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プロローグ

 テスト前には部屋の掃除に限る。埃に悩まされつつ、おれはある本を見つけた。

「あれ、こんな本あったっけ」

 開いた。

 光がカッと輝いた。

 本の中に吸い込まれ、意識が途切れる。




 ◇




「ちーっす、篠宮寿矢くんだっけ? 神様でーす」


 目を開けた瞬間そんな声が聞こえてきた。状況把握を行いたいところだが……なんだこれ。

 おれがいるのは真っ白の何もない空間。そして目の前に、神様が着てそうな灰色のローブに包まれた少年が浮かんでいた。


 口をぽかんと開けていると、その少年が「突然のことで驚くのは無理ないけど」と切り出した。


「キミには諸事情あって、異世界に行ってもらうことになるから」

「……はあ」


「最近よくあるでしょ? 異世界ものの小説。あれをね、ボクのご主人様が書きたいって言うからさ。その主人公にキミを起用したんだ。おめでと」


「ちょ、ちょっと待って」

「うん?」

「たくさん質問があります」

「どーぞ」


「ここはどこ?」

「ボクが作り出した謎の空間っていう認識でいいよ、重要じゃないし」


「へえ。で、あなたは誰?」

「さっき言ったじゃん、神様だよ。とはいえご主人には世界と世界を渡す役割しか持たされてないけどね」


「なるほど。そのご主人って何者?」

「〈物語世界〉……自分で異世界をクリエイトできる人だよ。その異世界で起こる出来事をある程度観測して、それを文字に起こして売ってる小説家なんだ」

「なるほどなるほど」


 おれは自分に言い聞かせるような相槌を打ち、腕を組んで頷いた。

 認めよう。

 これがガチな異世界転移であるにせよ、薬の幻覚にせよ、巧妙なドッキリにせよ……ただならぬ状況なのだから、これからいくらでもただならぬことが起きる。ならばあるがままを受け入れようじゃないか。


「でもキミの話、今作の第2話で新品の服に付いてるタグのプラスチックの輪っかになってオチるけどね」

「受け入れ難ぇよ!!」

「……」

「え!? 何で急に黙るの」

「いや、2話で話を終わらせるのも無茶だなと改めて思って……」

「あらすじ書いてる途中で面倒になったんじゃないですか……っていうか新品の服にあるプラスチックの輪っかって生きてるといえるんですか」

「哲学だね」

「いえねえよ」

「キミの輪っか化後、キミが物としてまた活躍するとか、物なりに服屋を見守るとかそういう展開でもないみたい。だって物に意識はないしね。詳しくは知らないけど」

「無責任すぎるんじゃ……」


 神様を名乗る少年は「そんなことないよ~」と言いながらローブを脱ぎ捨てる。下のシャツには筆文字で“無責任”と書かれていた。


「無責任の自覚あるじゃねえか!!」


 神様が更に脱ぐ。白いシャツに“ツッコミありがとう”の文字。おれは無視をした。


「……で、いつおれは転移するんですか?」


 神様がまた脱いだ。特に何も書かれていなかった。寒そうに震えてから服を着直した。おれは無視をした。


「まあ焦らずに。すぐ転移するから。なにしろ今作には、緊迫感を持たせるために、空白と改行を除いて“1話1500字以内”という制約があるからね」

「今何文字ですか」

「1240字くらい」

「あとほぼ3000字でおれの人生終わり!!」

「じゃ巻きでいくよ。なぜ輪っかになるかというと、ご主人によれば『面白そうだから』らしい。あとキミにはなんかよくある“チート能力”を授けとくね」

「お……おおう……」

「あとは蛇足かな。ご主人――執筆者は基本的に、〈物語世界〉のありのままを小説化してるに過ぎない。手を加えすぎると、何より執筆者自身が物語を楽しめないからね。他にもいろいろあるけど、1話で明かすから。さてそろそろ字数が限界。よい旅を」


 視界が真っ白になる。ドッキリだろうが、一応付き合ってやるか。

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