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ーー悠子は血濡れの刀を、鞘に収める。
「ふぅ」
一息つき、振り返る。
悠子の後ろ。そこにはまるで道のように悪魔の骸が転がり、黒い血に染まっていた。
ようやく全てが終わった。
そう思考に僅かな隙が生じたその時だった。
悠子の感知の力が働いた。
「なっ!?」
悠子は思わず驚嘆する。
「そんな……!」
ある一帯で、大人数の生気が次々に消えて行く。
生気。即ち生命そのものの活動だ。
悠子の感知は、人の生命を正確に捉えることができる。
それが次々に消えているということは、指し示す事柄は一つだけだろう。
つまり、その大人数の者達は、今この瞬間にも命を失っていってるということだ。
しかし、それだけならば、悠子は特に何も思わない。
人は皆、いずれ死ぬものだからだ。
だが、今回は違う。
悠子はその集団に覚えがあった。
「……、全滅」
それは悠子直轄の暗殺部隊。
実力者のみで構成され、派剣協会の中でも最強の部隊だと言われている。
そんな暗殺部隊が、瞬く間に全滅した。
当然、彼らを皆殺しにした者も、悠子の感知の網には引っかかっていた。
「……ありえない」
悠子がここまで深く驚いてるのは、別に暗殺部隊を全滅させられたからというだけではない。
それがーーたった一人の手によって行われたというところにある。
(一体誰が…)
悠子は地を蹴り、跳び上がる。
部下が皆殺しにされた。その事は、悠子の胸中に微かな不快感を灯らせた。
(いや、誰でもいいわね)
悠子は奥歯を噛み締め、鞘を強く握り、その瞳に殺意を滾らせた。
「ーー誰でもいいけど、私の部下を殺した報いは受けてもらうわ」
そして、次の瞬間、悠子の姿は刹那に彼方まで飛翔していた。




