18
ーー神代悠子は木々の太枝の上に立ち、その地獄のように凄惨な光景を俯瞰していた。
「全滅、ね」
それは悠子直属の部下の骸によって、形作られた地獄絵図だった。
悠子は舞うように飛び、大地に降り立つ。
(これは……、この殺し方は……、これは魔法使いの仕業ではないわね)
悠子は広がる地獄の光景に踏み込み、足元に転がる骸の一部を手に取った。それは切断された人の腕だ。
悠子はその腕の切断面に視線を向け、その考えを確かなものにする。
(綺麗な断面ね。焼き焦げた跡もなければ切断面に歪みもない。これは私と同じ剣士の仕業……、それも傷跡に一切の歪みがないほどに速い一閃で、腕が落とされている)
悠子は辺りに目を向け、さらに自らの考えを正しいものだと裏付ける。
(全員、同様の殺され方。死に方ね)
悠子は血の池を歩き、その中央に立つ。そして、鞘からゆっくりと血濡れの太刀を抜いた。
(皆…、悪かったわ。せめて私の中で、安らかに眠りなさい)
軽く黙祷し、そのまま血濡れの太刀をこの血まみれの地獄の中央に、まるで墓標のように突き立てた。すると、血濡れの太刀の刃に吸い込まれるように辺りの血液が消え、元々の緑が顔を出す。
それは血濡れの太刀の基本的な吸血能力だ。
辺りを彩る鮮血を全て血濡れの太刀に呑ませると悠子は、それを引き抜き、そのまま鞘に収める。
最後に残ったのは、無惨に殺された大勢の部下の亡骸だけだった。
「ふう……、あなた達、今まで本当にご苦労様」
悠子は部下の骸を一点に集め、それを纏める。
「それじゃあ、さようなら」
そして、その手にある発火石を集めた亡骸の元に放り投げ、それが骸の山に触れた瞬間、激しく炎上した。
魔力を込めた分だけ高い熱量を触れた物に伝える発火石だ。悠子ほどの強い力を持った者が使えば、恐らく伝わる熱量は計り知れないだろう。骸の山が飴細工みたいに溶けるように消えていく。
これほどの熱量で、骸の山を灰燼に変えていってるが、何故か周りの木々には何の影響も与えず、辺りの気温すら変わらない。
燃やすのは暗殺部隊の亡骸だけだ。
すると、火葬を眺める悠子の元に声が降る。
「わあ! 悠ちゃん、焚き火してるの?」
それは、彼女の唯一無二の友達。エルの声だった。
悠子は振り向いた。その視線の先には、エルの姿があった。
「エル……、これは焚き火ではないわ。部下の火葬よ」




