13
地獄のような苦痛の連鎖に、アルは倒れた。
「ぁ、が」
エルの魔法を得たところで、力の差がひっくり返るはずがないだろう。
元々そんなに浅い力量の差ではなかった。
そもそもエルの魔法は理論上無限の魔力を扱えるようになるというだけで、根本的な能力を上げるための魔法ではない。
能力の差。いや、素質の差だ。
この世を創った彼女でも、エルには遠く及ばない。
(流石に強い)
朦朧とする意識の中、アルは思う。
(私の全盛期すら凌駕するほどの力。これが私の末裔)
ゴホッと咳き込むように血を吐き、アルは為す術もなく、地に伏せる。
全盛期。それはこの世の創世記のことだ。
今のアルは全盛期の力をほとんど失っている。抜け殻のようなものだ。
かつて、彼女もエル同様に最強無敗の魔法使いと称えられていた。
しかし、その頃の彼女でも今のエルには遠く及ばないだろう。
(ふふふ)
アルは全身を血に濡らしながら内心で笑う。
勿論、鞭で打たれ続けたから笑ってるわけではない。
アルが心の中に歓喜を持った理由はひとつ。
この状況。
この絶体絶命の最悪な状況。
ここまでが全てアルの『計画通り』だったからである。
エルはアルの目的が、エルの魔法を得ることだと勘違いしてるが、それは違う。
アルの目的はその先にある。
(ここまで誤差なく計画が進むなんて)
悠子とカナデの闘い。カナデの死。ミツキの精神支配。エルの魔法の取得。エルの強化。そして、自身の死。
これらは全てアルの計画の中に含まれていた。
(面白いーー)
その感情が口元にも表れた瞬間、アルの肉体は押し潰され、血を撒き散らし、その命は果てた。
エルの魔力はアルの肉体を貪り、さらにその密度を上げる。
「っ!?」
それは無意識のことだ。
エルの意に反して、魔力が勝手にアルを押し潰して喰らった。
「な、んで」
力を欲してるわけではない。むしろ、これ以上の力はいらなかった。それなのに、また力を得てしまった。
それはエルにとっては、最悪なことだ。
(悠ちゃん、どうしよう)
エルは自覚していた。
今のエルは全人類最強だろう。
それは悠子とて例外ではない。
恐らく悠子でも今のエルには勝てない。
いや、それどころか傷ひとつ付けることすら出来ないかもしれない。
それほどまでに力の差が開いた。
(私、また強く……なった)
それはエルにとっては絶望的なことだった。
あまりにも力が離れ過ぎて悠子と目線を共有できなくなれば、また一人ぼっちの世界に戻ってしまう。
エルには、それが何よりも耐えられないことだった。
「悠ちゃん……」




