突然にやってくる
クミさんと付き合い始める
クミさんはうつ病だった
併用して過食嘔吐を繰り返して
前歯はボロボロだ
胃酸で溶けてしまうのだ
最初は私の家に通い
何度も愛を育んだ
私のシフトはいっぱいいっぱいだった
でもクミさんとの時間を大いに楽しんだ
クミさんと居る時間が
だんだんと増えていく
クミさんと同棲することになる
しかしクミさんはうつ病を理由に
炊事も家事もしてくれなかった
夜勤が終わり昼ごはんの準備
部屋の掃除に洗濯物
目の回る忙しい毎日だった
時には気持ちの落ちてるクミさんを
優しく抱きしめ大丈夫だよ
と励ますことも多々あった
私の中の歯車が音もなく
ゆっくりと壊れていく
そんな生活が1年半は続く
そんな中コンビニでの働きが認められ
店長資格を取らないか?と
マネージャーに言われる
マネージャーとは特定の地域を受け持つ
チェーン店の偉い人である
私は店長になれるならばなりたい
そう答えると後はトントン拍子に
話しは進んだ
JRの子会社だったウチのコンビニ
店長資格はかなり狭き門だった
6人受けて1人受かると良い方だ
私の日課に勉強が入る
私はがむしゃらに勉強した
接客から機械の温度設定
お世話になった店長に
報告するため電話をする
久しぶりだった
忙しい毎日で連絡を怠っていた
そこで電話から耳を疑うことを言われる
お世話になった店長が肝臓癌になっていた
しかもかなり進行して
転移もあるだろうとの事
私はお見舞いに行くと言うが
お世話になった店長は
今は大切な時期だ
そんな時間あるならば勉強しろ
そして店長になった姿を見せてくれ
逆に励まされてしまった
癌!?祖父の葬儀をまたも思い出し
私は電話をきった後
誰にでもなくチクショウと言っていた
3カ月後に店長資格試験を控えたある日
お世話になった店長の奥さんから
突然連絡があった
店長の他界した連絡だ
私はすぐに休暇をもらい
新幹線に乗って店長の元に行く
奥さんが駅まで車で迎えに来てくれた
店長は仏教だったみたいで
祖父の時とは違い自宅での葬儀だった
自宅に向かう車内では
奥さんは気丈に振る舞い
明るく話しかけてくれていたが
真っ赤に腫れた眼が
全てを物語っていた
葬儀会場の自宅に着く
見たことのない白黒の垂れ幕で
壁は覆われて生活感は
隠されている
私は作法がわからないので
奥さんに教えてもらった
お焼香をあげるやり方だ
久しぶりに会う店長は
げっそりと痩せ昔の精悍さはなかった
闘病がどれほど苦しかったのか
一目瞭然だった
私は教えられた作法を実行した
そして皆が終わった後
奥さんにお願いして
顔を触らせてもらう
やはり冷たい
正直な話し突然だったので
半分実感がなかった
本当なのか?奥さんの悪い冗談?
しかし現実に店長は冷たい
まだ店長になった姿を見せてないのに
まだ恩を1つも返せてないのに
まだ話したかったことも沢山あるのに
まだ、まだ、まだ、まだ、
私は生まれて初めて声を出して泣いた
どんな辛いことも
泣かない様に過ごして来たが
この時だけは違った
早すぎるよ




