3
二人は剣士派遣協会総本山の街の中でも最も高い建物『派遣協会依頼受託施本部』の三階にある食堂で食事をしていた。
老人のような貫禄に少年のような外見を併せ持った少女は、書類を片手に珈琲を啜り、笑う。
「なるほどのう、中々おもしろい」
そして、それに同意するように向かいの席に座った男が身を乗り出した。
「だよな! 魔法使いなんぞより余程興味深い連中だ」
少女はテーブルにカップを置き、それに対して同意を示す。
「魔法使いは滅ぼすべき異端のもので、興を引くべきものではないからのう。比べるまでもない」
何でもないように言い、さらに言葉を続ける。
「それにしても、カガクをうたうとは、いかれた組織だの」
少女は手元の書類を放り投げるように机に置いた。
「まあな、ただ、テメエもこいつらには気を付けろよ」
心配するような男のその言葉に、ふんと少女は鼻で笑う。
「誰に向かって言っている、儂は剣神であるぞ」
老人のように厳かで少年のように愛らしい外見と背丈に合わない大きなスーツを着ているその少女は、剣神の一族の現剣神。つまり魔法使いのクレシア家とは対極にある、剣技側の創造主の末裔である。
剣神の少女は、カップを手に取り、その中身を一気に飲み干した。
「儂の心配よりも己の身を案じたほうがいいぞ、悠久よ」
彼女は眼前の男、神代悠久に忠告する。
「この件、お主が担っているのであろう」
対して、今度は彼がその心配を笑い飛ばす。
「お前こそ誰に言ってるんだ、嬢ちゃんよ」
悠久は豪快に笑いながら己の胸に親指を突き立てる。
「俺は神代悠久だぜ、俺を殺せるのなんぞ悠子くらいのもんだ」
まるで娘を誇るような自慢気な言い方に、少女は心の底から思う。
(この親バカめ)
と。
そこで彼女はあることを思い出す。
「そういえば、あの娘の学校そろそろ件の舞踏会の時期であろう。 それはどう乗り切るつもりじゃ」
剣神の巫女は飲み干したカップを机に起き、おかわりを注ぐ。
「まさかとは思うが、公的な場で汚らわしい魔法使いなんぞと踊らせるわけでもあるまいな」
それに悠久は答える。
「さあな、あいつの学校生活にまでいちいち関与しねえよ」
悠久は手元の肉を貪り、言葉を続ける。
「それにな、最近では手紙も返ってこないしな」
と、豪快に笑いながら言う悠久に、「当然だ」と少女は突っ込みを入れる。
「お主、またこの間、あの娘に殺し屋を飛ばしたのだろう」
少女は少し責め立てるように言う。
「怒っておったぞ。せめて学校くらいは普通に行かせてくれと」
口いっぱいに肉を貪り、それを飲み込んだ後、悠久は言う。
「一応、俺はあいつの師匠だぜ? あいつに困難を届けるのも俺の愛情だ」
と開き直る彼に、少女は思う。
(もはやそれはあの娘にとっては困難ではなく、ただの嫌がらせだというのに……)
そして、少女はカップの中のものを飲み干したーー。




