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44.月の真相

 先程まで地に伏していたはずのスカイは、いつの間にか未知の場所に立たされていた。


(見た所……海、だな)


 海は海でも、ここは一体どこの海なのだろうか。


 今立っている砂浜はまるで純白のカーペットの様で、寝転んでも特に問題なさそうな程、混じり気のない綺麗な色をしていた。心地よい音を立てる波、水平線に沈む美しい橙色の太陽。そこはまるで、神秘的なファンタジー世界である。


 こんな場所が実際に存在するのかと思う程、あまりにも美しい光景だった。


 スカイはまるで洗い流されたような気分で海に近付いて行き、そして波にそっと触れた。


 そこで、異変に気付く。


「…………あれ?」


 水が、冷たくない。


 今は冬だから、手を刺すくらいの冷たさが襲ってくるはず。

 では暖かいか、となると、それもそうではない。

 水の感覚はあるのに、温度を感じないのだ。


 スカイの頭に、一つの可能性が浮かんだ。


「もしかして……この世界には、温度の概念が無いのか?」


 そういえば、この夕日を浴びていても、温かさを全く感じない。

 砂に触ってみても、同じだった。


 スカイは、他の相違点を探した。


「そういえば、生き物がいない……。しかも、空には雲一つないし……ってあれ?」


 空を見る視界の端っこに、黒い物が映った。


「なんだ? 空に……何かあるのか?」


 スカイはそのまま視線をスライドさせていき……現実ではあり得ないような事に気付いた。


「空が……抜けてる!?」


 スカイは唖然とした。空の頂点は、まるで切り取られたみたいに、真黒な無の空間を剥き出しにしていたのだ。


「これは……人間業じゃない」


 スカイは感慨深げに呟いた。


 そう、こんな法則を一気に捻じ曲げるような真似、魔術師には不可能だ。……いや、正確に言えば出来

るのだが、過去の実例から言うと、それを実行しようとした瞬間、|決まって何かしらの邪魔が入る《・・・・・・・・・・・・・・》のだ。

 犯人の正体は、口に出さずとも分かる。だから、魔術師は法則に干渉したりしない。


(……だとすれば、やはり人間じゃない奴の仕業か)


 凛とした声が聞こえた。


「そうです、これは人間でないからこそ出来る業なのですよ」


 知らない声だった。今頭に、直接声が響いている。


「初めまして、スカイさん。今、そちらに行きますね」


 声はそう言う。


(……こっちに来る?)


 何が来るのかという不安の中、少し待つ。

 しばらくすると、目の前が神々しい光に包まれた。

 眩い光に、目を慌てて瞑る。


 ――光が収まり目を開けると、声の主が、海を背にして現れていた。


 出てきた女性は恥ずかしげに笑った。


「ちょっと派手な登場でしたかね……?」


 おどけた様子で、彼女はそう言う。目の前に現れた女性は大人の色っぽさを醸し出しており、尚且つ、とても綺麗で――あの人に、あり得ないほど良く似ていた。


 スカイは、彼女の容姿に目が釘付けになっていた。


 白い髪、緑眼、透き通った肌、そして、この顔。……間違いない。セレネだ。彼女は、セレネが成人した姿だ。 


 しかし、そうスカイが思ったのも束の間、彼女はあっけらかんとその考えを否定した。


「違いますよ。私はセレネじゃありません」


 スカイは顔をしかめた。


(……あ、そうですか。セレネじゃないですか。――って、今俺の考えを?)


 セレネ似の女性は、また微笑んだ。


「ようやく、お会いできましたね。やっと、真実をお教えすることが出来ます」


「――真実?」


「はい、真実です。スカイさん、私に聞きたい事がたくさんあるでしょう? どうぞ、この機会にゆっく

りと」


 スカイは悩んだ。


 聞きたい事? この人に聞きたい事なんてあっただろうか? ……いや、ないだろう。それに、今はゆっくりしている場合では無い。ここがどこかは知らないが、今は月から逃げなければ。


 セレネ似の女性はまた思考を読んだようで、優しく微笑んだ。


「大丈夫ですよ。ここは外とは切り離された世界ですから、外の時間は今止まった状態です」


 なるほど、と納得する。


 だからゆっくりと、と言ったのか。今、ここの世界だけが動いている状態だから。


 ――ん? そういえば何故その「止まった空間」に、この女の人は存在出来ているのだろう? 考えられる可能性の一つは、この人も誰かに召喚されたということ。もう一つは、彼女がこの空間を創ったということだ。……そういえば、自分の名を知っていたのも不自然である。


 じゃあ、この女の人は一体何者だ?


「そうです。そういう問いを私に投げかけてくれればいいのですよ」


 セレネ似の女性はまたまた微笑んだ。


「私は、セレネーです」


「……へ?」


「セレネー。月と魔力を司る女神です」


「……女神様?」


 スカイは、もう一度、その内容を心の中で確かめ、心の中で叫んだ。


(この人が……女神様ッ!?)


 スカイは、何かの間違いではないかと思った。しかし、セレネーは真剣に頷いた。


「はい。女神です」


 彼女はきっぱりと言った。


 ……確かに、嘘ではないかもしれない。風貌や、探知できない程の魔力量、そして纏っている只ならぬオーラ。言われてみれば、この方は、人間や悪魔や魔物といった邪悪なものじゃなく、神なのではないかと思えてきた。


 最終的に、スカイは「目の前にいる女性は神である」という結論を出した。


「…………うわ、すごい」


 魔法陣の外で神と会うのは初めてだったスカイは、酷く感動した。


「まさか、女神に会えるなんて……じゃ、じゃあ、俺の名前を知っていたのは何故なんです?」


「簡単なことです。私は、あなたが母親に宿った時からあなたのことを知っていました。あなたがスカイ

と名付けられたことも、あなたが苦難の道を歩んできたことも、全て知っています」


 有り難い、とスカイは思った。だが、さらに疑問は湧いてくる。


「なぜ僕のことを? ありふれた人間の内の一人を、わざわざ神様が観察していたんですか?」


「観察、というと語弊がありますが、それは置いておきましょう」


 女神は優しげな微笑を浮かべながら続ける。


「一個人のスカイさんを、私が見守って来た理由ですね? ……実は、こう言ったケースは極稀なので

す。私には、スカイさんを見護る義務がありました。スカイさんと私は、その存在を繋いだ関係――分かりやすく言えば二人三脚の状態――にあるのです。もちろん、今も」


 女神の念を押すような言葉に、スカイはただただ気圧された。


「な、なぜ僕と……女神様はその関係に?」


「それは、スカイさんが『月の共感者(エンパス)』だからです」


 初耳の言葉だった。


「え……んぱす?」


「はい、エンパスです。スカイさんは、他人と比べて魔力量が多いでしょう? それは、私の力が注がれ続けている証拠です」


「その……エンパス、っていうのは一体?」


「エンパス、というのは私達神と契約なしで力を使え、また如何なる状況でも神を呼びだしたり、対話をしたり出来る人間のことです。……スカイさんは、私限定のエンパスですね」


 スカイは納得したように頷いた。


 なるほど、自分が神と契約しやすかった理由はこれだったのか。エンパスとかいう能力は、交渉の際の資格証明書みたいに働いてくれていたのだろう。あと、契約なしに魔法は使えないとラーシャに言われていたから試さなかったが、もしかしたら女神が担当している魔法ならあの面倒な手続きなしに使えたのかもしれない。……まあ、失礼だけれど、月の女神なんて初めて聞いたから、試し用が無かったけれども。とはいえ、これで自分の魔力量が多かった理由もはっきりした。


 スカイはそう考えながら、さらに、もう一つの問いを投げかけてみる。


「ところで、何故女神様はセレネとそっくりなんですか?」


 女神はあっさりと答えた。


「私がセレネだからです」


「……え? さっき違うって言ってませんでしたか?」


「はい、違います。私はセレネではなく、セレネーです。ですが、私はセレネです。逆に言うと、セレネも私です」


 ――さっぱり分からない。


「…………すいません、分かりやすくお願いします」


「セレネは私、私はセレネ。要するに、セレネは私から生まれたということです」


「……どういうことです? セレネは女神様の娘だったんですか?」


「いえ、違います。ザレスとはあまり……ではなくて、えー、話せば長いのですが、まとめると、私がセ

レネを作ったのです」


「セレネは“月”から生まれたと聞いたのですが……?」


 “月”、というワードに反応してか、今空気が歪んだ気がした。


「その通りと言えばその通りなのですが……。実を言うと、その“月”は、私なんです」


「……??」


 頭に無数の疑問符が浮かんだ。


「どういうことですか? 女神様が月?」


「正しく言えば、月とは悪魔が私の力をコピーした姿なんです」


「月は悪魔なんですか……?」


「はい。あの悪魔は特殊で、他者の一番優れた能力をコピーすることが出来るのです。私は大昔の戦争であの悪魔の罠に嵌り、私の空間であるここ、“空”に監禁されました」


 ここは空だったのか。天上に、こんな世界があったなんて。


「悪魔は無限に生成される魔力を体内に溜め込み続け、体を巨大化させていき、ある日、第二世界に降り立ちました」


「第二世界?」


「スカイさんのお友達の、キルエナさんがいる世界のことです。我々神は、人間の世界に番号を割り振っています」


 女神は続ける。


「悪魔は、きっと何か別の企みがあったのでしょうが、悪魔の思考能力は肥大した魔力によって毒され、悪魔は思考を奪われ、本能のまま動くようになっていました。そのお陰で悪魔の企みは実行されなかったのですが、その代わりに悪魔は、人間を殺すことに執着し始めてしまったのです。悪魔はその野心を剥き出しにし、さらに別世界をも侵略しようと扉を開きましたが、結局、彼は白龍達の捨て身の魔法で封印されました。――しかし、悪魔は諦めませんでした」


 女神は、思考を失い無防備になった悪魔に近付き、それを二つに裂いた、と言った。


「そうすることで、月の力を分離しようと考えたのです。しかし、そのまま私の側に置いておくのも危険でしたし、そのまま地上に放つのもまた危険でした。そこで、私は切り離した月の体を変形させ人の形に変え、私の知能と魔力を与えました」


「――そこで誕生したのが、セレネなんですね?」


 女神は頷いた。


「私は直ぐに彼女を地上に放ったのですが――運悪く彼女は白龍達の近くに降りてしまい、たまたま通りかかったウォーダンによって、また封印されてしまいました。その場所が、また運の悪いことに、私が監禁され月が封印されていた“空”だったのです。月は本能のままに、セレネを吸収してしまいました。――その結果、月はその完全体に近い状態で、思考能力を再び取り戻してしまったのです。私は再び月を裂き、セレネを地上に放ったのですが……その代償として、私は暗く狭い空間に閉じ込められることになってしまいました」


 そのせいでスカイに助言が出来なかった、と女神は頭を下げた。


 スカイは慌てた。


「そんな、止めてください! 神様が人間に頭をさげるなんて!」


「……やはりスカイさんは、心のあるお方ですね」


 女神は体を起こす。


「でも神と人間に大差はないって……ご存知でしたか?」


 ぽかんとするスカイを余所に、女神は真剣な表情になった。


「スカイさん。言わなければならないことがあります」


「なんでしょうか」


「私は今、力を使って時間を止めているのですが……実のところ、私も完全には回復していない所があって、もう少しで時間が動きだしそうなのです」


「…………」


 ゆっくりと、とか言っていた気がしたが、気のせいだろうか。


「今、外の事態は深刻です。……お分かりですよね?」


「…………分かっています」


「月は魔法陣を橋にしてセレネの体に潜り込み、それから魔術師の魔力を借りて月の体を召喚し、完全な自己を取り戻しました。……私の力を手に入れ、さらに魔力を存分に溜めこんだ月がどれだけ恐ろしいか……本当に分かっていますか?」


「…………」


 スカイは、正直なところ、自信が無かった。実感も湧かなかった。



 あの怪物と、戦わないといけないのか?



「はい。今あの悪魔と戦えるのは、エンパスであるスカイさん、あなたただ一人だけです。代わりは一切居ません」


「め、女神様は……?」


「私では無理です。神には『実体を伴って世界に降り立つ際、力を使ってはいけない』という掟があります。力無しで戦っても負けは見えていますし、これを破る事は、私の立場上不可能です」


「…………」


「……怖いのですか?」


「…………はい」


 女神はにっこりと笑った。


「そう言うと思って、向こう側から(・・・・・・)呼んでおきました。あなたの恐怖感情を払拭できる、現在唯一の人物を」


 女神はゆっくりと、スカイの後ろを指さした。


「どうぞ、話して下さい。……ですが、手短にお願いしますね」


 振り返ったスカイは、目を見開いた。胸に暖かい物が広がるのを感じながら。


「スカイ……また会えて良かった」



 照れ臭そうに笑う彼女は、生前と全く変わらなかった。


 目頭が熱くなるのが分かった。


 まさか、また顔を見れるなんて。


 まさか、また話せるなんて。


 彼女は、腕を広げていた。


 もう我慢できなかった。



「師匠――――っ!!」



 スカイはもうがむしゃらに、突進する勢いでラーシャに抱きついた。

 まるで幼い子供のように抱きついてきた少年の体重に圧倒されながらも、ラーシャは涙を浮かべながら笑った。


「ちょっと、痛いって! スカイ、あんたももうそろそろ17でしょ? こんなこと……」


「止めません! 絶対に止めません! もう絶対に離しませんから!」


 ラーシャは駄々っ子のように抱きつくスカイの頭を、慣れぬ手つきで撫でた。


 それは、もはや親子のそれであった。


「……思えば、小さい頃は良く頭撫でてあげてたっけ……。スカイも、いつの間にか大きくなってたんだ」


「何……当たり前な事言ってるんですか」


 ぐすぐすと泣きながら言うスカイに、ラーシャは苦笑した。


「スカイ……本当に、また会えて良かった」


「……俺もです、師匠」


 二人は幸せそうな表情で、しばらくじっとしていた。


 それは、お互いが存在している事を、確かめあっているかのようだった。


 少し経って、スカイが口を開いた。


「……師匠」


「ん? 何?」


「…………本当に、すみませんでした」


「……すみませんでした? 何が?」


「何がって……俺が、師匠を死なせたこと」


 スカイが言い終わってから、数秒の空白。

 するとラーシャは堪え切れなくなったように吹き出し、笑いだした。


「スカイ、あんた、そんなことでくよくよしてたの!? 全く、なんて師匠思いの弟子なの!」


「わ、笑わないで下さいよ! 師匠だって、元気でねとかまた思わせぶりな言葉残しといて!」


「う…………と、とにかく! スカイ、あんたは私がいなくたってやってけるでしょ? そんなずっと泣いてたって、私はもうそっちには帰れないんだから。ほら、ちゃんと死を受け止めることだって、一つの修行じゃない?」


 死、という言葉に、スカイの目にまた涙があふれてくる。


「あーあー、ごめんって。お願いだから泣きやんでよ。そんな顔で、堂々と外歩けないでしょ?」


「…………歩けないです」


「でしょ? スカイは、これからやらないといけないことがあるはず」


「……はい」


「どんなこと?」


「…………セレネを助ける事」


「よろしい」


 ラーシャはスカイの頭に、手を軽く置いた。


「あなたは、私の弟子なんだもの。出来ない事なんて、何もない!」


 スカイは、ぎゅっとラーシャの体を抱きしめる。


「……でも、俺怖いんです。また、皆を殺しちゃうんじゃないかって。また、苦しい目に遭う人を見たく

ない……」


「だったら、尚更助けに行くべきじゃない! スカイが何もしなければ、皆は当然苦しむ事になる。でも、スカイが助けに行けば……? 全員は、無理かもしれない。でも、|助けられる人は助けられる《・・・・・・・・・・・・》)。……そうでしょ?」


「…………」


「スカイ、一つ聞いて良い?」


「……はい」 


 ラーシャは、スカイの肩を持ち体から離させ、目を合わせた。


「スカイ。……スカイは……自分の守りたい物って、言えるの?」


 スカイの心臓が跳ねた。


 ラーシャの目は、自分を試しているかのように、じっとこちらに向けられ続けている。


 スカイは、この質問に心当たりがあった。


 そう、あのとき。


『守りたい物はあるかい?』


 ツトムと初めて会った時、彼が尋ねてきた物だ。それと今回の質問は、全く同じ。


 何か、スカイは運命的な物を感じた。


 スカイは考えるときの仕草として、その目を閉じた。


 自分は…………あのとき、何も言えなかった。答えられなかった。全くピンと来てなかったし、自分は特に大切な物が無いんだと思っても、特になんとも思わなかった。自分はきっと、人間としての何かが欠けていたのだ。


 ――でも、今は違う。


 守りたい物。今自分は、それをはっきりと口に出来る。


(そうだ……。守りたい物、守るべき物。それを、俺は持っていたんだ)


 守りたい物が無いなんて、そんな空虚な生き方、自分はしたくない。


 少なくとも、スカイはそう思った。


「俺の守るべき物は……」


「物は?」


 スカイは嗚咽を飲み込み、涙を拭いて、答えた。


「セレネだ。俺は、セレネを守らないといけないんだ」


 ラーシャは、パァ、とまるで花が咲いたみたいに笑った。


「よく言った、我が弟子!」


 ラーシャが暖かく笑ってくれた。


「ありがとう、師匠。俺……やるよ。セレネを、絶対に助ける。月の好きには、絶対にさせない」


「出来る、絶対に出来る! スカイならやれると、信じてる! スカイは私の弟子で……私の可愛い息子だから!」


 ラーシャの潤んだ瞳は、オレンジの夕日を美しく反射していた。


 また、泣きそうになった。


 でも……でも、涙は絶対に見せない。


 スカイは、誓う。


「師匠……本当に、ありがとう」


「こちらこそ、今までありがとね。……さ、早く行って。女神様を待たせちゃ悪いでしょ。……スカイが、この世界を救うんだよ? ふふっ、『お母さん』は嬉しいなあ」


 スカイは照れた顔を見られぬよう、ラーシャに背を向けた。


 ……と、そこでスカイはあることを思い出した。


 前々から……といっても、セレネと付き合いだしてからだが、考えていたことだった。ちょっと気が早い気もしたが、これだけは、どうしてもラーシャの許可を取りたかった。


 スカイは慌てて振り返った。


「師匠! 俺、前から考えてた事があったんだ! 俺、師匠の名前を…………あれ?」


 ラーシャの姿は、もうそこには無かった。スカイの前には、ただ陸地が広がっているのみであった。


「…………お別れは、済みましたか?」


 女神は今にも沈みそうな夕陽と暗い海を背にして、スカイに問いかけた。


「はい。……決心は付きました」


 女神はほっと肩を撫でおろす。


「そうですか……良かったです。これは、私達神にとっても大問題ですから。何せ、人間がいなくなると言う事は、神も居なくなると言う事ですからね」


「そう……なんですか?」


「はい。だから、スカイさんには頑張っていただかないと。これは、人間の未来と、神の未来を賭けた戦いです。全力で、望んでください」


 スカイは頷いた。


「力の面は、私が全力でサポートします。ここを出れば、力の使い方は全て頭に入っているので安心してください」


「ありがとうございます、女神様」


 女神は、嬉しげに微笑んだ。


「いいえ、お礼なんて要りませんよ」


 女神は、その手を伸ばしてきた。


 迷わず、手を握る。


 それを見て、女神は静かに目を閉じた。



「敵は強大ですが……あなたならやり遂げられるでしょう」




 心に、女神の声が響いた。




 ――澄み渡る空に、月が浮かぶ事を願います。





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