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少女は見たこともないような形状のものを取り出し、悠子に向ける。
「!」
光沢のある黒い鉄の塊。
少女の握る部分から先が直角に曲がり、その先端には穴が開いていた。
厳つい外見ではあるものの、その中身は空洞になっていた。
(なにそれーー)
何かの魔道具なのだろうか。
その黒い筒のような物体が何なのか。
悠子には分からなかった。
正体不明。
その用途も分からない。
この世界全ての情報が乱れる神隠しの空間の中にも、その情報だけはなかった。
この世のものではないのだろう。
少女は親指を動かし、その突起を下に引く。
そして、人差し指をその部分に掛けた。
ーー何か来る。
そう思った悠子は、咄嗟に鞘から剣を引き抜いていた。
剣の刃は鮮血に塗れていた。
(迎え撃つーー!)
そして、屋上に轟音が響き渡り、その黒い筒から鉛の塊が射出された。
それは大気を巻き込み、空を穿ち、悠子の元に至る。
まさに一瞬の出来事だった。
その鉛の塊の着弾速度だけなら悠子の剣の一振りにも及ぶかもしれない。
(疾いわねーー! )
一閃。刃は血を引き、鉛の弾丸を切り裂いた。
「でも、この程度なら警戒するに値しない」
鮮血が舞う。
それは悠子のものでもなく、少女のものでもない。
悠子の手にある剣のものだった。
「それが『血濡れの太刀』……ーー」
「へえ、よく知ってるわね」
悠子は剣を振るい、刃の血を払う。
「それもあなたの組織の情報なのかしら?」
少女は口を閉ざし、人差し指に力を込める。
パァンパァンパァンーー!
三回の破裂音が轟いた。
「無駄よ」
しかし、その三発全てが悠子の血濡れの太刀に弾かれた。
(っ……、やっぱり『魔改造』してない拳銃ではこのひとには効かないみたい)
さらに二発。
少女は撃った。
だけど、やはり切り落とされた。
「どうしたの? もうおしまい?」
悠子は聖女のように微笑む。そして、
「事情が変わったわ。 あなたのことは逃がすわけにはいかなくなった」
そう言った。




