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百合園の誓い  作者: 川島
第三章ー百合園の敵対者Ⅱー
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8

「どういう意味かしら?」


 言う悠子にアルは答えを返す。


「そのままの意味さ」


 アルは足を組み直し、眼前の一人の少女に告げる。


「この体は、私の器として新たに用意したものだから元の姿とは異なるのは仕方の無いこと」


 言ってる意味が分からない。勿論、要所要所に散りばめられたヒントのおかげで、推察することは容易い。だが、それがどういう原理のものなのかまでは不明。一切が分からない。

 

「新たな器……?」


 悠子は彼女の言葉の中に散らばったヒントを元に、一つの予想を立てる。


(まさか転生魔法……?)


 昔、耳にしたことがある。その魔法の話を。


(いや、それはないわね)


 だが、その魔法は、実在するという類のものではなく、あくまでも魔法使い側の伝説に過ぎない。ただ、普通の伝説と違うのは、理論的にそれは完成し切ってるということだ。転生の理論そのものには、一切の誤りはない。魔法を使えるものならば、誰も彼もが発動することができる。が、それはただの理論上の話に過ぎない。実際は圧倒的に魔力が足りず、発動すらできないような代物だ。

 仮に彼女がエルの作った『情報を魔力に変換する魔法』を使ったところで、未だ足りない。それこそ世界そのものを変換したりしない限りは発動することはないだろう。

 

「ちなみに転生魔法ではないよ」


 すると、そんな悠子の思考を察したのか、アルは言う。


「誰にも悟らせずに、転生魔法を行うことなんてのは、人には不可能。もしもここにいる私が転生によって生じたものならば、膨大な改編痕が残るはずだしね」


 まさにその通りではあるが、魔法には疎い悠子には、彼女の生きてる理由については説明することも、憶測を立てることもできなかった。


「……まあ、この際、あなたの姿の変移はどうでもいい。 悪いけど、ここで貴女には死ーーー」


 死んでもらう、と考えたが、即座にその思考を改める。このまま殺して、また復活でもされたら厄介だ。それにエルの魔法の奪取の件もある。ここは生かして捕らえた方がいいだろう。


「いえ、拘束させてもらうわね」


 悠子は血濡れの太刀を真正面に構える。


「それは困るなぁ」


 飄々とした態度のアル。その余裕たっぷりの姿に悠子は、摺り足でじりじりと距離を詰めていく。部屋の入口付近の悠子と、その一番奥に堂々とソファーに座ったままのアル。その距離は、約五メートル。悠子ならば一瞬で移動できるが、それをしないのは、単純に目の前の相手が未知数だからだ。神代悠子を相手にするのに、何も仕掛けてないはずがないだろう。これが普通の魔法使いの罠なら悠子は平然と飛び込むかもしれないが、目の前の相手は、今在る世界を形作った創造主の一人だ。どんな罠を仕掛けてるのかは、分からない。だから慎重に事を進める必要があった。

 魔法使いの罠、というのは発動するまでは分からない。魔法によって生じる改編痕は、発動することで始めて表れるものだ。地雷のように踏み抜くことで、ようやく発動を認識することができる。そう設定されて仕掛けられてることがほとんどだ。だからこそ、罠を張れる魔法使いというのは、ある程度の使い手ということになる。


 悠子は摺り足で徐々に距離を詰めていく。


(『領域侵食』か。流石に私は警戒されてるみたいだね)


 悠子の摺り足による進行。これはただノロノロと歩いてるわけではない。自身の完全干渉範囲を広げる剣技、ーーー領域侵食。

 自身の完全干渉範囲では、魔法を使用する事はできない。勿論、エルのように魔力そのものの攻撃を無効化することはできないが、魔法による干渉ならば自身の認識によって、無効化することができる。

 罠とて例外ではない。


(まあいいか)


 が、今更悠子が何をしたところで、遅い。アルはうっすらと口元に笑みを浮かべ、先程美波から渡されたものを取り出した。


「!」


 それは筒のような細長い形状のもの。


(なにをするつもり)


 悠子は血濡れの太刀を強く握り締め、さらに警戒心を高める。だが、その姿にアルは、言う。


「これは警戒したところで、無意味だよ」


 だって、と続け、


「もう既に『詰み』だからね」


 そして、ポチッとアルはその筒の先端に埋め込まれたボタンを押した。直後、悠子の背中から大量の荒縄が吹き出した。


「なっーー!!」


 背中の布が弾け飛び、それはまるで翼のように吹き出し、悠子の四肢に巻き付き、その動きを封じ上げた。


(こ、れは、六縄封印……!?)


 どさりと悠子は、膝を落とす。


(まさか、まだ私の中に残って……、っ)


 全身の力が抜けて、その場に蹲るように倒れた。


(いや、それよりこの魔法が発動してるってことは、もしかして六条カナデが生きて……)




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