48.滅却手段
「キルエナさん! 下がって!」
スカイがスタッフで地面を打つと、月を取り囲むように、魔法陣が一挙に展開された。魔法陣から鎖が飛び出、月の体を縛り上げる。
「セレネ!」
「うん!」
スカイの声で、セレネが地面に両手を着く。と同時に、巨大な青の魔法陣が、月の足元を中心として展開される。
「いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
轟音と共に、光の柱が月を覆った。
月の悲鳴があがる。
「やったか……?」
スカイは宙に浮き、月の上から様子をうかがう。
『生きてますよ』
その言葉通り月は生存していて、それは魔法陣を破り始めた。
鎖がいとも簡単に千切られていく。
「くそ……もっと強力な手段が要るな……」
戦い始めて3時間は経った。
キルエナ達が下で陽動を仕掛け気を引き、スカイとセレネが魔法を打ちこむ。
月が単純だったためこの方法一本で戦ってこられたが、やはり月は強く、どれだけの魔法をぶつけて
も、直ぐに回復してしまう。さっきのセレネの魔法は、破壊神の力と月の女神の力を合わせた物だった。
そこで、女神が言った。
『それなら、四方位の柱を利用しては?』
「……どういうことですか?」
『ダンデが使った東西南北四本の柱は、月をここに呼び出すために魔力を集中・倍増させる目的で導入さ
れています。今は機能していないようですが、もし上手く活性化させる事が出来れば――』
「魔法を効果的に浴びせられる……と」
『その通りです。上手くいく保証はありませんが、もし成功すれば確実に月を消せます』
スカイは月を再び鎖で縛ると、全員を集め、女神の提案を告げた。
「分かった。では、私達はどうすればいい?」
キルエナが尋ねる。
スカイはスタッフ4本を取りだした。
「この棒を、光の根元に突き立てて下さい。今スタッフと僕の魔力は呼応している状態なので、そうすれ
ば柱を利用できるようになります」
「……良く分からないが、やってみよう」
そう言うと、キルエナは2本のスタッフを取り、一本をネストに渡すと、二人は本部のあった方へと駆け戻っていった。
「あと二人……」
「私がやるヨ」
スカイは耳を疑った。
「ダンデさん?」
「償いをしたいんだ。……もし君に協力すれば、私は恐らく殺される。だが、君を見てて思ったんだ。――死を恐れてちゃいけないってね」
ダンデはスカイからスタッフを受け取ると、空高く飛び上がった。
「あと一人は……」
「じゃあ、私達が行くわ」
フゥだった。片手で、語尾を異様に伸ばす男の襟首を掴んでいる。……気絶しているようだ。
「私達も、償いがしたい。……“彼”に怯えてちゃ、何も始まらないしね」
二人は一緒にスタッフを受け取ると、男を掴んだまま飛び去った。
「あとは、時間を稼ぐのみ……だな」
「うん。がんばろ」
月が声を上げ、鎖を千切り、魔法陣を打ち消し始めた。
「行くぞ」
*
その頃白龍は、目の前に現れた人物に驚愕していた。
「お前は……!」
「やあやあ、久しぶりだね創造者さん。……お前、また老けたか?」
「何故ここが分かった?」
「何故? 俺が誰か分かっててさ、その質問、普通する?」
白龍は怒りを覚えているようで、その目は殺意を帯びている。
「月を召喚したのは、お前か」
「いーや、違う。そもそも、完璧な俺がわざわざするようなことじゃない」
「直接は手を下していない、ということか」
「そーゆーこと」
その人物は、楽しげにそう答えた。
「ここの人間はいつ滅ぶかなあ。あー、楽しみだ」
「……人間を殺させて、何が楽しい?」
「うーん。なんでだろ? この俺でも、その理由は分からないみたいだ」
「……ふざけよって」
「ふざけてなんかないって。失礼な奴だ」
白龍はその人物を睨みつける。
「私が思うに、お前の目的は達成されない。共感者が防ぐ」
「あっ、そうそう! その共感者だよ! 今日はそのことを聞きに来たんだ! あと……禁じられた力についても」
禁じられた力。
記憶の消去、時間の操作、不老不死の三つを合わせた総称である。
それを聞いた白龍に、一瞬焦りの色が見受けられた。
「それを聞いてどうする?」
「奪うよ。当然だろ? 俺は今でも十分強いが、最近、さらに強くなりたいと思うようになってね」
「……」
「で、どこに行けば手に入るんだい? やっぱ神界? こことは別の世界? それともこの世界?」
「……言わん」
「えー、ケチだなー。俺をもっと強くしようとか思わないわけ? 良いじゃんか、昔一緒に働いた仲だ
ろ?」
「黙れ。思い出したくも無い」
その人物は肩をすくめた。
「まあ良いや、自分で探すし。……んじゃ、今日は帰るよ」
「……殺さないのか」
「どうせお前もう死ぬんだろ? だったらその必要は無い」
その人物は、一つウインクをすると、森の闇へと消えて行った。
「……私が死ねば、“彼”を止める者はいなくなる」
白龍は、疲れ切った様子でため息を吐く。
「神が早く手を打ってくれれば良いが……」
赤い空に、轟音が響く。
轟くその音に、白龍は思いを馳せた。




