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百合園の誓い  作者: 川島
第二・五章〜百合園の同盟〜
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2

 その部屋に居たのは、悠子もよく見知った少女だった。煌びやかな純白のドレスでその身を着飾り、部屋の中程に立っていた。


 その姿を目にした悠子は一度、会釈をし、礼節を示す。すると、目の前の少女もそれに答えるように頭を下げた。


「ようこそ、神代悠子さん。私は魔導師協会序列第一位、魔道の神子エル・クレシアと申します。煩わしい場所かもしれませんが、ゆっくりしていってください」


 白いドレスを着飾った少女。それはエルだった。エルは淡々と自己紹介の言葉だけを並べ、悠子に挨拶する。そこには、本来の二人の仲の良さは微塵もなかった。


「こちらこそよろしくおねがいいたします、エル・クレシアさん」


 そして、悠子も機械的に挨拶を返す。


 何故この二人がここまで堅苦しい挨拶を行っているのかというと、別に二人が喧嘩したからというわけではなく、この場が公的に用意されたものだからだ。これは、派剣協会と魔導師協会が共同戦線を組む為に用意された舞台である。あれほど互いに忌み嫌ってた二つの勢力が共同戦線を組む理由。それは、一つの魔法が原因だった。


 あらゆる情報を魔力に変換するエルの魔法。それは使い方によっては今ある法則全てが捻じ曲がるような危険な魔法だろう。それが奪われた。それも、悪魔を生み出し、それを使役するような狂気に満ちた悪魔崇拝の組織に。しかも、その長がクレシア家の先祖であり、この世の創造主たる大魔道士アル・クレシアというではないか。それは直ぐにでも対策を取らなければならないようなことだ。アルはエルが仕留めた。だけど、エルはアルが死んだとは微塵も考えていなかった。


 その理由としては、ひとつはエルの魔法を奪うために画策し、実行し、完全に二人の裏をかき、見事に計画の遂行を果たしたあの女が、自分が殺されることを前提に置いていたとは思えないからだ。そして、それからもうひとつ。アルの生存を確信する理由としては、こっちの方が強いだろう。この世界に微かだけど、アルの魔力を感知するからだ。エルはアルを取り込んだことで、アルの魔力が自分のもののように感知することができるようになった。


 勿論、アルの魔力は本当に微かで精神を研ぎ澄ませばようやく分かるような小さいものだけど、それでも生きてることは確実だ。


 だからこそ、エルは魔導師協会に提案した。派剣協会との共同戦線を。


 ぼふっと悠子はソファーに腰を落とす。部屋の至る所から視線を感じる。先ほどエルの言った「煩わしい」とは、そういうことなのだろう。この部屋は魔法によって監視され、恐らく映像配信もされている。この場には二人ではあるものの、厳密には二人きりではない。それが確かに煩わしかった。


 悠子は溜息をつく。


「それでは話し合いを始めましょうか、エルさん」


「ええ、そうですね」


 次いでエルもソファーに腰を落とした。そこで悠子は話を切り出す。


「まずはこちらの要望としては、そちらの抱えるアル・クレシアの全ての情報と奪われた魔法の詳細の開示を求める」


 それにエルは首を横に振る。


「……それは無理。奪われた魔法の詳細の開示は、構わない。だけど。アル・クレシアの情報で、そちらに与えられるものは、ほとんどない、」


「こちらはそちらに人員を与えるのよ。せめてその二つの情報の開示は最低限ね」


 足元を見る派剣協会、もとい悠子の言い分に、エルは眉根を細め、ムッとしたように言葉を返す。


「これは双方の問題のはず。今は利益を追求するのは互いに得策とは言い難いけど」


 その通りだ。確かにあの魔法が敵対戦力に渡れば、とても厄介だろう。いや、厄介で済めばまだいい。取り返しがつかなくなるかもしれない。それを分かった上で、悠子は答える。


「危険性はともかく、落ち度があるのはそちらよ。だからまずはそちらが譲歩するのが当然でしょう」


 それに対して、エルは呆れたように溜息をつく。


「……分かった。譲歩する。アル・クレシアの情報の30%開示。これでどう?」


 つかさず悠子は言う。


「せめて半分の50%ね」


 それにエルは首を横に振る。


「無理。33%」


「45%」


「35%」


「44%」


「37%」


「42%」


 そこまで来て、エルは最後に言う。


「40%。これ以上の譲歩はできない」


 その言葉に悠子はようやく肯定の念を示す。


「分かった。それでいいわ」


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