19
エルは悠子の隣まで歩み寄る。
「……火葬? 悠ちゃんの部下、この騒ぎで死んじゃったんだね」
「ええ、死んじゃったわ」
悠子は炎上する屍に視線を戻す。
「ねえ、エル。ひとつ聞いていい?」
その悠子の問に、エルは首を傾げた。
「なあに?」
「彼らは殺されたのだけど、その犯人に心当たりはないかしら」
「ああ、それね。多分このひとたちを殺したのは、狐のお面を被った人だと思う」
「狐のお面?」
エルは頷いた。
「うん、なんか安っぽい狐のお面なんだけど」
一瞬、エルの手の中が炎上し、それが刹那に消える。すると、その手の中に1枚の四つ折りの紙が握られていた。それはエルの記憶の一部をその紙の中に念写する魔法だ。
「今、私の記憶の一部を焼き写したよ」
エルは四つ折りの紙を開き、その中身を悠子に見せる。
「多分彼らを殺したのはこんなひとだと思う」
そこに描かれていたのは、狐面の人だった。顔は分からないものの挙措や体型から察するに恐らく少女だろう。
「このお面……、どこかで」
悠子はその紙に描かれたものと自らの記憶を照合し、その結果を口に出した。
「ああ、そういえばこのお面、文化祭の出店で売ってたわね」
それに対してエルは大きく頷いた。
「うん、でも狐のお面ってセンスないよね! 私なら断然ハトのお面にするよ」
その言葉に悠子は思い出す。そういえばこのお面は、他にも色々と種類があった。
「そうね。私はやっぱりネコかしら」
エルはにやにやと笑う。
「へえ、悠ちゃん。猫ちゃんがいいんだ……、なんか意外かも」
悠子は首を傾げる。
「そう?」
エルは「うん!」と首肯する。
「だって悠ちゃんは、猫っていうよりは犬っぽいから」
「ふふ、そうね」
悠子は思わず笑みを零す。
「そうかもしれないわね」
そのまま彼女たちは、目の前の炎が燃え尽き、鎮火するまでのつかの間の二人きりの時間を謳歌するのだった。




