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ダークヒーロー系魔王男子とチートなお節介系幼馴染は果たして世界を守れるか!?  作者: アシタカ
第一章 竜人族領・プライディア編
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第02話 世界情勢

 私はドロデンドロン大陸の竜人族領、プライディアでいまだ軟禁状態となっていた。元々竜人族は他種族を嫌っていて、プライディアでは他種族の入国規制が厳しいらしい。とても閉鎖的なこの国では、嫁に他種族を迎えることは私が考える以上にビッグニュースだったようで、そのことは全世界に向け発信されたとのことだった。

 カルヴィンが話してくれたことには、そうすることで私がこのプライディアに永住する権利を得られたのだと教えてくれた。最も、私はそんな権利を望んではいないのだけれど。


「たぶん、スペルディア様は対魔王のためにマーガレットをこの国に置いているのだ。マーガレットがいれば、同郷の魔王は簡単に手出ししてこないだろうと踏んでいるのだ」

「ナイトが魔王なんて、まずそこが間違ってるのよ。カルヴィンだって覚えているでしょ、あのナイトよ?そんなことあるはずないじゃない」


 厨二病で痛々しくて、魔法もコントロールがきかないナイトだ。大体彼は人族なんだし、もっと言えば異世界の人間だ。それがどこをどうしたらこの異世界の新魔王になるんだか。しかしカルヴィンは首を横に振る。


「それがしはあのナイトという少年とそんなに接していないので分からないのだ。人族かと思っていたが、としか言いようがない」

「ちゃんと人族です!」

「どうしてそう言い切れるのだ?」


 はぁ?


「そんなのもちろん、ナイトは私の幼馴染みで、昔からずっと知ってるからよ」

「マーガレットはナイトの何を知っているのだ?本当に彼が魔族でないとどうして言い切れるのだ?」


 カルヴィンの言っている意味が分からない。私たちは大前提として異世界の人間だし、魔族であるなんてありえないのだ。でもそんな説明は分かってくれないだろう。


「ナイトはとにかく人族なの!一緒にラースラッドまで行ってくれれば証明できるわ」

「それはできない相談なのだ。マーガレットはこの部屋から出る許可がおりていない」


 カルヴィンたち竜人にとって、スペルディアは本当に信頼できる王のようだ。彼らは竜王を慕い、彼の言うことに疑問を持たない。スペルディアが部屋から私を出すなと言えば、それはもう絶対なのだ。


「じゃ、私が自分で竜王を説得するからあの人呼んできてよ」

「それもダメなのだ。今、スペルディア様はお忙しい。国防を強化する指揮を執っておられるのだ」

「国防?」

「あぁ、復活した魔王対策と…あの『ラースラッドの悪魔』対策なのだ」


 イザークのことか。その呼び名は止めてほしいけれど、私のそんな気持ちなど気づかずにカルヴィンは続ける。


「彼はマーガレットを助けにプライディアに来る。『ラースラッドの悪魔』なんて伝説級の怪物相手だから、国総出で対策に打ち込んでいるのだ」

「そんな、イザークは酷いことなんて…」

「それがしも今まで彼と過ごしてきたイメージからだとそう思う。しかし、彼が『ラースラッドの悪魔』だったのなら話が違ってくるのだ」


 カルヴィンは体をブルリと震わせて、『ラースラッドの悪魔』について語る。


「どこまで本当かは分からない。しかし千の人族が束になっても敵わない竜人族を、千の数殺してきたのがソレだと聞いているのだ。それがしも俄には信じられないが…」

「その噂が間違ってるんじゃないかしら。だって、あのイザークだよ?確かに強いなって思ってたけど、そんなことするようにはとても思えないし 」


 私は「そうであってほしい」という気持ちをどこか持ちながら話してみた。しかしカルヴィンは首を横に振るだけでそれに同意することはなかった。


「あとは魔女と接触したことにより冒険者ギルドから謁見の申し込みもあった。プライディアは今、色々と慌ただしい事態になっているのだ」


 冒険者ギルド?ギルドが一体何の用事だろうか。


「冒険者ギルドは国から独立して機能する民間の機関で、どの国にも属さないが武力は一国家に引けをとらない。彼らは世界平和を理念としていて、得体の知れない魔女のことを警戒しているのだ」


 魔女の秘め事については王しか知らないはずだ。であれば王以外にとって魔女ってどういう存在として知られているのか。


「突然変異で恐ろしい量の魔素を使いこなすようになった者のことを魔女というのだと…そのように言われている。魔女を見たことある者など今回の出没までほとんどいなかっただろう。ただ、そのあまりに強すぎる力で、災いをもたらすとか世界を破滅に導くとか言われているのだ」

「なるほど。敵わない力を持つ存在は危険因子ってことね」


 実際、魔女は世界を滅ぼすほどの力を持つ秘め事を各王に渡したのだから、とんでもない力を秘めているのだろう。


「冒険者ギルドは魔女の討伐をずっと目論んでいる」

「そうなの?」

「災いがもたらされる前に粛清するのだと、昔は各王を引き込もうとよく交渉に来ていたらしいのだ。最近は随分大人しくなっていたが、魔女が再び人前に姿を現し、さらに竜王と共にいたことで変に火がついたらしい」


 当然、竜王はこの事態になることを知っていながらあの時は魔女を背中に乗せていたのだろう。一体どれほどの未来を見てきているのか、この世界の流れにはどんな意味があるのか…


「とにかく、今プライディアは忙しい。プライディアに限らず、世界が混乱しているのだ。マーガレットには申し訳ないが、大人しくしていてほしいのだ」

「カルヴィンって、平和を愛してるんでしょ。ならおかしいんじゃないの?」

「…おかしい?」

「世界が混乱するような事態が引き起こされているんでしょ?故郷に帰れれば、もうどうでも良くなっちゃったの?魔女の秘め事の存在を知った時は、その力に疑問を持って破壊することに賛同してたじゃない。それなのに、今は秘め事を使う竜王に従って混乱をただ傍観するだけなの?」


 カルヴィンの顔は引き攣った。彼の中に罪悪感というものがあったようだ。

 だってカルヴィンはイーラが魔女の秘め事を全て破壊すると言った時はそれに感銘を受けて自分も協力したいと言っていたのだ。それなのに、今は何事もなかったかのように竜王に従い彼の秘め事を使った予言とやらを信用している。物凄い掌返しだ。


「…予言は他人を傷つけないのだ」

「本当にそう言えるの?」

「当たり前なのだ!未来を見たからって誰かが傷ついたりするわけではないのだ!」


 カルヴィンは私を怒鳴ると、そのまま逃げるように部屋を出て行った。やっぱりカルヴィンを説得するのは難しいようだ。カルヴィンが出ていくと、気を使って途中から部屋の外に出ていたイザベルが入れ替わりに部屋へと入ってきた。


「あなたは不思議な人族ですね」


 普段からあまり多くを喋らないイザベルが、不意にそう呟いた。意味が分からなくて首を傾げると、イザベルは続ける。


「魔女のこと、冒険者ギルドのこと…あまり、知らないようですね?」

「あぁ…」


 そうね、確かに。カルヴィンは全然疑問も持たず私に説明してくれたけど、それこそこの辺りのことはこの異世界での常識ってやつなのだろう。


「ましてやあなたは冒険者の資格も持っているのに…」

「すみませんね。私、この世界出身じゃないもので」


 ヤケクソ気味に私がそう言うと、つまらないジョークでも聞いたというようにイザベルはため息を吐くのだった。

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