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文化祭を楽しむ二人は、休憩の為にそこを目指す。
剣技科の校舎。その二階の一番奥の教室で、開かれた喫茶店。
そこは立地の悪さに関わらず、長蛇の列が出来ていた。
店内の席は全て埋まり、ウェイターも慌ただしく動き回る。
注文を受けるとすぐに店内の彼女たちはオーダーを階下の家庭科室に回し、料理やドリンクを作らせて、教室まで運ばせる。
出来たての料理や淹れたての紅茶が味わえるということで、来客からは高い評価を得ていた。
しかし、それだけで行列が出来るほどの人気にはならない。
出来立ての料理が食べたいのならば、外の屋台を巡ればいいだけだ。
淹れたての飲み物も、外の屋台に売っているだろう。
つまりそれらの要素はこの喫茶店の人気を高める為の評判のようなもので、行列の根本は別の所にあった。
「いらっしゃいませ~」
フリルのカチューシャにエプロンドレスのーー要はメイド姿の女の子が客を出迎えてくれる。
それがこの喫茶店の行列の秘密だった。
だけど、それだけでは男客ばかりになるはずなのに、その行列の中には女性客の姿もあった。
いや、むしろ女性客の方が多いくらいだ。
その理由として、挙げられるものは恐らくそれだろう。
「いらっしゃいませ」
愛想なく客を迎え入れるだけの言葉を淡々と発するメイド姿の少女。
それは神代悠子だった。
悠子は剣技科の女生徒からは絶大な人気を誇る。
その一挙一動全てが女生徒の目を釘付けにする。
男性よりも女性からの人気が高い。
そこに目を付けた美波は、裏方希望の悠子をホールに出す為に文化祭の準備の時から水面下に動いていた。
悠子の作業を手伝ったり、舞踏会の相手を一緒に探したり、色々と悠子に貸しを作ってきた。
その結果が、メイド姿の悠子だった。
悠子は、美波の唐突なお願いを拒むことができなかった。
悠子自身も、美波に借りがあることを自覚していたからである。
(何故私が…、もう二度と美波さんには頼み事をしないわ)
悠子は強ばった表情で、お客さんを席まで案内し、そのまま注文を聞き入れる。
悠子は美波の思惑にまんまとハマったことも理解していた。
それを理解した上で、メイド服に裾を通した。
借りを作りっぱなしということにも気分が悪かったからだ。
「ほーらー、神代さん、笑って笑って」
注文を受けて戻った悠子に、煽るような美波の声が飛ぶ。
「美波さん、それなら笑える1発ギャグでもおねがいするわ」
そんな美波に対して、悠子は無茶ぶりをする。
そして、悠子の無茶ぶりに困ったように美波は表情を変え、「あ、そ、それじゃあ私は家庭科室にオーダーを届けてくる」と教室を飛び出した。




