第1話
ドッキリじゃなかった。
おれは気づけば、川のほとりに立っていた。
さらさらと流れる川は美しく、触れると確かな冷たさがある。向こうに広がる草原はどこまでも続いていて……
「っと、描写してる場合じゃない」
文字数は限られてる。それまでにこの状況をなんとかしなければ。
ドッキリじゃないなら薬かガチかだ。どちらにせよ行動しないといけない。
神様が言うには、ただ新品の服に付いてるタグのプラスチックの輪っかになるだけじゃなく何らかの何かをアレするらしいが、それはそれ。何も考えてない可能性だってある。
執筆者とやらを信用していないので、こちらから何らかの生き残る方法を模索しなければならない。
残り約2700字の中で!
「くそっ……モノローグだけで命が削られていく……」
おれは何も考えないようにしながら、遠くに見える町に向かって走った。
◇
RPGにありそうな綺麗な町に着くとおれは早速、町民の男に話しかけた。
「あの、すみません」
「ようこそ。ここは始まりの町。素敵なところですよ。ゆっくりしていってください」
「え? いやあのそうでなく」
「ようこそ。ここは始まりの町。素敵なところですよ。ゆっくりしていってください」
おれは黙った。
しまった……まんま古き良きRPGだ……
そして字数稼がれた……
さりげなく立ち去ろうとする、
が、
その男に呼び止められた。
「おっと、この作品の説明聞かないでいいのかい」
「普通に喋れんのかよっ!!」
「ああ………………………………喋れるぜ……………………………………」
「もう喋るな!!」
「あっ!」
「え?」
「ぽよえ~ん」
「は?」
「いや、なんでもない」
「やめろっつってんだろ!!」
ご
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| ● ●
| ○
\______/
め
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| ● ●
| Д
\______/
ん
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| ★ ★
| V
\______/
「ばっ……」
おれは言い掛けてやめた。いちいちつっこむからつけ上がるのだ。字数を消費しないためにも、おれは黙ることにした。そう、それは明鏡止水の如き沈黙。真一文字に引き結ばれ、決して動くことのないその唇は、まるで城塞の堅固な門のようである。口は災いの門というが――――
「地の文ーッッ!!」
「さて、第一印象アップ作戦はこれくらいにして」
「奈落の底だよ」
「オレの名はジョン。この作品のナビゲーターを務める者だぜ。よろしくな」
「寿矢」
「トシヤ? いい名前だな! きっと親御さんの思いが込められてる。最近肩凝っててさあ。素晴らしい名前だから、大切にするんだぞ」
「何の脈絡もなく挟まれる瞬間的カミングアウト」
「さて、プロローグで字数の関係上語れなかった設定についてオレから説明を……、ん? なんてこった! もう第1話はあと500字しかない! シット! まあいい、説明を聞いてくれシットヤ」
つっこまない。
「この〈物語世界〉は“執筆者”により作られた世界だとは聞いたろう? そして執筆者は世界のあるがまま、キャラの動くがままを小説化していることも。とはいえ、情報の取捨選択はしているんだぜ。どうでもいいことまで文章化していたらキリがないからねえ山本権三郎くん」
「……ッッ! ……ッ……!! ッ……!!」
つっこむのは我慢したがあまり意味がなかった。
「情報の取捨も、小説を面白くするためだ。そして面白くするのは読者のためであり、何より作者のためでもある。作者も予想できない物語を楽しみたいんだぜ。だから自律して動くキャラたちの思考も全て読まれることはない。さて、ここからが重要なんだが――」
重要と聞いて、姿勢を正す。
こいつからはできる限りの情報を引き出さねばならない。
おれの人生をギャグで終わらせてたまるか。
ジョンは厳かに口を開き、言った。
「お