7
ふわりと悠子は、その世界に降り立った。
一面が百合の花に覆われた世界。中央の水を循環させる人工的な噴水だけが、違和感を醸している。そんな世界。
「あ、悠ちゃん。遅かったね」
そこにエルの姿があった。
噴水の前に腰を下ろし、微笑む彼女。
その姿を見付けた悠子は、
「ごめんなさい。ちょっとあの子のことを見送ってたら、遅れたわ」
彼女の元に歩み寄り、どさっとその隣に腰を落とした。
「あの子……?」
と首を傾げるエルに悠子は答える。
「サンドのことよ」
「ああ、あの妊婦の……」
エルは納得して、そのまま言葉を続ける。
「でも、あまり仲良くしちゃダメだよ。人質に取られたりしたら厄介だし」
「ええ、それは分かってるわ。心配しないで、線引きはきちんとしてる」
「それならいいけど……」
エルは少し心配そうに悠子を見る。
その表情に悠子は思わず溜息をついた。
「大丈夫よ。私事で仲良くしてるわけでもないのに、人質に取られたくらいで判断を鈍らせるようなことはないわ。それに少し気になることがあるのよ」
と悠子は言う。
「気になること?」
悠子は頷き、先ほど見たことをエルに伝える。
「……さっき、サンドが転びそうになったのだけど、その時に母体を助ける為に彼女のお腹の子が魔力を発したの」
「!」
それにエルは少し驚いた。
「……それは少し気になるね」
ただ、その子に魔力があるだけならば『才能』で片付けることができるものの、魔力を発するのにはある程度の練習が必要になってくる。
エルみたいな特殊な人間ですら自我のない胎児の頃では、魔力を解放することは出来ないだろう。
「魔力を使えるってことは、もう自我が芽生えてるってことだし、胎児の段階でそれって多分なんかあるのかも……」
と言いながら、エルは悠子を横目に見る。
「まぁ、ただひとつ、魔法使いとしては天性の素質があることは確実だね」
「ええ、それは間違いないわね」
悠子は同意し、頷いた。




