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それは本当に戦いだったのだろうか。答えは否だ。それは闘いと呼べるほどの光景ではない。一方的か蹂躙だ。
腕が千切れ、鮮血が宙を染める。辺りの木々を墓標に見立て、死という現象が溢れていた。
そして、それは美波によって齎された「死」だ。
数の利を得てるはずの暗殺部隊の方が一方的に、殺されていた。
彼らは今、何が起きてるのかも正確に認識することができない。
それもそのはず。たったひとりの女学生に、派剣協会でも上位の実力を備えた自分たちが、一方的に殺されている。
その事実に自尊心はズタボロになり、そこに正常な判断能力など芽生えるはずもないだろう。
中には戦意喪失してる者まで出てきていた。
「つまらないですねえ」
美波は剣を肩で背負い、呟いた。
S級剣士程の能力はないだろう。しかし、それでもA級程度の力はあるはずだ。
それでもこの有様だ。徒党を組んだとしても、少女ひとりに皆殺しにされる程度の力しか出せない。
美波は辺りに飛び散らかった骸の頭部を踏み付ける。
「これならやっぱり神代さんも大したことはないんでしょうね」
美波は歪に笑い、足下にある頭部を豆腐でも潰すかのように踏み潰した。
そんな美波の言葉に答えるように、声が沸いた。
「ううん、それはないよ」
それは彼女の胸元から湧き上がった。
「なんだ、意識が返ってきたんですね」
美波は制服のボタンを上から三つほど外し、胸元を晒す。
「六条さん」
それに答えるように美波の胸元から荒縄がゆらりと伸び、蠢く。
「……うん、なんとかね」
その姿に暗殺部隊の生き残りの彼らは大きな隙を見た。
(今だ。今なら)
彼らは息を呑む。戦意喪失した者を奮い立たせる手段は今はない。だからまだ戦う気力を残した者だけで、美波の隙をつく必要がある。失敗すればもう次はない。待ってるのは死だけだろう。
どの道ここで仕掛けなくとも待ってるのは死だけだ。ごくりと喉を鳴らし、彼らは意を決する。
(殺せる)
そして、彼らは地を思い切り蹴り、一斉に美波に出来た一瞬の隙を付くために襲い掛かる。
が、しかし、彼らの殺意の一撃が彼女の元まで届く事はなかった。
何故なら彼らは美波に攻撃を仕掛けたその瞬間、死んでいたからだ。
「……あ」
どさっと絶命した暗殺部隊の者達は、地に落ちる。
結局、それは隙などではなかったのだろう。最初から勝ち目などはなかった。彼女は、恐らく単純な身体能力だけならば彼らが敬愛する神代悠子すらも凌ぐほどのものだったからだ。
(申し訳ありません、悠子様ーー)
そして、そのまま彼らの命は尽きたのだった。




