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ーー剣技とは、『我思う故に我あり』を体現するかのような力である。
この世界の全てを虚像に見立て、自身が思うことで虚像を真実にする。
それは決して真実の変化ではない。
元々その虚像が真実のように『我』が思うことで自身の内ではそれが真実になる。
要するに思い込みの力だ。
その力を突き詰めた結界、一つの技能に昇華した。
それが剣技という力である。
そして、そんな剣技を極め、最強に至ったのが悠子だ。
神隠しの空間で人類全ての認識を手に入れ、彼女の認識の世界は個のものから世界そのものへと変わった。
つまりは彼女の我とは、世界そのものだ。
我思う故に世界あり。
これは剣技の掲げる理想そのものだ。
その理想に唯一、至ったのが悠子という少女だけだった。
まさに剣技という力の理想形。
故に剣技最強なのである。
悠子は黒い粒子に包まれ、起き上がる。
全身がに纏わり付く五本の荒縄が弾け飛び、辺りに散った。
カナデとミツキの二人はそのことに目を見開き、驚いていた。
封印が呆気なく破られた。
いや、それだけではない。
先程まではミツキの凶弾に満身創痍だった悠子のその身が、全快していた。
流血は止まり、撃たれた銃痕は塞がる。
「お、まえは一体」
思わず疑問を零すミツキに、悠子は答えない。
答えずに悠子は、血濡れの太刀を真横に薙ぐように一振り。
「っ!」
眼前の二人は、その一振りに攻撃の意図を感じ、咄嗟に構える。が、それは全く見当違いだった。
辺りに撒き散らされた悠子の血液が全て太刀の刀身に吸い込まれる。
それは一体なにしてるのか。
ミツキとカナデには理解できないことだ。
(どう、いうこと?)
悠子の元から弾かれた荒縄が、カナデの元に地を這うように戻っていく。
(私の封印が、なんで? どうして?)
カナデは目の前の状況が理解出来ずにいた。
それも当然だ。
悠子に施した封印は爵位を有する悪魔でも捕まれば意識を保つことができなくなるほど強い。
そんな封印魔法が呆気なく破られた。
そのことにカナデは理解が追い付かない。
封印の力を高める為、その荒縄に人を大量に与えたりもした。
それなのに……。
そんな彼女の内心を察したのか、悠子は口を開く。
「死に帰り」
「……は?」
「あなたの封印が解けた理由よ」
悠子は何の気なしに言う。
「何を、言って」
「次からは死体にも封印継続はしておくことね」
悠子は血濡れの太刀を構える。
「まあ、次というものがあれば」
悠子の姿が消えた。
「っ!」
見失った。
そう二人が自覚する時には既に悠子が、ミツキの眼前に立っていた。
「の」
ミツキは銃を悠子に向けようと手を上げる。が、その時には既に銃を持った腕が吹き飛ばされていた。
「っぐぁ!!!!」
最後の一本の腕が切り落とされ、ミツキは悲痛な叫び声を上げる。
「話」
悠子は苦痛に叫ぶミツキの顔を蹴り上げ、吹き飛ばし、意識を刈り取った。
「だけど」
そして、悠子はミツキの腕を切り落とした際に浴びた返り血を纏いながら振り返り、カナデの方を見て、
「ね」
笑う。




