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百合園の誓い  作者: 川島
第二章〜百合園の舞踏会 Ⅲ〜
56/96

16

 ーー悠子は血濡れの刀を、鞘に収める。


「ふぅ」


 一息つき、振り返る。

 悠子の後ろ。そこにはまるで道のように悪魔の骸が転がり、黒い血に染まっていた。


 ようやく全てが終わった。

 そう思考に僅かな隙が生じたその時だった。

 悠子の感知の力が働いた。


「なっ!?」


 悠子は思わず驚嘆する。


「そんな……!」


 ある一帯で、大人数の生気が次々に消えて行く。

 生気。即ち生命そのものの活動だ。

 悠子の感知は、人の生命を正確に捉えることができる。

 それが次々に消えているということは、指し示す事柄は一つだけだろう。

 つまり、その大人数の者達は、今この瞬間にも命を失っていってるということだ。

 しかし、それだけならば、悠子は特に何も思わない。

 人は皆、いずれ死ぬものだからだ。

 だが、今回は違う。

 悠子はその集団に覚えがあった。

 

「……、全滅」


 それは悠子直轄の暗殺部隊。

 実力者のみで構成され、派剣協会の中でも最強の部隊だと言われている。

 そんな暗殺部隊が、瞬く間に全滅した。

 当然、彼らを皆殺しにした者も、悠子の感知の網には引っかかっていた。


「……ありえない」


 悠子がここまで深く驚いてるのは、別に暗殺部隊を全滅させられたからというだけではない。

 それがーーたった一人の手によって行われたというところにある。


(一体誰が…)


 悠子は地を蹴り、跳び上がる。


 部下が皆殺しにされた。その事は、悠子の胸中に微かな不快感を灯らせた。


(いや、誰でもいいわね)


 悠子は奥歯を噛み締め、鞘を強く握り、その瞳に殺意を滾らせた。


「ーー誰でもいいけど、私の部下を殺した報いは受けてもらうわ」


 そして、次の瞬間、悠子の姿は刹那に彼方まで飛翔していた。




 


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