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翌日。
その日は雲ひとつない快晴で、絶好の文化祭日和だった。
温かい風に包まれながらも、悠子は通学路を行く。
周りには大勢の生徒たちが、和気藹々と談笑に花を咲かせていた。
(それにしても随分と色めき立ってるわね)
悠子は思う。
そんなに文化祭を楽しみにしてたのだろうか。
いつもの登校の風景が、この日ばかりは一段と盛り上がっていた。
「神代さん」
悠子の背後から声が掛かる。
それは悠子のクラスメイト。
美波の声だ。
「おはよう」
美波は悠子の隣まで足早に来る。
「今日は喫茶店、頑張ろうね」
にこりと満面の笑顔で美波は言う。
それは普段の彼女を知ってる者ならば誰もが思うだろう。
「美波さん、今度は何を企んでるのかしら」
笑う美波を横目に、悠子は言う。
それは当然の反応だ。
普段の邪気の塊のような態度の美波が、今は邪気の無い笑顔を見せている。
彼女がこういう風に笑うときは、いつも何かを企んでるときだ。
「べっつにー」
と美波は答えた。
言葉とは裏腹に、頬は緩んでいる。
何かロクでもないようなことを企んでいるような顔だ。
しかも、美波がそういう含み顔をする時、それは必ず悠子を困らせようとする時だけだ。
悠子は呆れた様に溜息を吐く。
いつものことと言えば、いつものことなのだが、こんな日くらいは普通に楽しめばいいのに、と悠子は思う。
「程々にね、美波さん」
「もう、しつこいなあ。だから何も企んではないって」
と、強く否定はするものの、その口元には笑みが浮かんでいた。
悠子はもう一度、深い溜息をついた。
(相変わらず嘘が下手ね)




