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ジェイソン・ネバーエンド(1)

「それデ、あれは一体どうやったんだイ?」


9位を斬った後、二輪に乗って住家に帰る道中またランカー狙いの処刑人に襲われた


そして襲ってきた連中に。


「お前の家にも似たような連中が押し寄せてるんだよ。もうお前には帰るところはねぇ!」


と、言われたので。お礼に全員返り討ちにしてやった。


そして、片腕切り落としてもまだ生きてたヤツにちょっとお話してソイツの、というか襲ってきた奴らの根城に案内して貰った。


そこはかつてバーだった場所でカウンターや酒が文字通り腐るほど置いておった。水も通っており、食べ物も結構溜め込んでいた。何より場所が入り組んだ路地に入って且つ見落としやすい場所に入り口があり知らなければ見つけるのも困難な場所だった。追われる身としては中々住みやすそうな場所で結構気に入った。


そこで寛ぎながら一夜を過ごし、起きたらすぐ端末から連絡が来た。


因みに片腕失った男はまだいた。仲間を失った状態でこの街を歩き回る度胸も無いのだろう。まぁやり合って本当にコイツは弱かったし、一人だと実際に食い物にされるのが目に見えてるから懸命な判断とも言える。今は片腕での動きに慣れておらず俺が頼んだ水をコップに入れるのにも苦労している。


ジェーンが連絡してきたのはランクが上がった賛辞もあったがそれよりあの科学者を斬った技が気になって仕方が無かったようだ。


「どうせ映像撮ってんだろ。見たまんまだ」


「撮ってたけド、キミの技が速すぎるのもあってスローにしてもよく分からなかったんだよネ。ねぇ、あの刀を覆っていたオーラ(・・・)のようなものはなにカナ?」


「つまりそういうことだよ。オーラで斬った」


「……ジョークにしてもつまらないヨ?」


「優れた武芸者ってのはオーラを放つ。俺の使う華天流だと剣気(・・)って呼ぶんだがこれを相手に飛ばしたんだよ。あの科学者は近づくのが難しかったからな、使いたくなかったが離れて斬るために使うしかなかった」


通話口の向こうで絶句しているジェーンがいるのが目に浮かぶようだ。まぁやってることは手品か何かの類だ。信じれないのも仕方無い。


「……キミはいつからニンジャとかカンフーマスターみたいな存在になったんだイ?」


「ニンジャはアレだけどカンフーマスターもかよ。中国数千年の歴史凄いな」


「……カンフーとかケンドーの奥深さは私の想像以上だったようネ」


何か感じ入っているような雰囲気だ。一体どんな知識をコイツは今まで蓄えてきたんだ。


「出来ればあの技は使いたくなかった。華天流の技は門外不出なのもそうだがこれから殺り合うヤツに技を見せびらかすのは命取りだからな」


「残念だったネ。バッチリ映像に残ってるから見る人が見れば分かるんだろうネェ」


「映像を撮らせないようには出来ないのかよ」


「ムリムリ。上は視聴率絶対主義だからあんな素晴らしい技を撮り逃すことは許されないヨ」


本当に見世物小屋なんだなこの街は。視聴率のために命のやり取りをする。コロッセオ、いや闘鶏とか闘犬の方が正しいか? 何れにしろオレたちの命は娯楽のための消費物。死刑囚ならば寧ろ命に価値があることを喜べってか。碌でもない。


今の現状を知り嫌な気分になっていると片腕君が水をようやく持ってきてくれた。その片腕も水浸しな辺り相当苦労したんだろうな。その目には恐怖と恨みが半々といった感じの色が見え、その表情もぎこちない。この状況が嫌なら頑張って義手を手に入れることだな。


「さて、第9位となったキミには8位への挑戦権が与えられるワケだけど如何かナ」


「次は何処に行けばいい?」


「OK、使うってことダネ。それじゃあ次の相手の名前だけど。ジェイソン・ネバーエンド。上位ランカーでも屈指の残酷な処刑人サ」


残酷で名前がジェイソンとは。ホラー映画かよ。


「彼は殺した相手を必ず原型も留めないほどに破壊するんダ。それはもう徹底的サ。死体を片付ける身にもなってほしいヨ」


「死体はお前らが片付けてるのか」


「そうだヨ。ラザロも彼の持ってた薬物の入った瓶が破損して中身が周囲に拡散してたから処理するの大変だったんダヨ?」


「ご愁傷様としか言えないな」


「まぁ仕方の無いこと何だけどサ。彼が弱いのが全部悪いってねネ。とにかくジェイソンはそういう殺し方に拘りを持つ処刑人なのさ。顔が真ん中から花開いて中身丸出しの死体になりたくなかったら彼より先に殺すことだネ」


「死ぬ気なんざサラサラねぇよ。で、何処に行けばいいんだ?」


「フフフ、今回は何処にも行く必要は無いヨ」


それは一体どういう意味か問い返そうとした時、いきなり外に繋がる扉を斧が突き破ってきた。


片腕君が悲鳴を上げ、俺はすぐさま端末を放り投げ立てかけていた刀を手に持ち構える。


幾度かの破壊音の後、扉を蹴破ってその男は部屋に入ってきた。


ホッケーマスクを顔に被り。革のジャンバーと青いジーンズを穿いたその姿は正しく先程考えていた金曜の悪夢の象徴そのものの姿だった。


「オイオイ、本当にホラー映画になってんじゃねえかよ」


投げ捨てられた端末から小さくジェーンの遅すぎる忠告が届けられる。


「今回は彼から来てくれるそうだからネ。気をつけなヨ、ギン。彼は通称不死身(・・・)のジェイソンと呼ばれる男ダ」



片腕君はこの先生きのこれるのか。

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