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不幸の中の幸福  作者: みずかがみ
4月7日現在
10/39

熱血漢

その寮は聞こえは良いですけど

タコ部屋でした

八畳程の広い部屋に6人暮らし

風呂トイレは共同

働いた賃金から寮費食費光熱費が引かれ

私の収入では1200円しか残りませんでした

もっと資格持ってる人は

沢山貰えているみたいですけど

賃金の話しはほとんどしてません

金銭の盗難や貴重品の紛失は

全て自己責任でした

なので寝るときは枕の下に

財布を置き盗まれない様にしてました


通勤は相変わらずワゴン車

乗せられて同じ現場へ数日

その後違う現場へ

こんな繰り返しの日々が

約一年続きます

途中お風呂に入っている時

全財産盗まれてたりもしました

でも布団で眠れる幸せを感じ

そこそこ満足してましたが

ある日同室のオッさんが

お金がないと騒ぎ始めました


もちろん私は知りません

でもまだ新入りだった

最年少の私を疑ってきて

お前が来るまではこんなことなかった

そんな事を言って来ました


私は財布も見せ

パンツ一丁になり

潔白をアピールしましたが

どうやら新入りが気に入らないみたいで

私と話す人はだんだんと減っていきました


私の居場所はここじゃない

こんなオッさんに囲まれ

プライバシーなんて無い生活に

うんざりしてました

この時17歳でした


ふとコンビニに行った時

求人誌を立ち読みしました

新しい仕事を探そうかなぁ

そんな軽い感じでしたけど

それが転機でした


目に入ったのは

パチンコ屋の求人

給料は良いし寮もある


私は翌日には

公衆電話から

面接の予約をとりました


繁華街から少し離れた

寂れた街でしたけど

駅近くでそこそこ便利な店でした


パチンコ屋は風俗営業なので

18歳未満は入場も遊技も

お断りの営業スタイルです

私は履歴書に18歳と書き

面接を受けました

いつから働けるか聞かれたので

明日からでも働けます

と答えると面接していた店長に

気に入られて即採用でした

昔のパチンコ屋は

身分証も必要なく

偽名で働いたりしてる人もいるくらい

セキュリティはザルでした


まず驚いたのは

寮といっても個室で

エアコンとテレビ完備

風呂トイレは共同でしたが

とても綺麗で感激しました


布団もクリーニング済みの布団

しかも食費光熱費無料でした

寮費で月に25000円引かれましたが

工事現場の寮とは

比べられない程の快適さでした


食事は弁当じゃないし

夏はエアコン付け放題

布団も定期的なクリーニングしてくれて

私からすると天国でした


しかしその天国も

続かない可能性が出てきました

住民票の提示を求められました

18歳まであと少し

約5カ月くらいでした

なんとか引き伸ばして

住民票の提出をしなかったのですが

とうとう事務員さんに怒られ

住民票を取りに行く事になりました


住民票を取りに行って

まず驚いたのが

私の住民票がなかったんです


家出した後に住民票と戸籍を抜かれ

私は住所不定の行方不明者でした

役所の人曰く、長く行方不明だと

死亡者扱いとなり

日本国籍が消滅していたみたいです

早めに気付いて良かったね

と言われましたが

私は良くありません

でも役所で怒っても何もならないので

役所の人と相談しながら

戸籍を作り住民票も寮の住所で取れました

でも17歳なのは変わりません


ついに歳がバレる時が来ました

私は正直に事務員さんと店長に

今までの経緯を話しました


事務員さんは解雇する

つもりだったみたいですが

店長が男気溢れる熱血漢で

「残りたいのか?ウチで働きたいのか?」

と聞いてきたので

「はい働きたいです」と答えました

店長はちょっと困った顔をしましたが

なんとかすると言ってくれました


その日から5日間

私は働けなくて

部屋でテレビを見てました

6日目店長から呼ばれ

事務所に行くと

店長は満面の笑みで

「働けるぞ」と言ってくれました


なんでも警察署まで行き

18歳未満を雇うが

夕方5時までしか働かせない

(交代時間は6時です)

その約束で働ける様になりました

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