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ラザロ・ペストーニャ(1)

「確かに確認したヨ、おめでとうギン! コレで晴れて君は処刑ランキング10位となった訳だネ!」


六腕の銃使い(ガンスリンガー)もどきの首を獲った後、さっさとねぐらのアパートに帰ってきて着替えずにそのまま寝た。寝付きは特に変わらずいつも通りだった。


そして朝になってかかってきた配布されていた携帯端末からのコール音に俺は無理矢理起こされた。


「目覚めてすぐそのテンションはキツい。切っていいか?」


当然不機嫌にもなる。さっさと切って二度寝したいんだよ。


「待て待て切るな切るな。まだ話は沢山あるんだヨ」


「じゃあ要件だけをとっとと言ってくれないか?」


「せっかく念願叶ってランキングに入ったって言うのにローギアにも程が無いかいキミ?」


ベットから起き上がりキッチンへと向かう。何か食べるものあったかな。


「もしかしてそういう態度が所謂クールジャパンって呼ばれるヤツなのカ?」


「クールジャパンっていつの時代の話をしてるんだよアバズレ」


冷蔵庫を開けてまともに食えそうなものが用意されていないのにがっかりしつつ端末の向こうにいる()に向かって言い返す。


彼女の名はジェーン・ドゥ。勿論偽名だろう、本名は知らない。


そして彼女はこの処刑場という名の現代の闘技場(コロッセオ)である“ギルティシティ”の行政機関のエージェントだ。


文明が発達し続け貧富の差が極限まで酷くなった結果、ブルジョワ達はありとあらゆる汚れ(・・)を忌み嫌うようになった。


その果てに連中は死刑を死刑囚にやらせるという人権の概念を一切無視した法を創り上げた。


曰く、死刑囚は人ではない。


曰く、人で無いものを人が殺すのは間違っている。


曰く、ならば人で無いものに人で無いものを殺させればいい。


後世に人類史上最大に醜悪な法だと罵られそうなそれは、醜悪な心を持った連中によって法として認められてしまった。


そして死刑囚(デスロウ)処刑人平等死刑執行法アンドエクスキューショナーは世界の先進国を中心に積極的に運用され、今や世界の常識となってしまった。


人類は世界を凌辱するだけでは飽き足らず、今度は人の尊厳も凌辱することにしたらしい。


さてそんな街の代理人(エージェント)である彼女が処刑ランキングとか一体何を言っているかと言うと、この街は先の法を執行する処刑場だ。そしてその処刑場での処刑はこの街の外ではエンターテインメントとして非常に人気だ。多分あの多腕との死合いもあの広場にあった監視カメラに録画され、外で色々編集されて流されることになるだろう。


そのエンターテインメントの企画の一つとしてジェーンが言っていたランキング制度がある。しかし人はやたら順位付けしたくなるのは何でなのか。


「あんな数頼りの頭がおめでたい雑魚を倒しても何の感慨も浮かばなかったよ」


仕方なく未開封の牛乳パックを開けてコップに注ぐ、せめて喉ぐらいは潤しておきたい。


「酷い言いようだネ。確かに前の10位が事故という名のリンチで死んだのを漁夫の利で得たようなヤツだったかラ、実力不足な所はあったけどサ」


「上の連中は楽しめることを祈るよ」


未来への期待を口にしてからコップの中身を一気飲みして食卓の椅子に座る。せめてこの牛乳くらいには冷たさを持った連中であることが望ましい。そっちの方が気兼ねする必要は無いから。


「そこは安心しなヨ、キミの旅路は決して退屈することは無いと保証しヨウ」


「さて繰り返すようだけどギン、今日からキミはランキング10位となった訳ダ。今日からゆっくりと眠れる日があると思うなヨ? 溢れんばかりのの処刑人達が君の首を昼夜問わず狙ってくるゾ」


「来たら切るだけだ」


「流石サムライだネ。それこそ正にクールだってやつダ」


「さてトップテンになったのニその特典が莫大な命のリスクだけだと割に合わないネェ。ということでキミにはランキング9位への挑戦権を授けヨウ」


「挑戦権ね」


「そうだネ。別に今からキミは9位より上の連中の首を獲りに行ってモいいケド、その場合沢山邪魔が入るだろうネ」


「邪魔は、出来れば排除したいな」


「挑戦権を行使すれば私達がその場を整えてあげるヨ。イベント管理は運営の仕事サ」


「9位より上の連中にはその権利を使えないのか?」


「何事にも段取りってものがあるのサ。下位の処刑人には1つ上のランカーへの挑戦権しかないんダヨ」


めんどくさいが確実に進むには挑戦権を使って一人ずつ斬っていくしかないか。


「それで、早速挑戦権をつかうのかイ?」


「当たり前だ」


「オーケー! さて次のキミの相手だケド、マッドサイエンティストだヨ」


「マッドサイエンティスト?」


「ラザロ・ペストーニャ。年齢不詳の科学者の男サ。マッドが頭に付いてるから分かると思うけど本当に頭がイッてるからお喋りは期待しない方がいいヨ」


「仲良くなりに来てんじゃねえよ」


「……フフフ。さてそんなイカれた男の居場所は今使ってるその端末に送っといたヨ。キミが着く頃にはショーの準備も終わってると思うヨ」


「そうかよ。じゃあもう行くから切るぞ」


椅子から立ち上がり、壁に立て掛けていた愛刀を手に取ってそう答え通話を切ろうとする。


「甘い死を私達に魅せてくれヨ? 処刑人死刑囚シノハナ・ギン君」


皮肉か或いは自虐か。何れにしても俺のやることは変わらない。


刀を振るって首を獲る、ただそれだけをやればいいしそれだけしか出来ないのだから。


俺は玄関の扉を開けて、端末に送られてきた座標にある汚染地域(・・・・)近くの工場地帯にある建物へと向かった。


4/14追記 ラズロだのラザロだの名前ガバガバなのが発覚したので修正。ラザニアでいいと思ったのでラザロ・ペストーニャが正しいです。

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