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その後、二人は、その話を終える。
一先ず、サンドの胎児の力については保留にしよう。
それが二人の出した結論だった。
あまり時間もないことだし、ほかにも話さなくてはならないこと(主に私事)は沢山ある。
だからとりあえず分からないことに頭を悩ませるよりかは、保留にしておいた方がまだマシだ。
悠子はエルを横目に見る。
今夜この空間に彼女を誘ったのは、悠子自身だ。
あの村に行くまでの道中の森の中で、悩んでるエルの姿が気になった。
その理由に、悠子は二つほど心当たりがある。
一つはやはり休日に一緒に出かけるという約束を反故にしたことだろう。
二つは、エルが文化祭の時に手にいれた力のことだ。
その二つどちらかのことで彼女は悩んでいるのだろう。
が、察するに恐らく悩んでるのは二つ目の方だと悠子は思った。
直感、というわけではなく、確信に近いものがある。
確証はないが、確信はあるのだ。
「ねえ、エル。あなた……、何か悩み事があるでしょう」
悠子は真横のエルに言い、それに一瞬だけ「……」と無言になった彼女は、次にゆっくりと頷いた。
「多分もう悠ちゃんに気付かれてると思うから隠さずに言うけど、実はあの文化祭の時に私の力は……その」
そう言いながらエルは掌を広げると、そこには純白の粒子群が手の中を循環するように吹き出していた。
「……なるほどね」
悠子は監察するようにその純白の粒子の流れを眺める。
確かにその力だけを見るに以前の彼女とは別格だ。
別に魔力放出の威力とか強度が上がったというわけではない。そういう表面的なものではなく、もっと内面的なもの。つまり魔力の密度や濃度が大きく上昇している。
そもそも魔法使いにとって一番大切なものは何か。それは魔力単体の強さではなく、魔力の質である。
勿論エルのように特殊な魔力ならば話は変わってくるが、普通は魔力単体の強さを磨くよりも魔力の質を上げる為に励む。
ただ、エルは全く魔力の質というものの学習はしたことがなかった。
理由はこれ以上の力は不要だったからである。
そんな彼女の魔力の質が、文化祭の時にアルを喰らったことで向上してしまった。
そのことにエルは少し落ち込んでいた。
「ごめんね、悠ちゃん。ちょっと強くなりすぎちゃったみたい」
それは嫌味でもなんでもないただの事実だろう。
実際、悠子の目から見てもそう思う。
「この空間もね、前までは維持するのに二、三時間が限界だったのに今ではほぼ永久に開き続けることができるようになったし」
もはや一切の疲労もなく、創造という行いをやってのけていた。
「悠ちゃん……、私どうしよう。このままだと私はまた一人に……」
声も沈み、暗い面持ちのエル。相当堪えているのだろう。
そこで悠子は、
「……エル」
と立ち上がり、ポンポンとエルの頭を叩きながら彼女は、
「あまり私を侮らないでくれる? あなたが先に行ったところで、私は直ぐに追い付くだけよ。だから安心して先に行ってなさい」
と言った。
「悠ちゃん……うん、そうだよね」
そして、それにエルも納得する。
「悠ちゃんなら直ぐに追い付いてくれるよね」
エルは目を輝かせながや悠子に言った。
「え、ええ、勿論よ」
そのつもりではあるものの、ここまで期待されると少しだけプレッシャーを感じてしまう悠子であった。




