」

久子「旅芸人を追いかけてくるたぁ、そちらの組はずいぶんとお暇なんですなぁ、王さん」

王「そんな意地悪を言わないで下さいよ、座長さん。あなた方を探すのにこちらは毎回苦労してるんですから」

久子「そんなの、あたしらの知ったこっちゃないですよ。そちらが勝手に探して勝手に苦労してるんじゃないですか」

王「あいたたたた、手厳しいなぁ」

久子「なんの用ですか。今月分の返済はまだ先の筈でしょう」

王「またまた。この前お話したじゃあないですか」

久子「その話ならお断りしたはずですよ」

王「そこをなんとかー。もう少し考えていただけませんかねぇ?」

久子「しつこい男性は嫌いです」

王「いいじゃないですか。悪い話ではないでしょう?」


岸村、手持ち無沙汰になったのか、箒を手にして入ってくる。

そこで、王と久子の会話を耳にする。


王「こちらが提供する人材を、少しの間預かっていて欲しいだけですよ。

こちらの人手も足りますし、それで借金も減らすと言っているんです。どうですか?」

久子「とっとと帰れ!」

王「…おお、怖い怖い。つれないなぁ」

蟹助「…王さん。借金は最初の取り決めどおり、毎月お支払いいたしやす。

こちらとしては、それを変えるつもりはありやせん。お引取り願えませんかね」

王「仕方ないですねぇ…。

まぁ、ただのご提案ですんで、頭の片隅にでも入れておいて下さいよ。何かの時にでも思い出していただければいいんで。

それじゃあ、今日はこれで失礼しますね」


王、久子たちに軽く頭を下げて、踵を返す。

蛇苺の横を通り過ぎて立ち止まり、ちらりと蛇苺のほうへ振り返る。

首をかしげる蛇苺。にやり、と笑う王。

また前を向いて、立ち去る王。


久子「蟹助!塩まいときな!」

蟹助「へい」


蟹助、塩の入った壷を手にして、王が去ったほうにパッパッと撒く。

さりげなく、蛇苺もその場を去る。


岸村「…今のは?」

蟹助「まぁ…なんつうか…ヤクザさんだな」

岸村「へえ…ぇええ!?」

蟹助「本当に面白れぇな、お前さん」

岸村「全然、そんなふうには見えませんでしたが…」

久子「もんもん彫ってるばっかりがヤーさんじゃねえんだよ」

蟹助「まぁ、ここもまともな稼業じゃねえからな。金を工面しようとしても、まともなとこは相手もしちゃあくれねえのさ」

岸村「でも、今ちょっと話を聞いていたんですが…」

蟹助「あ?」

岸村「今のお話…そこまで拒むような内容なんでしょうか?別に、こちらに不利益はないように感じたんですが…」


蟹助と久子、目を合わせる。

溜息をつく久子。肩をすくめる蟹助。


岸村「え?え?え?なんですか?僕、なにかおかしいこと言いました?」

蟹助「岸村も後継ぎがこれじゃあ、先が思いやられるな」

岸村「…関係ないでしょう」

蟹助「いいか?相手は派遣会社じゃねぇ、ヤクザさんなんだ。

そいつらが送って寄越す人間が、まともなわきゃねえだろう。

そいつらがうちに人間を預けたい。さぁ、うちは何の集まりだ?」

岸村「それは…」

蟹助「いいづれぇか、じゃぁ言ってやろう。

かたわ、ぎっちょ、奇人変人化け物が集まった見世物小屋だ。これがどういう意味だかわかるか」

久子「蟹助、そう虐めるんじゃねぇよ。人身売買の片棒を担げって言ってきてんのさ。加工された人間のね。木の葉を隠すなら森の中ってわけだ」

岸村「…加工!?」

久子「金を余してる奴はろくなことを考えねえってこったな」


久子の言葉にいたたまれなくなった岸村、黙り込んでしまう。

キセルをふかす蟹助。

突然、遠くから女の奇声が聞こえてくる。

ぎょっとして声のしたほうを振り向く三人。


みつ「外道の輩め!!すぐにここを立ち去れ!!」


みつゑ、走ってきて遠巻きに石を投げ付けてくる。

必死でよける蟹助と岸村。


みつ「立ち去れ!立ち去れ!この疫病神!人間を見世物にするなど、恥を知れ!」

岸村「うわあ!」

蟹助「姐さん!」


カメラを死守する岸村、久子を庇う蟹助。


岸村「な!?な!?なんなんですか!?」

蟹助「しるか!おい昭吉!姐さんを避難させろ!」


昭吉、ゆっくりと動き出して久子の方へ歩きだす。


蟹助「おせえよ!つかえねぇデクだな!」

みつ「化け物!外道!人の皮を被った悪魔め!消え失せろ!」


岸村、無意識のうちにカメラを構えて、その状況をカメラで追い始める。

ぎゃあぎゃあと喚きつづけるみつゑ。

久子を移動させるのに手間取る昭吉と蟹助。

みつゑ、手元の石がなくなる。


みつ「お前が、殺したんだ」


突然つめよって、蟹助を突き飛ばすみつゑ。


蟹助「うわっ!」

みつ「返せ!私の坊やを返して!」


みつゑ、久子につかみ掛かる。

バランスを崩してごろんと転げ落ちる久子。


みつ「ぎゃあぁ!!」


もぞもぞと動くが、うまく起き上がれない久子。必死にみもだえる。

顔だけをなんとか起こして、ものすごい形相でみつゑを睨む。

怯むみつゑ。

人が変わったように淡々と写真を撮る岸村。


みつ「ば、ばっ…化け物め!ばちがあたるといい!」


そう言い捨てて、走り去るみつゑ。


久子「畜生、人のことを倒しておいて、「ぎゃあ!」もないもんだ」


久子、岸村と蟹助の手を借りて車椅子に戻る。


久子「ありがとう。

まったく…人の手を借りなきゃ一人で起き上がることも出来ないのに、これ以上どうばちが当たれっていうんだい」

岸村「今のは…なんだったんでしょうか」

蟹助「さぁな。ただのきちがいじゃねぇのか」

久子「五体満足な人間様にはたまにいるのさ。うちらみたいなのに嫌悪感を見せる奴がね。

…すまないが、昭吉を動かしてくれないか。ちょっと、散歩をしてくるよ」

蟹助「じゃあ昭吉じゃなくてあたしが行きますよ。あの女がまだその辺にいるかもしれやせん」

久子「いや、昭吉でいい」

蟹助「でも…」

久子「頼むよ」

蟹助「…へい」

久子「すまないね。わがままついでにキセルを借りてもいいかね」


蟹助、黙って久子にキセルを咥えさせ、煙草を詰めて火をつけてやる。


久子「助かるよ。じゃあ、留守を宜しく」

蟹助「へい」


蟹助と岸村、久子を見送る。

なんか手持ち無沙汰になる二人。


蟹助「おい」

岸村「…はい?」

蟹助「おめえ、さっきのドタバタの最中、写真撮ってやがったな」

岸村「あ…すみません、つい…」

蟹助「つい、じゃねぇよ。あんまりふざけたことしやがると、ぶっ殺すぞ」

岸村「すみません、でも、僕はあの時、撮るべきだと思いました」

蟹助「姐さんのみじめな姿をか」

岸村「どちらかというと…「五体満足な人間様」の醜さ、ですかね?」


蟹助と岸村、ちらっと目を合わせて、にやりと笑う。

グーで軽く岸村を殴るふりをする蟹助。

カメラを蟹助に向ける岸村。蟹助、ピース。


蟹助「ほら、掃除が途中だったんじゃねえのか、箒が転がってるぞ」

岸村「あ、そうでした、それを聞きに来たんでした。舞台の上は掃きましたけど、次どこやりましょう?」

蟹助「そうさな、適当に小屋周辺やっといてくれるか」

岸村「了解です」


話ながら蟹助と岸村、その場を去る。


煙草を吸う王。

暗がりから這い出るように、蛇苺が出てくる。


王「蛇苺か」

蛇苺「お兄様、ご無沙汰しておりました」

王「あぁ、久しぶりだな」

蛇苺「日本語、お上手になられましたね。見ていて笑いを堪えるのが大変でした」

王「お前こそ、なかなか面白かったぞ。語尾に「アル」をつける大陸人など、本国にもいなかろう」

蛇苺「誉め言葉として受け取らせていただきますわ」

王「流石我が妹だ。肝が据わっている。…で、どうだ。この一座の内情は?」

蛇苺「結束が固い、と言えば聞こえは良いですが、異形同士の傷の舐め合いですわね」

王「だろうな」

蛇苺「一箇所均衡を崩してやれば、簡単に手に落ちるかと」

王「ふむ…」

蛇苺「どうかなさいましたか?お兄様」

王「いや、さっき面白いものを見たよ。女が一人、ここの座長の達磨に石を投げていたね」

蛇苺「はぁ…?」

王「あの女も使うと、面白いかもしれない」

蛇苺「お兄様の面白いほど、怖いものはありませんわ」

王「ははは、そうかもしれないなぁ」

蛇苺「しばらくはこの近くに滞在なさいますか?」

王「うん、そのつもりだよ」

蛇苺「では、何かありましたら伺いますわ。今日はご挨拶までに。御機嫌よう、お兄様」

王「あぁ、宜しく頼むよ、僕の可愛い蛇苺」


蛇苺、立ち去る。

相変わらず煙草を吸い続ける王。

王、ふと何かに気づく。


王「へえ…噂をすれば…」


みつゑが布キレをくるんだものを抱えて、子守唄を歌いながらやってくる。

王のそばを通り過ぎるとき、王はその布キレをひったくる。

半狂乱になるみつゑ。


王「おや?何もいないじゃないですか。ただの布キレに、なぜ子守唄を?」

みつ「何をするの!返して!私の坊やを返して!」

王「お母さん、落ち着きなさい。これは貴方の坊やではありませんよ」

みつ「いやぁ!返して!返してぇ…」


王にしがみついて泣き始めるみつゑ。

王、みつゑに布切れを返して、みつゑの肩を撫でてやる。

みつゑ、震える手で布キレを大事そうに抱え、撫でさする。


みつ「坊や…私の可愛い坊や…」

王「貴方の坊やは、なぜ布切れなんかになってしまったのですか?」

みつ「あ…あいつらが…あいつらが…あああぁぁぁぁぁ!!」

王「お母さん、お母さん落ち着きなさい。大丈夫ですよ、ほら、ちゃんと坊やはここにいます」

みつ「(泣きじゃくりながら)あ、あいつらが…私の坊やをどこかに連れて行ったの…可哀想な私の坊や…

あの人が悪いんだわ…あの人が蛙か何かの呪いにかかってたのよ、だから蛙の子が産まれたんだわ…そしてあいつらが連れていったのよ、私の子を連れて行ったの…」

王「…無頭症か」

みつ「あいつらが…あいつらが!!ここよ!坊やは絶対にここの奴らにさらわれたのよ!ここの人でなしどもに!」

王「落ち着きなさい、お母さん」


みつゑを抱きしめる王。

みつゑ、泣きじゃくりつつも、少しずつ落ち着きを取り戻す。


王「辛かったですね…。大丈夫ですよ。私が貴方の力になります」

みつ「あなたが…?」

王「えぇ…ですから落ち着いてください。そうだ、私のところでなにか冷たいものでもお出ししましょう。さぁ、こちらへ」


みつゑ、王に連れられて一緒にその場を去る。

みつゑを支えながら、腹黒く笑う王。


暗転



【第四場】


二日目、公演終了後の夜。

イヌとイワが、昭吉を連れてやってくる。イワの手には工具一式。


イワ「今日もおつかれさま、イヌ」

イヌ「おつかれさま、イワ。昨日よりはお客さん入ったわね」

イワ「昭吉もご苦労様。みんな昭吉が人形だとわかるとすごいびっくりするのよ、何度見ても快感!

調整するわ、いつものところへ座って」


イヌとイワ、昭吉をイスへ座らせる。二人は色んなコード類を昭吉に設置する。

楽しそうに鼻歌でも歌いながら昭吉のメンテナンスを始めるイワ。

することがなくなり、隣であやとりを始めるイヌ。


イワ「あら?また傷が増えたかしら…。表面を磨いて薬を塗るか、塗装でごまかすか…悩むところね…」

イヌ「傷?」

イワ「ええ。表面にたくさんあるのよ。演目で舞台に上がるだけじゃなく、姐さんの世話もしてるんだから、当然といえば当然なんだけど…」

イヌ「直せないの?」

イワ「故障してるわけじゃないから、別にこのままでもいいんだろうけど、なまじ顔だからねぇ…

薬を塗って保護してやるのが精一杯かなぁ」

イヌ「要は、傷を修復してから顔の塗装をまた施せばいいんでしょ?私、着彩しようか?」

イワ「イヌの腕を信用してないわけじゃないんだけど、生きてる人間の化粧とはまた違うからさ…

ちょっと塗装しなおすのは怖いんだよねぇ、表情が変わっちゃいそうで」

イヌ「あ!それなら、あのお兄さんに頼んで、昭吉の顔の写真を撮ってもらうのは?

今の顔の写真を残しておけば元どおりに復元しやすいんじゃないかしら」

イワ「あぁ、それいいかも。あの兄さんを見かけたら、相談してみようか」

イヌ「それがいいと思うわ」

イワ「良かった。結構気にしてたのよね。昭吉…」


愛しげに昭吉の頬をなでるイワ。

何も言わず、それを見守るイヌ。


紅太郎がやってくる。

ふと、イヌと目が合う。

照れくさそうに、一人分ぐらいの距離を置いてイヌの隣に座る紅太郎。


イヌ「紅太郎」

紅「昭吉の調整か」

イヌ「あ…うん。そう」

紅「イワは、すごいな。俺にはぜんぜんカラクリのことはわかんねぇや」

イヌ「うん、すごいよね。私は双子で、同じ体を持ってるのに、イワには全然敵わない」

紅「いや…お前だって…」


そこまで言いかけて、口をつぐんでしまう紅太郎。

いつも化粧をしてもらっていて、その礼を言おうとしたのだが、それが自分にとって屈辱的な行為であるために、素直になれない。

ぐっと拳を握り締める紅太郎。


イヌ「…え?何?」

紅「いや…なんでもない」

イヌ「えー、なによぅ。気になるなぁ」

紅「いいんだよ、気にすんな」

イヌ「…ちぇ」


イヌは名残惜しそうにそう呟くと、またあやとりを始める。

しばらく、沈黙。


紅「その…今朝は、さ。お前らに世話になっちまっただろ。あの、それで…」

イヌ「…(あやとり続行中)」

紅「…イヌ?(イヌをチラ見)」

イヌ「…(なおもあやとり続行中)」

紅「…」

(あやとりを続けるイヌを見て、機嫌を損ねてしまったのだろうかと不安になりソワソワする)

イヌ「…(以下略)」

紅「おい…」

イヌ「ん」


声をかけようとした紅太郎に、あやとりを向けるイヌ。


紅「…へ?」

イヌ「ん」


なおもあやとりを向けるイヌ。

紅太郎、なんだか照れくさくなりつつも、イヌの向けるあやとりを取る。(ふたりあやとりで)

イヌ、ニコッと紅太郎に微笑みかける。


紅「…ごめんな」

イヌ「ん」


イヌはそういうと、紅太郎の手からまたあやとりをとる。


岸村「激写!(紅太郎とイヌにフラッシュを浴びせる)」

紅「うわっ!?」

蟹助「よぉう!イヌ、紅太郎!よろしくやってんじゃねぇか!」


岸村と肩を組んだ蟹助が、酒瓶片手にやってくる。

すっかりできあがっている岸村と蟹助。


イヌ「兄さん!」

イワ「あ、兄さん」

岸村「なんれふかぁ~。こうたろうふぁんといぬふぁんはとっれもなかがいいんれふねぇ~」

蟹助「ひゃははは!お前何いってんのかわっかんねぇぞ!」

紅「お前ら、いつのまにそんなに仲良くなったんだよ…」

蟹助「酒飲んじまえば、人類みな兄弟!なぁ兄ちゃん!」

岸村「そうれふ蟹助ふぁん!きょうらいれふ!」

久子「なんだい、もうおっぱじめてるのかい」


久子が蛇苺に車椅子を押されてやってくる。


イワ「姐さん!やだ、ごめんなさい!私ったら、昭吉を先に連れてきてしまって!」

久子「まったく、気をつけておくれよ。蛇苺が通らなかったら、あたしゃ舞台の上に取り残されるところだった」

蛇苺「大姐、動けなくなてたアルよ。小姐、悪い子ネ」

イワ「ごめんなさーい…」

蟹助「まぁまぁ、細けぇこたぁ気にすんなよ。蛇苺がいて良かったじゃねえか。誰かはいるんだから問題もんでぇねぇ!」

岸村「そうれふ!もんでえねえ、もんでえねえ!」

蟹助「ひゃははははは!な!」

岸村「ふはははははは!にゃ!」

紅「誰かなんとかしろよ、あの酔っ払いどもを…」

久子「おまえら、いいかげんにおしよ」

紅「そうだ、姐さんいってやれよこいつらに!」

久子「あたしを差し置いて飲み始めるたぁどういう了見だい」

紅「はあぁ?」

蟹助「はははははは!確かに!こいつぁ盲点でした、すいやせん姐さん!」

岸村「さささ、ろーぞろーぞ」


岸村、久子のほうへ酒瓶を持っていく。

しかし、そこでちょっととまどう。


岸村「えーと…?」

久子「かまわねえよ、そのまま頼む」


岸村、少し考えるが、そのまま酒瓶を久子の口元へ。

一同、沈黙。

ごくり、ごくりと飲み干していく久子。

一気に全て飲み干してしまった。


久子「ぷはあーっ!!」

岸村「おおおおー!!すげー!!」

イヌ「あははは、お酒、足りないわね!」

イワ「あたしたち、取ってきますね!」

蟹助「おーう!頼むぜお嬢ちゃんたち!」

蛇苺「私も、もてきたアルよ。故郷の酒ネ。(紹興酒を出してくる)」

蟹助「お!どれ…(蛇苺の紹興酒を嗅いでみる)うおっ!つえぇ!」

岸村「どれどれ(一緒になって)…おおおおっ!?」

蟹助「あ、それ 久茂の、ちょっといいとこ見てみたい♪」

岸村「え!?ちょ、ま、まって、もうらめれふ、無理無理ムリムリ!」

蟹助「それ、一気一気一気一気一気一気…!」


岸村をはやし立てる蟹助。岸村以外の全員、蟹助に合わせて一気コール。

岸村、恐る恐る紹興酒に口をつけてみるが…


岸村「ぅえっほっ!!えほっ!!ゲホゲホっ!!(強すぎて無理だった)」


一同、大笑い。

そこにイヌとイワが戻ってくる。


イワ「みんなー!お酒もってきたよー!」

一同「おー!!」

久子「おや、明るいと思ったら、今日はずいぶん綺麗なお月さんじゃねぇか」

イヌ「わぁ…本当」

岸村「きれいれふね~…」

蟹助「あ、それ!月がぁ~、出た出~た~、月がぁ~出たぁ~…」

一同「あ、ヨイヨイ♪」


♪ 「炭坑節」

1.月が出た出た 月が出た

  (ヨイヨイ)

  ウチのお山の 上に出た

  あんまり煙突が高いので

  さぞやお月さん 煙たかろ

  (サノヨイヨイ)


2.一山二山 三山越え

  奥に咲いたる 八重椿

  なんぼ色よく 咲いたとて

  様ちゃんが通わにゃ 仇の花


3.あなたがその気で 云うのなら

  思い切ります 別れます

  元の娘の 十八に

  返してくれたら 別れます


4.お札を枕に 寝るよりも

  月が射し込む あばら家で

  主のかいなに ほんのりと

  私ゃ抱かれて 暮らしたい


5.竪坑千尺 二千尺

  下りゃ様ちゃんの ツルの音

  ままになるなら あのそばで

  私も掘りたや 黒ダイヤ


一同、蟹助の手拍子に合わせて歌い始める。

誰かが楽器を手に取り、弾き始めた。

踊るもの、歌うもの、弾くもの、撮るもの。

それぞれに、楽しげで賑やかに。


うんざりしてその場から離れる紅太郎。一人で酒を飲み続ける。

そこに、するりとやってくる蛇苺。


蛇苺「紅太郎」

紅「…なんだよ、蛇苺」

蛇苺「一人で飲む、良くないアル。あっち行ってみんなと飲むネ」

紅「うるさいな。自分が向こうで飲んでればいいだろう。俺はここで飲みたいんだ」

蛇苺「一人で飲むのは寂しいアルよ。イヌも紅太郎と一緒に飲みたい思ってるアルね」


紅太郎、ギクリとする。蛇苺、ニヤリと笑う。


蛇苺「わかりやすいコ」

紅「おまえ…」

蛇苺「イヌは可愛いわね。素直で、器量も良くて」

紅「蛇苺、お前何言ってやがる」

蛇苺「イワも可愛いけど、また違った愛らしさがあるわ。

あの子の艶々した髪や、柔らかい頬。触れてみたいと思っているんでしょう?いいえ、触れるだけじゃなくて…あの子の珊瑚色の唇や、その奥の紅い舌に…」

紅「やめろ!!」

蛇苺「どうして?イヌだって紅太郎に少なからず好意を寄せているわ。

お互いに想い合っているのに、どうして自分を抑えるの?」

紅「それは…」

蛇苺「それは…」


蛇苺、紅太郎の股間に手を伸ばす。

ギクリとして身構える紅太郎。


蛇苺「ここに、ついてないから?」

紅「やめろっ!!」


沈黙。

ばつの悪そうな紅太郎。にやりと笑う蛇苺。


紅「あっ…あいつだってあの体だ。そんな俺たちが、恋なんかできるもんか」

蛇苺「あら、やっぱりイヌのことが好きだったのね?」

紅「お前っ…!!」

蛇苺「やだ、怒らないでよ。…そうね。ちゃんとした「男」になりたいと思わない?」

紅「うるせえよ、もう黙れ。向こうへ行ってくれ」

蛇苺「答えなさい。

あなただって、このままこの体でいたいなんて思っちゃいないでしょう?

本来なら武家の跡取だったあなたがこんなところに売られてしまった理由だって、その体じゃ後継ぎが望めないから…」

紅「やめろ! …お前、なぜそれを…」

蛇苺「なんだって、知ってるわよ」

紅「なんだって…。…本当に、なんでも知ってるのか?」


蛇苺、話に食いついてきた紅太郎の反応に、満足げに微笑む。


蛇苺「あなたがこんなところで身銭を稼ぐなんて、才能の無駄遣いよ。

本来ならあの家は紅太郎が継ぐはずだったのよ。それだけの素質があなたにはあったのだもの。

そうすれば、イヌだってどうどうと娶れるわ。何もかも、貴方が「男」でありさえすれば」

紅「どうすれば、「男」になれるんだ」

蛇苺「手術をするのよ。そういう手術を得意にしている医者っていうのがいるのよ。

でも、それにはお金がいる」

紅「…そういうことか」

蛇苺「理解が早くて、助かるわ」


紅太郎、酒を口に含んで考え込む。


紅「…少し、考えさせてくれ」

蛇苺「今日中よ」

紅「…わかった」


暗転。



【第五場】


明転。

岸村は酔っ払ったまま、昭吉を抱いて眠っていた。

目が覚めて、自分が抱えている昭吉に気付く岸村。


岸村「…んん?(寝ぼけていてなんだかよくわからない)

……(じーっと昭吉を見つめる)

…うわあ!」


状況を理解して慌てる岸村。

慌てて手を引っ込めたせいで、昭吉がごろんと転がる。

それにまた慌てて、昭吉を起こしてちゃんと座らせる岸村。


岸村「あー…びっくりした…。昭吉か…。

ううう…すごく頭が痛い…。飲みすぎたなぁ…。

お前はいいよな、こんな風に二日酔いで具合が悪くなることはないんだから…」


改めて、まじまじと昭吉を眺める岸村。

おそるおそる頬に触れてみたり、顔を覗き込んだりしてみる。


岸村「…すごいな。イワさんがのめり込むのもわかる気がする。

まるで、本当に生きているみたいだ…。目玉も、唇も、頬の光沢も…これを作った人間は、天才だな」


岸村、無意識にカメラを手にして昭吉を撮ろうとする。

だが、そこでカメラの異変に気がついた。


岸村「(カメラをいじりまわして)あ、あれ?あれ!?うそだ、そんな…」


そこに、蟹助がやってくる。


蟹助「よお、やっと起きたか。いつまでも寝とぼけてんじゃねえよ、さっさと今日の準備に入りやがれ」

岸村「蟹助さん!大変なんです、僕のカメラのフイルムが…!」

蟹助「あ?」

岸村「フイルムがなくなっているんです…!(半泣き)」

蟹助「へ?ふいるむ?」

岸村「いままで撮りしたためた写真の数々が…ああ、どうしよう。どこで無くしてしまったんだろう…」

蟹助「おいおいおい、てえへんじゃねえか。大丈夫なのか?昨日の宴会ではパシャパシャ撮ってたじゃねえか」

岸村「そうなんですよ、昨日の夜までは確かにあったんです。

最後に撮ったのは蛇苺さんのお色気ダンスでした。それもちゃんと覚えています!」

蟹助「おめえも男だなぁ」

岸村「ええ、まあ…って、それどころじゃないんですってばぁ~!」


半泣きでオロオロする岸村。そこに、少し慌てた様子のイヌとイワがやってくる。


イワ「兄さん」

蟹助「あー、こっちはなんだ、どうした」

イヌ「紅太郎が見当たらないの。準備しようとしたら部屋がもぬけの空で、布団も敷いた形跡がないし…」

蟹助「何?めんどくせえなぁ。ほっとけほっとけ、夕方までに戻らなきゃ紅太郎の演目を抜きにすりゃいいんだ。

ったく、舞台にあがらねえのは自分のおまんまの取り分をへらすだけだっつうのがいつまでたってもわからねえガキだな」

イワ「じゃあ、紅太郎が帰らなかったら、その分のお昼ご飯は私食べていい?」

蟹助「あー、食え食え。ふとらねえ程度にな」

イヌ「ちょっと!兄さんもイワも、紅太郎が心配じゃないの!?」

蟹助「…心配っつってもなぁ…。どうせいつもの「家出」じゃねえのか?」

イヌ「なんだか、違う気がするの…。昨日の紅太郎は、何か思いつめていたような気がして…」

蟹助「…ふむ。言われてみればそんな気もするな。じゃあ、ちょっくら探してくらぁ。

イヌとイワは昭吉をつれてって調整をしておいてくれ」

イワ「はーい」

岸村「(イワのセリフにかぶって)あ、あの、僕のカメラのフイルムをみかけませんでしたか?」

イヌ「ふいるむ?」

岸村「はい、いつのまにかカメラの中から無くなっていて…」

イワ「…一度もカメラから出してないの?」

岸村「はい、そのはずなんですが…」

イワ「…それって…誰かがカメラの中から抜き取ったとか…」

イヌ「…誰が…?」


沈黙。忽然といなくなった紅太郎。カメラの中から抜き取られたフイルム。

蟹助が舌打ちをする。


蟹助「おい、イヌ、イワ。とりあえず昭吉を向こうへ連れて行け。調整は後でいい。

とにかく紅太郎を探すぞ。なんだかヤバイ気がしてならねぇ」

イワ「は、はい!」

イヌ「紅太郎…まさか」

蟹助「何もなければそれでいいんだが、何かあってからじゃおせえ。イヌ、不安だろうが、まず紅太郎を探すのが先決だ」

イヌ「…はい」


イヌとイワ、昭吉をつれていく。


岸村「蟹助さん…」

蟹助「岸村…あのフィルムの中にあるのは何の写真だ?」

岸村「え?いや…昨日からのこの一座の写真だけですが…」

蟹助「そうか…いや、それだけでも、一般人を煽動するのには十分かもしれねぇな」

岸村「どういう…」

蟹助「おまえは阿呆か?昨日の女を忘れたのか?」

岸村「…見世物一座に対する、嫌悪感?」

蟹助「新聞やら雑誌やらに載れば、多くの人間の目に付くだろうな。

良くも悪くもうちらのような人間は、人の目を引き寄せる。

それによっちゃあ、この一座を廃業させることだって出来るだろう」

岸村「そんな…僕は、そんなつもりじゃ…」

蟹助「お前のやったことを咎めるつもりはねぇ。だが、これが現実だ」


蟹助、その場を立ち去る。

一人その場に佇み、唇をかみ締めてカメラを掴む岸村。

手を振り上げて、カメラを地面にたたきつけようとするも、出来ない。

悔しくてそのまま座り込む岸村。

暗転。


明転。

王の拠点。

椅子に座ったみつゑが、くるんだ毛布を抱きしめて子守唄を歌っている。

そこに、紅太郎がやってくる。


紅「…王?」

みつ「だれ!?」

紅「え?あ、いや、俺は…」

みつ「あぁ…坊や、私の坊や!」


そう呟くと、みつゑは紅太郎を抱きしめる。


紅「え…?」

みつ「会いたかった…私の坊や…。大丈夫よ。もう心配ないわ。お母さんがついてるからね」


紅太郎、なんだかぼんやりとしてきて、みつゑを抱き返す。


みつ「坊や…。ああ、こんなに大きくなって…立派になって…」

紅「お母さ…」

王「お母さん」


突然、王が現れる。

びっくりして離れる紅太郎。


王「いけませんね。勝手に動いては」

みつ「あ…ごめんなさい…でも…」

王「わかっていますよ。とても嬉しいのでしょう?」

みつ「はい…(嬉しそうな笑顔で)」

王「でもね、私は坊やと少し話したいことがあるのです。少し席を外してもらえませんか?」

みつ「え…(不安そうに、紅太郎にしがみつく)」

王「大丈夫ですよ、お母さん。あなたとぼうやが一緒に暮らせるようにしてあげましょう。

そのために、あなたにも少しお願いしたいことがあるのです」

みつ「…はい」


みつゑ、名残惜しそうに紅太郎から離れ、毛布を引きずってその場を立ち去る。


王「すみませんね、驚かれたでしょう。

かわいそうな女性なんです。思うところありましてね、いま少し面倒を見させていただいているのですよ」

紅「何を考えてる」

王「嫌だなぁ、ただの親切心ですよ。子供を無くした母親が、余りにもかわいそうだったのでね」


何も言わず、持っていた紙袋を王に差し出す紅太郎。

王、にやりと笑ってその紅太郎の腕を掴む。


紅「うっ…!」

王「仲間を裏切った気分はどうですか?」

紅「…医者を紹介してくれる。金と引き換えにフィルムを。そういう約束だ」

王「あなたはその金の為に、仲間を売り渡したんですよ」

紅「俺を男にしてくれるんじゃないのか」

王「仲間と女を計りにかけて、女が勝ったわけですね」

紅「いい加減にしろ!おまえらが持ちかけたんだ!」

王「(笑いながら)失礼。あなたの良心が葛藤するのを見てみたかっただけです」

紅「趣味わりぃ…」

王「そうですね…」


王、紅太郎の腕を引き寄せて、ソファかどっかに組み敷く。


王「確かに、少々趣味が悪いかもしれません」

紅「やめろ!」

王「やめていいんですか?」

紅「何言ってやがる!気持ち悪ぃんだよ、早くどきやがれ!」

王「お金が欲しくないんですか?男になりたくないんですか?」

紅「ぐ…!」

王「どうせ仲間を売り飛ばしたんだ、このぐらいどうってことないでしょう」


観念した紅太郎。拳を握り締め、歯を食いしばって、堪える。

それをみて王は満足げに笑う。


王「そうそう、諦めが肝心ですよ。いい心がけです」


暗転。

紅太郎の断末魔。


明転。

興行が始まっている。

久子が出てきて客席に一礼すると、口に筆を咥えて墨をつけ、正面に張った紙に何か格言の字を書いていく。

久子がいる壇の下で、それを見守る岸村。岸村の背後から蟹助がやってきて、岸村の肩を叩く。


岸村「あ、蟹助さん…」

蟹助「フイルムは?」

岸村「…結局、見つかりませんでした。今は、予備のフィルムを入れていますが…」

蟹助「そうか…。興行のほうはしょうがねえから、姐さんに相談して少し多めに出てもらってるんだが…」

岸村「すごいですね、久子さんは…」

蟹助「あぁ、あの人はあのナリで、大概の裁縫はこなすからな」

岸村「…化け物ですね」

蟹助「はは、ちげえねえや」


そこに、イヌとイワがコソッとやってくる。


イヌ「にいさん」

イワ「にいさん」

蟹助「おう、どうだった」

イヌ「だめ、やっぱりどこにも見当たらない」

イワ「少し足を伸ばして、街の方も見てこようかって話はしたんだけど…あの…」

蟹助「ああ、お前たちはそこまでしなくていいさ」

イワ「ごめんなさい…」

蟹助「気にすんな。外へのお遣いは俺か紅太郎の役割ってきまってんだ。ほら、もう出る準備しろ。そろそろ次の演目だぞ」

イヌ「はい」


イヌとイワ、そのまま来た方向へ戻る。


蟹助「さて、と。あたしもそろそろ行きますか。岸村、お前さんは…あぁ、写真だな」

岸村「はい」

蟹助「…なんだか、すまねえな。最後の興行がこんなことになっちまって…」

岸村「え?」

蟹助「ほら、今日で俺たちもここでの興行は仕舞いだからな」

岸村「あ…。あぁ…、そっか、そうですよね…。頑張ってください」


蟹助、岸村に手を振ってその場を去る。

岸村、客席に座り舞台の上の久子に目をやる。

久子は文字を書き終えていた。

蟹助が舞台の上に上がり、口上を続ける。


蟹助「はい。ありがとうございました、久子姐さんの書道でごぜえやした。

ご覧下さい、紙には唾が一滴すらついておりません。手足無くとも口ひとつで手足を補っているのでございます。この久子姐さんのありがたいお札、家に飾れば家内安全無病息災、店に飾れば商売繁盛でございます。ご所望の方はおりませんか、今なら格安でお譲りいたします。家内安全、商売繁盛でございますよ。(客席を一通り見回して)…はい、ではそこの素敵な帽子を被ってらっしゃる旦那様。どうぞお納めくださいまし」


ここで蟹助、客席のサクラに字を書いた紙を渡す。

蟹助が口上してる間に、書道の道具を片付け、中央に箱と数本の剣が持ち込まれる。


蟹助「はい、どうもありがとうございました。

さぁさぁさぁこちらに参りましたるは、一見何の変哲も無い箱でございます。しかしこの箱、中に入りますれば黄泉の国へと続いている魑魅の箱なのでございます。黄泉への入り口にございます。この箱の中に入りますればあら不思議、一瞬にして黄泉の世界へ連れ去られ、箱の中から消えてしまうのでございます。しかしご心配には及びません。きちんと手順を踏んで黄泉比良坂の神に祝詞をあげれば大丈夫。黄泉の国からきちんと生還してみせましょう。

さあさあさあ黄泉の国への旅人は、神への生贄にふさわしい美女、蛇娘の蛇苺にございます」


蟹助の台詞で壇上へあがる蛇苺。

以後、蟹助の台詞にあわせ、箱の中へ入っていく。


蟹助「さあさあこの美しい娘が、黄泉の国へ参ります。

黄泉の国への水先案内人、祝詞を上げますは、我らが一座の女主、久子姐さんでございます。姐さん油断召されるな、一寸間違えれば娘は生きて帰れません。

さあさあ、娘が箱に入ります!」


蛇苺が箱に入ると、蟹助がその蓋を閉じる。


久子「八百万の神々よ、蛇の娘を守りたまえ。穢れし供物が娘の口に入ることを防ぎたまえ。

我らの願いを聞き入れたならば、イザナギノミコトを守ったという聖なる桃を、娘に与え下さいませ」


久子が祝詞をあげると、蟹助が久子の口に短剣を咥えさせる。久子は咥えた短剣を箱に刺す。

それを繰り返し、短剣を数本箱に刺していく。


蟹助「さあ、剣が全て箱に刺されました。娘は無事、黄泉へ向かえたのでありましょうか?」


蟹助、仰々しく箱の蓋を開けて中を客席に見せる。

中はもぬけの殻になっている。


蟹助「娘は浮世から消え去りました!

さあ、ここからが本番でございます。黄泉の国の桃と共に、娘を呼び戻します!」


箱の蓋を閉じ、剣を抜いていく蟹助。

箱に布をかける。


久子「蛇の娘よ桃を手に、後ろの正面通りませ!」


蟹助、一気に布を剥ぎ取る。(同時に箱が四方に倒れたらいいな。)

すると、そこには、壷から上半身を出した紅太郎の姿。

両腕は無く、その腕があった場所にたくさんの椿の花が飾られている。そして、その口には桃が押し込まれている。

一瞬の静寂。

いつのまにかイヌとイワがきていた。


イヌ「こう…た、ろ…?」

蟹助「な…?」


その時、客席からものすごい悲鳴があがる。

客席にみつゑがいる。


みつ「坊や!!

人殺し!人殺しども!!こいつらは私の坊やを奪って見世物にしていたんだ!このバケモノどもめ!」


客席のいたるところから「バケモノ」「人殺し」のざわめき。

(もちろん仕込み)



蟹助「黙れてめえら!紅!紅太郎!なんだ、いってぇどういうことなんだ!?」

イワ「紅太郎!」

イヌ「紅太郎、紅太郎、紅太郎ー!!」


駆け寄ろうとするイヌとイワ。


久子「イヌ!イワ!…くるんじゃねえ!」

イワ「ねえさん…!」

イヌ「(だが、なおもかけよろうとして)いや!いやあ!紅太郎が、紅太郎が!」

イワ「落ち着いて、イヌ!」

イヌ「紅太郎ー!」

みつ「人殺し!」

蟹助「黙れッつってんだよ!」

久子「蟹助、紅太郎を!」

蟹助「は、はい!」


紅太郎を布で覆い隠し、口から桃を外す蟹助。

すると、紅太郎が息も絶え絶えに口を動かす。


紅「か…に……」

蟹助「紅…?紅!いきてんのか、おい!」

久子「ほんとうか!?」

紅「ごめ……俺…」

蟹助「いい!わかった、わかったからもう喋るな!」

久子「…だれか、誰か医者を呼んでくれ!誰か医者を!!」


久子の悲痛な叫びで暗転。



【第六場】


三日目。公演終了後の楽屋。

久子、蟹助、イヌ、イワ、昭吉、岸村が見守る中、紅太郎が担架に乗せられて運び出されていく。

イヌはイワにもたれかかって泣いている。


イヌ「紅太郎…紅太郎…」

久子「命を取り留めたのが不幸中の幸いか…

いや、かえってあの子には地獄かもしれないね…」

蟹助「両腕がもがれてやがった…。しかも、ご丁寧に止血の処置を施した上、花で飾るだと?ふざけやがって!」

イワ「もう少し、早く気付いてあげられていたら…」

久子「イワ、お前が責任を感じるこたァねえ。

それを言っちまえば、ここにいる全員に心当たりがあることになる。

それに…、誰が悪いかなんて言ったら、この事態を避けられなかった紅太郎自身だって悪いのさ」

イワ「姐さん!」

イヌ「ひどいわ、姐さん!何もそんな言い方…!」

蟹助「てめえら!姐さんは例え話をしただけだろう!…姐さんも口に気をつけてください。みんな、気が立ってるんです」

久子「…すまない」


何かに気付いて、桃を手にとる岸村。


岸村「…あの…」

蟹助「ああ…すまねぇな。何も関係ねぇあんたを、面倒に巻き込んじまって」

岸村「いえ…あの…。この桃なんですが…」

蟹助「あ?桃?」

岸村「はい。これ…中に、紙が…」

蟹助「何!?」


蟹助、岸村から桃をひったくり、中に入っていた紙を取り出して広げる。


蟹助「…!あんのクソ野郎…!!」


蟹助、紙を床に投げ捨てる。

久子、岸村に目配せしてその紙をもってきてもらう。


久子「『人数に不足が出ればお手伝いいたします。

つまらない意地を張れば、興行そのものができなくなりますよ』…王か!」

蟹助「あいつら、強行手段に出やがった」

久子「優男のツラしやがって、中身は狂ってやがる」

イワ「姐さん…」

イヌ「ああああああああー!」

イワ「イヌ!?」


突然、狂ったように泣き出すイヌ。


イワ「イヌ、落ち着いてイヌ!」

岸村「イヌさん!?」

イワ「イヌ!!」

蟹助「イヌ!!」


イヌを抱きしめる蟹助。ふっと泣き止むイヌ。


蟹助「すまねえ。俺の力不足だ」


しかし、なおも泣きじゃくるイヌ。


久子「おい、蛇苺。イヌに薬を…蛇苺?」

イワ「え…あれ?」

蟹助「蛇苺?なんだ、紅太郎について行ったのか?」


しばしの沈黙。


岸村「いえ…違います。

何かおかしいと思ってましたが、今わかりました…

いないんですよ、蛇苺さん。興行の手品で入れ替わってから、ずっといないんです」


間。


久子「くっ…くくくっ…ははははは…。

そういうことか。やられたよ蛇苺。この私が、今の今まで気付かないとはね」

蟹助「姐さん」

久子「こっちの内情は筒抜けだったってことか。まったく、とんだ茶番だ。ずいぶんな役者じゃないか」

イワ「姐さん…」

久子「蟹助」

蟹助「へい」

久子「王のところへ行くよ」

蟹助「な、なんですって!?」

久子「もう無視できる状況じゃねえ。放置すりゃ、今度は本当に誰か死ぬよ。

どんな非人道な仕事だって、お前らの命にゃ変えられねえ。私が頭下げて済むなら、いくらだって下げようじゃないか」

イワ「でも…!」

蟹助「わかりやした」

イワ「兄さん!」

蟹助「イワ。姐さんが決めたことだ」

イワ「…」


蟹助、久子の車椅子を押して去ろうとする。


岸村「あ、あの!」

久子「なんだい」

岸村「あの…僕も。僕も一緒に行っても良いでしょうか…」

久子「…好きにしな」


三人、立ち去る。残されるイヌ、イワ、昭吉。

イワ、泣いているイヌの涙を拭う。


イワ「イヌ…」

イヌ「ううう…ひっく…」

イワ「イヌ、紅太郎のことが好き?」

イヌ「え…イワ?」

イワ「私も好きよ」

イヌ「…イワ?」

イワ「昭吉、それを持ってこっちへおいで」


昭吉、剣を手にしてイワのところへやってくる。

イワ、昭吉の服を脱がせて肩などさわり、体つきを確認する。


イワ「うん。大体同じぐらいね。ズレは削って合わせていけばいいか」

イヌ「イワ…何をやってるの」

イワ「紅太郎には、腕が必要だわ。

昭吉と紅太郎は、背格好が大体同じぐらいだから、昭吉の腕がちょうどいいのよ」

イヌ「ダメよ!だって…だって昭吉は、イワの大切な…!」

イワ「不毛よ、人形に恋するなんて。昭吉を卒業するいい機会なんだわ」

イヌ「イワ!やめて!」

イワ「あーもう、うるさいなぁ」


イワ、イヌに口付ける。暫くして、カクリと意識を失うイヌ。


イワ「ごめんね、イヌ。…ありがと。さて、と」


昭吉を横たわらせるイワ。愛しげに昭吉の頬を撫でる。


イワ「辛くないっていったら、嘘なんだけどね…。

でも、私、イヌの哀しむ顔見たくないの。だから…ごめんね」


昭吉の腕に顔を埋めるイワ。

すると、昭吉の腕がイワを抱きしめる。


昭吉「ありがとう」

イワ「…昭吉?」


昭吉の腕が離れる。


イワ「昭吉…あんた、今…」


そのまま、動かなくなった昭吉を見て、イワは意を決する。


イワ「…わかった。昭吉、ありがとう」


剣を手にして、振り上げるイワ。


イワ「愛してる」


剣を小吉の腕に振り下ろすイワ。

暗転。

「ダンッ!」という音が鳴り響く。


王の拠点。

たくさんの檻、それぞれの奥に布に包まった人間がいて、低くうなり続けている。


蟹助「…胸糞悪ィ所だ」

久子「…(檻に下がってる札を見て)これから搬送されるやつらだ」

蟹助「んなっ!?」

久子「…なんてことを」

蟹助「糞ッ…!」


二人、ソファの前まで来る。


久子「ここでいい。後は、あたしが話をつける」

蟹助「…お気を付けて」


久子の車椅子を置いて、その場を立ち去る蟹助。

一人で王を待つ久子。そこに、何かを抱きしめたみつゑがやってくる。

みつゑは子守唄を歌っている。


久子「坊やは見つかったのかい?」

みつ「うふふ…。ええ、見つかったわ。私の大切な大切な坊や…もう離さない…」


みつゑ、抱きしめていた布切れをそっと広げる。

そこから、もぎ取られた二本の手が。


久子「…!」

みつ「うふふふ…あはははははは!!」


狂ったように笑いつづけるみつゑ。呆然としている久子。

王がやってきて、みつゑに優しくストールをかけてやる。微笑んで、その場に座り腕をあやすみつゑ。再び子守唄を低く歌いはじめる。


王「…お待ちしていましたよ、久子さん」

久子「こいつらがそうか」

王「こちらのものはもう出荷先が決まっているので結構です。そちらには、今後処置が済んだものをお願いするつもりです」

久子「…気に食わないね。その物言い。

まともな商売人気取りやがって、その「出荷物」は手足ぶった切った人間じゃねぇか」

王「私にとっては大切な商品ですよ。あなただって自身の体を見世物にしているでしょう?

五体不満足な人間というのは、不思議と私たちを魅了する。

あるはずのものがない空間に、その境目に、どうしようもないほど焦がれるのですよ」

久子「救いようのない変態野郎だな」

王「その変態どもに身体を見せているのはどこの誰ですか?

生きるため?生活のため?笑わせないでください。あなたは私と同じ種類の人間ですよ。

嗜虐心を持つ変態性欲者どもの欲求を満たしているだけじゃないですか」


車椅子から久子を引きずり降ろす王。


王「はは、弱いものですね。こうされたら、そこの商品たちと大差ない。まったく、お高くとまった芋虫め」

久子「なぜ紅太郎に手を出した」

王「あなた方の均衡をくずすのに、一番扱いやすかったからですよ。

外見上は何も問題がないのに、さぞ悔しかったのでしょう。

あなたのような人間と、同列に扱われるのは」


王、久子に覆いかぶさる。

久子、隠し持っていた刀をくわえ、王の首に切りつける。

首を押さえて、久子から離れる王。


王「…やってくれましたね」

久子「どうだい、馬鹿にしていた芋虫に殺される気分は」

王「最悪です」


久子の上に覆いかぶさるように倒れる王。

そこに、蟹助が戻ってくる。

久子の上の王を蹴り転がし、手袋をして刀の柄を布で拭く。


蟹助「お疲れ様です」

久子「まったく、気分が悪いよ」


蟹助、着衣の乱れた久子に自分の上着を着せて、車椅子に戻してやる。


久子「ありがとう、蟹助」

蛇苺「兄様!」


気付くと、王の側に駆け寄っていた蛇苺。

王の亡きがらにしがみつき、泣きじゃくる。


久子「蛇苺」

蛇苺「おまえら…よくも…よくも兄様を!」

久子「それはこっちのセリフだ」

蛇苺「やかましい!」


久子に襲い掛かる蛇苺。

蟹助が久子を庇い、蛇苺に応戦する。

蛇苺の腕をねじりあげ、身動きを取れなくする。


蛇苺「離せ!殺してやる!」

久子「蛇苺。おまえ、うちに戻る気はないのかい?」

蟹助「姐さん、何を!?」

久子「密偵であったとはいえ、長く共に暮らした仲だ。うちの看板でもある。

憎いことこの上ないが、お前が抜ける穴は大きい」

蛇苺「戯れ事を。兄の敵の傘下に入れとでも?」

久子「お前の身体の鱗は病気によるものではない。兄が入れた刺青だろう?

そいつはお前を利用することしか考えていなかった。目を覚ませ」

蛇苺「これは私の意思でしたこと。兄様に利用される事こそ、私の本望」

久子「蛇苺!」

蛇苺「兄様、お側へ!」

久子「やめろ!蟹助、離せ!」

蟹助「蛇苺!」


舌を噛み切り、絶命する蛇苺。

久子、顔をしかめる。蟹助が手を離すと、蛇苺は王に重なるように倒れる。


久子「馬鹿野郎…」

蟹助「…すみません。間に合いませんでした」


途方にくれる二人。

みつゑがゆらりとたちあがり、王と蛇苺の亡きがらの側に座る。

抱えていた腕を、亡きがらを抱えるように重ね、亡きがらを撫でながら子守唄を歌う。

岸村がやってきて、黙々と写真を撮る。

蟹助、王の懐から紙包みを取り出して岸村に渡す。


蟹助「ほら」

岸村「あ…。ありがとうございます」

久子「帰ろうか」

岸村「は、はい…。でも、あの…」

久子「なんだ」

岸村「この人たちは…」


三人、周囲を見回す。低く唸り声をあげる、檻の中の人間たち。


久子「…すまないね。連れて行ってやりたいが、多すぎる」


俯く久子。


久子「ごめんね…ごめん…許しておくれ…」

蟹助「…いきやしょう」


三人、その場を立ち去る。

岸村、ふと思い立って、最後に一枚、シャッターを切る。

王と蛇苺の亡骸。二人を抱きしめるみつゑ。


暗転



【第七場】


祭りの終わった境内。

見世物小屋の舞台は撤去されている。

蟹助が煙管を吸いながら、久子の車椅子を押してやってくる。

イヌとイワがそこへやってくる。


イワ「兄さん、姐さん、準備終わったよー!」

蟹助「おう」

久子「イヌも、支度は出来たのかい?」

イヌ「…はい」


そこへ、岸村がやってくる。


岸村「あの…」

蟹助「岸村」

岸村「これ」


岸村、四人に新聞を差し出す。

蟹助、新聞を手に取って目を通す。


蟹助「王のことは、内部抗争でカタつけたのか」

岸村「檻の中の人たちのことは…どこにも…」

久子「…そうか」

岸村「あの…紅太郎さんは?」


岸村の言葉に、久子と蟹助、イヌはイワの方を見る。

イワは気まずそうに、視線を泳がせる。


紅「俺がどうかしたか」


紅太郎が、岸村の背後からやってくる。


昭吉「うわあっ!」

イヌ「紅太郎!!」


イヌ、紅太郎のほうに走っていって抱きつく。ひきずられていくイワ。


蟹助「紅…お前…」

紅「おう」


蟹助たちに手を見せる紅太郎。


紅「…イワが、つけてくれた」

久子「良かったな」

紅「姉さん、蟹助、イヌ、…イワ。心配かけてごめん。ありがとう」


なんとなくニヤニヤする全員。


蟹助「おいなんだよこの野郎!」


そういって、思いっきり紅太郎の頭を撫で回す蟹助。

紅太郎、しばらくされるがままでいるが、だんだんうっとおしくなって手を払いのける。蟹助、その手をつかむが取れてしまう。


蟹助「うわっ!」

久子「ははは!なんだ蟹助、ざまぁねぇな!」

イワ「兄さん、だっさー!」

久子「良かったな、紅。芸風が増えたじゃないか」


笑い出す全員、ふてくされる蟹助。

感極まるイヌ。


イヌ「イワ…紅太郎…!」


抱きしめあうイヌとイワと紅太郎。泣き出すイヌ。


イヌ「ばかー!!」

紅「イヌ…ごめんな。ホント、ごめん…」


抱きしめあうイヌと紅太郎。


紅太郎「イワも…ありがとう」

イワ「…へへへ」

蟹助「さぁ、そろそろ出発の時間だ」

岸村「あの!」


一座、岸村に注目する。


岸村「僕も…僕も連れていってもらえませんか?」


真剣な岸村の表情。

一座の面々、久子に注目する。


久子「…駄目だ」

岸村「何故ですか!?」

久子「お前が、五体満足な人間だからさ」

岸村「どうして!僕は…あなたがたと一緒にいたいです!」

蟹助「岸村…」

久子「なぁ、岸村。あたしたちはこのナリだ。

それでも、あたしたちは化け物なんかじゃなくて人間だから、腹は減るし夜は眠い。生きていかなきゃならねぇ。

でもあたしたちはこれしかできない。真っ当な仕事なんかできないんだよ。

お前は違う。お前は、あたしたちにないものを沢山持ってる」

岸村「だけど…」

久子「なあ、お前の写真は、いい写真だ。

あたしらの写真、とってもいい写真だったじゃねぇか。

お前はいい写真家になるよ。

わかるか?おまえはあたしらの希望なんだよ」

岸村「また…会えますか?」

紅「それはどうかな」

蟹助「ま、運命がそういうふうに巡ってくりゃあな」

イワ「その時は、また写真を撮ってね!」

イヌ「絶対ね!約束!」

久子「…な」

岸村「…はい」


暗転。

岸村だけがスポットで浮かび上がる。

爆音、銃声。戦争の音。


岸村「大戦が始まったのは、それからまもなくのことだった。

僕は、軍属のカメラマンとして、戦場を撮ることになった。

炎。銃声。爆音。火薬の匂いと、人間の焼ける匂い。

地雷で手足の吹っ飛んだ人間を、何度も目の当たりにした。


恐怖心が化け物の幻影を生み出す。

僕たちは一体何と戦っているのだろう?


硝煙の中で、彼等を思い出す。

僕が知る限り、誰よりも人間らしかった、あの一座を。

彼等は、この戦火の中で、今も興行を続けているのだろうか」


聞こえてくる祭囃子の音。

岸村の背後が薄明るくなると、一座の面々が楽しげに踊っている。

見世物の演目が続く。

懐かしむような岸村の表情。


フェードアウト。


劇終

10年ぐらい前に書いたものなので、だいぶ粗が目立ちます。

後半は勢い任せで一気に書き上げたので、あまり納得のいく仕上がりではありません。

作中で使用している言葉もそれっぽければいいと思っていたので、戦前には使ってないだろうという言葉も頻出しますが、まぁ舞台用に分かりやすければいいかと思って書いてたような気もしますし何も考えてなかったような気もします。


当時所属していた劇団の公演用に書きましたが、内容に問題がありすぎるのと劇団のカラーに合わないとのことで却下されました。

まぁ居ないと思いますけど、もし万一公演されたいという団体様いらっしゃいましたらご一報いただけますでしょうか。その際はきちんと書き直しさせていただきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とてもレトロで情感のある雰囲気で、見応えがあった。たしかに粗はあるが、世界観がしっかりとしており、好感が持てた。
2019/04/02 12:49 退会済み
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