表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴィントスとベド   作者: 記角麒麟
2/3

【第二話:光が降り注いだ――Geben Weisheit――】

 ヴィントスが去ってから数日が経ちました。

 噂好きな風の精は、未だ戻ってきません。


「もしかして、忘れられてないよね?」


 不安になった雑草のベドは、独り言……いえ、一束言を話しました。

 と、そんな時でした。

 空から一条の光が降り注ぎました。


「お前がヴィントスの言ってた新種の草か?」


 ベドは突如として空から降ってきた声に驚き、天を見上げ……られないので、意識をその言葉に傾けました。


「はい。ボクは雑草のベドです。

 貴女は誰ですか?」

「私は光の精だ。

 名前はデーノブリッス。長いから、リッちゃんって呼んでくれ」


 デーノブリッスは腰に手をあてて仁王立ちをすると、ベドにそう自己紹介をします。


「それにしてもお前。

 ヴィントスの言ってたとおり変なやつだな」


 デーノブリッスは顎先に人差し指を立てながら、可愛らしく首を傾げました。


 ちなみに彼女の容姿は、金髪の幼い女の子のような姿をしていました。

 ヴィントスも同じような容姿だったけれど、髪の毛の色と瞳の色だけは碧緑あおみどり色でしたが。


「え、ええっと、えっと……。

 そ、それでリッちゃんは、どうしてボクのところなんかに来たんですか?」

「来ちゃ悪いかよ?」

「い、いえ!

 滅相もありません!」


 光の精は頬をふくらませると、足下の石を蹴り転がしました。

 どうやら機嫌が悪そうです。


 そんな時、ふとあることを思い出しました。

 そういえば先日、風の精シルフのヴィントスが不穏なことを言っていました。たしか、カミサマに話をつけてくるだとか。


 光の精は精霊の中で、カミサマに一番近いと、少し昔に近くを通った土の精が話していたのを思い出します。


「……ちょっとカミサマ経由でヴィントスに頼まれてさ。

 お前を自由に歩けるようにしてやりに来たんだ」

「ヴィントスがそんなことを?」

「あー、なんでも?

 お前のことを気に入ったから、一緒に旅がしたいんだとよ。

 カミサマもお前のそのチョウショク?それに興味を持ったらしくてさ……。

 ったく!

 私はパシリじゃねえっつぅの!」


 幼女特有の、まだ声変わりをしていない甘い声で悪態をつく光の精アルヴのデーノブリッス。

 そのさまはなかなかシュール極まりない光景だなあ、とベドは思うのでした。


 それからしばらく、リッちゃんによる歩行訓練が続きました。

 自分の根っこを手足の代わりにして、自由自在に動かせるようになるのには、かなりの根気を強いられましたが、もっと住みやすい場所を探すため、もっと外の世界を知りたいという知識欲のため。

 ベドは試行錯誤の上、やがて自分で歩くことができるようになりました。


 根っこをまとめて二本の腕と二本の脚を形成し、力強く地面を踏ん張ります。


 途中で水の精ウンディーネのアクアに助けてもらいながらも、その成長は日々更新されていきました。


「これで私から教えられることはもう何も無い!

 晴れて卒業だ、ベド!」

「ありがとうございます、リッちゃん!アクアさん!」


 こうして、最初はただの雑草だったベドは、精霊たちの加護を受けて、特殊な植物ユニーク・プラントへと進化するのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ