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ランドルフ・ストーカー(1)

「今回は今まで一番見応えのある処刑だったヨ、第7位サマ」


毎回毎回寝起きでこの声を聞くとどう足掻いても腹立つな。


ここは町外れの教会。工場とかと同じく元々あったものが放置されて残ったものだ。こんなところに神様なんかいる筈がないので勿論神父なんて人格者も住んではいない。つまり今、ここは大きな空き家だというわけだ。十字架の後ろにある窓から差し込む夕日の中でする昼寝は中々の寝心地だった


「もう少し寝させてくれよ」


「フフッ、キミが休みたくても視聴者は待ってくれなくてネ、時間に余裕はないのサ。という訳で早速次の第6位について話そうか」


超能力者(エスパー)が出てきたんだ。もう今更誰が相手でも驚かないよ」


「キミは吸血鬼(ヴァンパイア)を知っているかイ?」


「あの血を吸うやつだろ? ……まさか次の相手?」


「おめでとう、大正解ダ。創作物だと美しい美女の血を好んでその血を異様に発達した犬歯で首に噛み付いて啜ったり、超人じみた身体能力や再生能力様々な蝙蝠に化けるといった特殊能力があったりするらしいネ。大体同じようなことが出来る相手だと思っていいヨ」


「碌でもねぇ……」


「彼、ランドルフ・ストーカーの今までの処刑を見た感じだとまともな手段では殺せなさそうだけど、キミの刀で殺せるのかナ?」


「別に刀じゃなくても心臓を杭で刺すとか、銀で出来たもので倒すとか、てか日に当たったら死ぬんじゃないのか」


「太陽の下には普通に出れるヨ。それと昔の彼の処刑映像見てるとサ、銀の弾丸を沢山ぶち込まれてもすっごいピンピンしてるんだよネ。銀弱点抜きにしても身体の構造どうなってるんだロ?」


「……ニンニクってこの街にあるのか?」


「ポイント払ってくれれば明日にはクローンニンニクを送ってあげるヨ」


「クローンの意味あるのかそれ?」


「ああ、そうそう。前キミと一緒にいタ……えーとワンダーソン?」


「ジョニーのことだったらヘンダーソンだ」


「そうそうソイツ。結構頑張ってるみたいだヨ? キミに変に沢山のポイント貰ったからやたら襲われてるけド、ちゃんと生き残って着実に順位上げてるみたいダ」


「へぇ、片腕で頑張るな」


「いや、流石に義手はもうついてるよ?」


「あっそ」


「興味無さげだネ。助けたり助けられたりしたんじゃないノ?」


「呉越同舟って俺の故郷の古いことわざと一緒だ。たまたま目的地が一緒だから共にしただけで、基本的には敵同士。船を降りたらそれまでの関係さ」


次会ったら片腕じゃなくて首を落とす。それで終わりだ、今までと何一つ変わらない。躊躇いなんてあるわけが無い。


「フーン。……あ、今思い出したんだけど。何か次の対戦相手、アッチから来てくれるそうだヨ?」


思考の海に沈みかけていた俺を無理やり水面に引き上げるような言葉が聞こえ、咄嗟に刀を持って周りを警戒する。ジェイソンみたいにいきなりこないだろうな。


「ハハハッ、そんな警戒しなくても大丈夫だヨ。次の相手はそんなことしないからサ。それにホラ、ジェイソンのアレは一種の彼なりの演出だったんだから許してやってよ」


「何を許せばいいのか分からないが、死んだから許してやるよ」


「ハハハッ、いいネその冗談。……座標はもうそこの教会の前を示してる。出迎えてあげなヨ。……彼は吸血鬼(ヴァンパイア)ダ、キミは確かに強いが今度の相手は今までとは訳が違ウ。文字通り化け物サ。……でも死にたくないだろウ? ならば勝テ。それだけがアナタに許された唯一の道なのだから」






通信が切られた端末を仕舞い、教会の外へと向かう両扉を押し開ける。


西洋風味を感じるレンガ造りの家々達に囲まれた広場、その円の丁度反対側にボロボロのローブを頭から纏うまるで幽霊みたいな奴がいた。


「落ちぶれたドラキュラみたいだな」


「ドラキュラか……そんな大層な男じゃないよ私は」


「ランクの割に随分自信が無さそうだな」


「私は負け犬だ。負け続けたその果てにこうしてここに立っている」


「それはこの街に来る前の話だろ? 今はこうやって最上位ランカーの一人だ、勝ち組じゃないか 」


「いいや今もだよ。……だがそれも今日までだ。後一歩でようやくあの男に手が届く。この暗き炎を消しされる時が近いんだ」


「……復讐か」


「そうだ。……そして君も同類だな。その赤色の死者の目を見れば分かる。随分遠くを見ている……そうか、1位か」


「ああ、だからお前は通過点だ」


「容易いと思うなよ。私のコレが重ねた年月は君の比では無いぞ」


ローブのフードを外す。そこにはやたらと青白い肌、そして気味が悪い程に輝く金色の瞳を湛えた男がいた。片目には縦に3つ爪痕が走っている。その傷を与えた相手が復讐する仇なのだろうか。


そしてその瞳に最初の臆病さは微塵も感じなかった。目の前の吸血鬼は臆病な自分を殺せるほどの憎悪と覚悟を持っている。……丁度いい。


「通過点と言ったのは取り消すよ。……そろそろ自らの未熟さを感じ始めてたんだ、だからアンタを踏み台(・・・)にする。色々教えてくれよセンパイ」


「フッ、先ずはその身の程から教えてやろう」


そして人がいないが故に自動化された教会の鐘が夕刻を示す鐘を鳴らすと同時に二人の復讐者がぶつかり合う。


クローンニンニクって何ですか()

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