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不幸の中の幸福  作者: みずかがみ
4月7日現在
21/39

突然にやってくる

クミさんと付き合い始める

クミさんはうつ病だった

併用して過食嘔吐を繰り返して

前歯はボロボロだ

胃酸で溶けてしまうのだ


最初は私の家に通い

何度も愛を育んだ

私のシフトはいっぱいいっぱいだった

でもクミさんとの時間を大いに楽しんだ

クミさんと居る時間が

だんだんと増えていく

クミさんと同棲することになる


しかしクミさんはうつ病を理由に

炊事も家事もしてくれなかった

夜勤が終わり昼ごはんの準備

部屋の掃除に洗濯物

目の回る忙しい毎日だった

時には気持ちの落ちてるクミさんを

優しく抱きしめ大丈夫だよ

と励ますことも多々あった

私の中の歯車が音もなく

ゆっくりと壊れていく

そんな生活が1年半は続く


そんな中コンビニでの働きが認められ

店長資格を取らないか?と

マネージャーに言われる

マネージャーとは特定の地域を受け持つ

チェーン店の偉い人である


私は店長になれるならばなりたい

そう答えると後はトントン拍子に

話しは進んだ

JRの子会社だったウチのコンビニ

店長資格はかなり狭き門だった

6人受けて1人受かると良い方だ

私の日課に勉強が入る


私はがむしゃらに勉強した

接客から機械の温度設定

お世話になった店長に

報告するため電話をする

久しぶりだった

忙しい毎日で連絡を怠っていた

そこで電話から耳を疑うことを言われる

お世話になった店長が肝臓癌になっていた

しかもかなり進行して

転移もあるだろうとの事

私はお見舞いに行くと言うが

お世話になった店長は

今は大切な時期だ

そんな時間あるならば勉強しろ

そして店長になった姿を見せてくれ

逆に励まされてしまった

癌!?祖父の葬儀をまたも思い出し

私は電話をきった後

誰にでもなくチクショウと言っていた


3カ月後に店長資格試験を控えたある日

お世話になった店長の奥さんから

突然連絡があった

店長の他界した連絡だ


私はすぐに休暇をもらい

新幹線に乗って店長の元に行く

奥さんが駅まで車で迎えに来てくれた

店長は仏教だったみたいで

祖父の時とは違い自宅での葬儀だった

自宅に向かう車内では

奥さんは気丈に振る舞い

明るく話しかけてくれていたが

真っ赤に腫れた眼が

全てを物語っていた


葬儀会場の自宅に着く

見たことのない白黒の垂れ幕で

壁は覆われて生活感は

隠されている

私は作法がわからないので

奥さんに教えてもらった

お焼香をあげるやり方だ


久しぶりに会う店長は

げっそりと痩せ昔の精悍さはなかった

闘病がどれほど苦しかったのか

一目瞭然だった


私は教えられた作法を実行した

そして皆が終わった後

奥さんにお願いして

顔を触らせてもらう

やはり冷たい


正直な話し突然だったので

半分実感がなかった

本当なのか?奥さんの悪い冗談?

しかし現実に店長は冷たい

まだ店長になった姿を見せてないのに

まだ恩を1つも返せてないのに

まだ話したかったことも沢山あるのに

まだ、まだ、まだ、まだ、

私は生まれて初めて声を出して泣いた

どんな辛いことも

泣かない様に過ごして来たが

この時だけは違った

早すぎるよ

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