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百合園の誓い  作者: 川島
第三章ー百合園の敵対者Ⅲー
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2

 悠子が動くたびに、その身が白い力の奔流に打ち付けられた。指一本、視線ひとつ。動かしただけで、エルの力に弾き飛ばされる。

 回避することが不可能な、一撃。直線の攻撃を回避しても、不意に攻撃が直撃している。

 自我がないため、今の悠子は剣技を使うことはできない。当然だ。獰猛な獣のようにただ闇雲に動いてるだけの彼女に、剣技という技術が扱いきれるはずもない。

 それを見越しての攻撃なのだろう。いや、攻撃というよりは、防御にも等しいような、そんな白い粒子の波による連撃。

 

 悠子を倒すためではなく、防御だけに専念させる。それがその攻撃の意図だった。

 そして、それは成功だ。

 思惑通りに悠子は、その場から動けずにいた。

 というよりは動こうとする度に、純白の粒子の荒波によって押し戻される。


「ぅ、ぐっ」


 進むことも、引くこともできない。その状況に、悠子は息を吐き出すように唸る。


「グルルルル」


 肉食の獣のように喉を鳴らし、ばさりと六つの翼を大きく広げて、飛び上がる。が、直ぐに頭上に滝のように降り注ぐエルの攻撃のせいで、即座に撃墜され、地に落ちた。


「ぐふっ」


 だが、即座に起き上がり、懲りずに駆け出した。


「っ!」


 その姿にエルは再び迎え撃つ。悠子の逃げ道を封じるように。その膨大な粒子の渦が悠子の全身を襲う。

 どこにも逃げられず、そのまま元の地点まで弾き返される。そのはずだった。

 そうなるはずだった。

 だけど、今。それとは異なることが、目の前で起きた。


(速度が、上がった!?)


 純白の粒子の移動速度を遥かに凌ぐ。それほどの速度を悠子は瞬間的に出した。

 それも剣技による技術を用いた速度などではなく、純粋なただの脚力。

 それだけで、エルの攻撃速度を上回っていた。


(まずいっ!)


 エルは咄嗟に別の魔法を、発動する。それは迫り来る悠子の攻撃を阻む為の、魔法。


(間に合わ……ーーー) 


 が、もはや遅い。二人の距離は、手が触れ合える寸前のところまで縮まっていた。

 一瞬の油断。

 剣技を使うことのできない、身体能力だけの相手だと。

 そう高を括ってしまっていた。

 相手は剣技を使えないとはいえ、あの悠子だ。

 それなのに。悠子の体を傷付けないようにと、攻撃に手を抜いたりもしていた。本来、同格の二人。そんな対等の立場なのに、攻撃の手を緩めた。その結果が、これだ。

 回避はおろか、防御もできない。そんな状況にエルは追い詰められた。

 唯一、エルに許されたことは、全身に魔力の巡らせ、そうやって出来るだけ攻撃を軽減することくらいだ。


「ーーーーー!」


 悠子は拳を振るう。その時だ。二人の間に薄く半透明なガラスの壁のようなものが現れたのは。


「!」


 それにエルは驚いた。

 自分の魔法ではない。別の誰かの、防御魔法。

 だが、この程度の防御魔法では悠子の拳を受け止めるには足りず、直ぐに砕け散った。

 ただ、それが緩衝材になったのだろう。

 悠子の拳の勢いが少しだけ落ちた。


(これくらいなら、何とか受けきれるーーー)


 そして、悠子の拳が、エルの頬を打ち抜いた。


「っっ」


 口の中に血の味が広がった。ばきりと奥歯が欠けたような感触を口の中に得る。

 そのままエルは、殴り飛ばされた。

 さらに悠子は、エルが地面に落ちるよりも早く、追撃する為に空中の彼女を追いかける。

 が、流石にそれを防ぐための備えは、きちんと用意されていた。

 悠子の足元に幾何学的な魔法陣が浮かび上がる。


「!」


 その魔法陣の端々。東西南北の位置から白い鎖が飛び出し、悠子の手足に絡み付いた。


(獅子封鎖)


 それはエルの開発した、封印魔法。

 獅子封鎖。

 六縄封印よりは、幾分か拘束力は落ちるが、それでも一瞬の足止めくらいならば、十分に出来る。

 が、完全な拘束をするには、これだけでは不十分だ。

 エルは宙を一転して、着地し、そのままの勢いで大地に掌を合わせる


凍結封印(コキュートス)


 すると、悠子の足元の魔法陣から天まで。氷の柱が伸びた。


「っ!」


 その中に悠子は、四肢を白い鎖で縛られたまま封じ込められた。


(これで、しばらくは時間を稼げるかな)

 

 


 

 

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