1
その日の夜。
ある宿場の一室に、カナデはいた。
彼女は風呂上がりなのか、
ごしごしと濡れた髪を拭きながらも、
一糸纏わぬ姿で、ぺたぺたと部屋の中を歩く。
彼女は基本的に、一人の時は、服を着ない。
別に裸でいることが好きというわけではないし、誰かに見られることで興奮を覚えるような特殊性癖があるわけでもない。
単純に、「それ」を体内に収めることが窮屈で、面倒だから裸でいるだけだ。
彼女は「それ」を広げ、辺りに漂わせていた。
うねうねと蛇のように蠢き、それはカナデの背から全方位に向かって幾つも伸びている。
それはまるで神樹に巻き付く荒縄を連想するかのような太縄だった。
カナデは背に縄を、翼のように生やしていた。
いや、正確には直に生えてるわけではない。
背骨の辺りが水面のように揺らぎ、そこから無数の縄が飛び出し、周りに漂っている。
彼女はそれを体内に閉じ込めておくのが、とても窮屈に思っていた。
だから1人の時は、それを開放する為に、全裸でいることが多いのである。
「はぁ…」
髪を拭いた後、彼女はソファーに身を沈めた。
胸と股間を隠すように、背中の荒縄がカナデの体に巻きつく。
「疲れたぁ」
縄が伸び、脱ぎ散らかした制服を畳んでいる。
それはまるで幾つもの手のように動かされていた。
ごろんとカナデはソファーに寝転がる。
(明日、か。ふふ)
カナデは思い、目を閉じる。
(お父さん、見ててくれるかな)
そして、そのまま眠りについた。
彼女が寝た後も、無数の太縄は、ずっと室内を動き回っていた。
まるで一つ一つが意思を持ってるかのように。




