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百合園の誓い  作者: 川島
第二章ー百合園の舞踏会Ⅱー
30/96

3

 剣魔学校は、行き交う人々で賑わっていた。

 開かれた巨大な校門の元に受付があり、そこに招待状を呈示することで、そのお祭りに参加することが許される。

 招待状は、この学校の教職員、もしくは生徒に十枚渡される。

 そして、その十枚の招待状の用途は、基本的には自由。

 家族に渡すも良し、友達に渡すも良し、恋人に渡すも良し。

 ただし、それを売買することは、禁止されていた。

 当然だ。学校関係者以外の見知らぬ他人を、学内に招き入れることは、異端たるこの学校にとっては相当な危険を孕む。

 だから、招待状は誰に渡しても構わないが、家族以外の者に渡す場合は、それを事前に学校側に報告しなくてはならないのである。

 だけど、その手続きそのものは手軽な為、多くの生徒は、他校の友達もこの文化祭に招いている。

 そして、彼らも招かれた内の一人だった。


 ボサボサの髪に大剣を背負った大男と、老若男女を体現してるかのような少女。

 神代悠久と剣神は、肩を並べて、歩く。


「ほぉ、ガキの作ったものにしては案外うめえな、これ」


 山盛りの焼きそばを豪快に頬張り、悠久は言う。

 それに対して、


「ふん、朝っぱらからそんな重いもの、よく食えるのう」


 と、傍らにいる剣神の巫女は、その厳かな口調には似合わないような可愛らしい外見で、りんご飴をペロペロ舐めていた。


「お、あっちには唐揚げがあるぜ! ちょっと買ってくる」


 と、子どものように出店巡りを楽しむ悠久を見て、彼女は呆れたように溜息をつく。


(儂らがここに来た理由。彼は分かっておるのかのう)


 と、りんご飴を舐める彼女は思う。

 しかし、悠久の行為を批判的に思う彼女もまた、この文化祭をとても楽しんでいることが、その格好から伺える。

 手首には綿菓子の袋が下がり、りんご飴を持った方とは逆の手にはチョコバナナを持ち、その頭部には狐のお面が帽子のように乗っかっていた。

 その外見からは、彼女の威厳が全く感じられない。


「ほい、唐揚げ買ってきたぞ」


 戻ってきた悠久の手には、紙パックに入った山盛りの唐揚げが二つある。

 

「ほい、これ嬢ちゃんのな」

 

 悠久は剣神に、買ってきた唐揚げを押し付ける。


「いや、だから儂は朝から重いものは」


「おいおい、遠慮すんなよ。俺の奢りだぜ」


「そうじゃなくて」


「おっ、これもうめえ!」


 相変わらず話が通じない悠久に、彼女は仕方なく唐揚げを受け取った。

 既に他の食べ物で両手は塞がっていた為、落とさないようにと細心の注意を払い、歩く。


「なあ、悠久よ。少し休憩していかぬか?」


 休憩の為か、この文化祭の至るところに設置されているベンチに視線を向け、彼女は言う。

 疲れてる為、というよりはその手にあるものを早く処理したかった。


「それもそうだな! それじゃ、どっかで休むか」


 唐揚げを頬張り、悠久はパンフレットをペラペラとめくり、そこを示す。


「こことかどうだ?」


 そのページのその喫茶店の部分は、不自然に二重丸で囲われていた。

 その場所は、彼女もよく知っていた。

 

「お主…来るなと言われてなかったかのう?」


 剣神は、ジト目で悠久を見る。

 しかし、彼はそれを笑い飛ばす。


「ははっ、何言ってんだ。来るなと言われたら行くに決まってんだろ」


 紙パックの中の唐揚げを、まるで飲み物のように口いっぱいに流し込み、咀嚼する。

 そして、中身が無くなった紙パックを丸めて、後ろに放り投げる。

 投げ捨てられたそれは綺麗な円を描き、そのままゴミ箱の中に落下した。


(相変わらず天邪鬼な奴じゃのう)


 と、彼女は思う。





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