表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/30

ジェーン・ドゥ

 こうして彼の復讐は終わっタ。


 ついでに彼の復讐に乗じて私の復讐も完了しタ。


 怒涛の快進撃でランキングを上げていく新参者。今までの安定したショーの体制を崩しかねない勢いで勝ち残っていく彼は否が応にも運営のお偉いさん達の目を引くこととなった。


 ただそれだけなら別にどうということでも無かったが、そこに積み重ねてきた傲慢と怠慢による腐敗が重なることで致命的な隙を生み出してしまった。私たちがギルティシティへと干渉できてしまうような隙を。


 結果として第5位とコンタクトをとることに成功し、あのクーデターへと繋がっていく。


 そうして世界は変わっタ……なんていうのは全くもって幻想なのだガ、それでも膿を取り除くことには成功しているはずダ。


 まぁここは多少なりとも世界が良くなったと思うことで満足しよウ。


 ギルティシティにいた極悪人共が解放されたことヤ、世界各地に存在するコクーンドームのような超常領域の拡大現象の発生なんかには目をつぶってネ。


 









 燃え盛る業火の中を奇跡的に生き延び、ベッドの上で目が覚めた時には全てを失っていた。


 代わりに私はレジスタンスとなった。彼らが私を救いだしてくれたのだ。


 あの日、協力者と接触したタイミングであの事件が起きてすぐに現場に駆け付けたが、着いた時には殆どの者が死んでしまっていた。恐らくこちらの接触に気付いた連中が諸共殺そうとして起こした事件だろう。すまない。


 そう言われても私にはあまり現実味が無かった。何もかもが唐突に起きて理解が追いつかなかったのだろう。


ふとパーティ会場で出会った同い年の少年のことを思い出した。彼もまた死んでしまったのだろうか。


ちょうどあの時は彼の教えてくれた隠れんぼという遊びの最中だった。私が探す方で彼が隠れる方。


隠れている最中に死んでしまったのなら申し訳ないと思った。だってもし私が見つけていたら私と同じように助かったかもしれないのに。


そこからはレジスタンスとして政府と闘い続ける日々をおくることになった。


行く宛もなく表に出れば事件の真相を知っているとして暗殺されるかもしれない。ならば裏の世界で生きて戦い続けるしか生きる道が無いだろう。


そしてその戦いの中で自分がいかに恵まれた存在で、この世界がいかに腐っているのかということを嫌という程思い知らされた。


政府は当然としてレジスタンスも碌でもない組織だった。


結局は貴族達の政治闘争に負けて落ちぶれた者達で出来た組織だ。根元が一緒なら当然どんなものを植えようと腐り落ちるのは当たり前だ。


だからといって他に居場所のない私はレジスタンスの一員として戦い続けるしかなかった。


ある日、私は政府の中に潜り込み情報をレジスタンスに流す任務を仰せつかった。所謂スパイだ。


元々貴族の人間で事情に詳しいだろうということと、そもそもそれなりの教育を受けた者が貴重ということもあり私が選ばれたようだった。


仮の身分でまた貴族達の住む世界に戻った私は、あの悪趣味なショーの運営へと入り込むことに成功した。


この社会で最も金の動く場所であるここならば必然重要度の高い情報も手に入りやすくなる。


ただ他に潜入している者がいるわけでもなく、たった一人で敵の腹の中にいるのは中々に辛いものがあったが。


そしてそこに入った辺りからだ。政府の高官を次々に殺している者がいると言う奇妙な噂を聞いたのは。


曰く、刀を持った2人組が銃を持った衛兵達を次々に斬り殺していくらしい。


最初は何かの映画の話かと勘違いしたものだ。


しかし、たまたま実際の犯行時の映像を見た時それが現実の事なのだと思い知らされた。


そして同時に違う衝撃にも襲われた。


彼らは……いや彼を私は知っている。


酷く荒々しいなりに変わってしまっていたがそれでも僅かに懐かしい面影か残っていた。


生きていた。彼も助かっていたんだ。


きっと遊びで隠れていたから襲われずにすみ逃げれたんだ。


そして彼もまた復讐の道を選んだのだ。


この時感じた。喜びと悲しみとまた喜びという何とも複雑な感情はきっと死ぬまで忘れることはないだろう。


彼らの事を知ってからはどうにか接触しようとしたのだが、自分自身の複雑な立場上どうしても危険な橋は渡れず。結局彼が捕まる時までまともな機会に恵まれることは無かった。


そして彼が捕まりあの悪趣味な流刑地へと飛ばされると知った私はどうにかして、彼が送られる直前に少しだけ話をする機会を得ることが出来た。


D&Eの運営職員として彼に少しだけ話せたのだ。


「ここに送られるなんて随分と派手に暴れたのネ」


「……」


「でもここに来てしまった以上は貴方がどれほど凶悪な犯罪者であってもちっぽけなもノ。籠の中の鳥以下のネ」


「……」


「けど、少し不思議に思うのヨ。資料通りの人物なら貴方は何故捕まったノ? 逃げるか、或いは自殺しそうなものだけどモ。いや、自殺というより切腹の方がいいかしラ」


「……殺したい男がいる」


「……へぇ! 誰のこト?」


「1位だ」


「……また大物ネ。何故と聞いてもいいかしラ?」


「隠れていたから殺しに来た。それだけだ」


「……そうだね、隠れているなら鬼は見つけてあげないとね。歓迎するヨ! ようこそギルティシティへ!」

活動報告に作品の感想とか裏話書いたので良かったら見て下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ