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飛び出した美波と、入れ替わるように悠久と剣神は、そこに至る。
この店に来るまでの間、さらに露店で食べ物を買ったのか。
二人の腕の中にはパックに入ったたこ焼きや焼きそばが、聳えていた。
そんな二人の来店を確かめると、悠子は彼らの元まで歩く。
「お義父様と巫女様。私は、この店には来るなと言ったはずだけど?」
「ふん、確かに来るなと言われたが、俺は行かないとは言ってねえよ」
悠子は父の前で立ち止まり、言い返す。
「いいえ、言ったわ」
「俺が言ってねえつってんだから言ってねえんだよ」
「お義父さま、相変わらずの鳥頭みたいね」
悠子は腕を組み、義父を睨む。
「ふん、そういうお前は、随分とらしくない格好をしてるんだな。それは趣味か?」
と、今一番触れられたくないことを悠久は容赦なく話題に持ち上げた。
「ぐっ…」
メイド姿に突っこまれた悠子は、思わず言葉に詰まる。
「別に好んでこんな姿でいるわけないでしょう」
「ははっ、隠さなくてもいいんだぜ?」
と否定する悠子の言葉を笑い飛ばす悠久。
そんな二人のやり取りを傍らにいた老人口調の彼女が止める。
「親子喧嘩は後にせい。早う席まで案内してくれんかのう」
ぴくぴくと今にも崩れそうな食べ物の塔を腕に抱いた彼女は、懇願するように言う。
「このままじゃ、これを落としてしまいそうじゃ」




