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25.眼鏡と脳筋

 上級魔術師は中級魔術師、下級魔術師と合流し、北の町でイブリースと死闘を繰り広げていた。

「二時の方向から攻撃来ます!」

「B班は結界維持に専念! C班は負傷者の回復にあたれ!」

 矢継ぎ早に飛ぶ命令を、各々が着実にこなしていく。


 戦場の緊張感が高まっていく一方、ハルはスカイを探しはじめていた。

 しかし、感知魔法に反応する魔力が多すぎて全く見当がつかない。というわけで、現在手探りの探索になってしまっている。


「せんぱ~い! どこにいるんですかぁ~」


 同行しているイルキがため息をつき、黒縁の眼鏡を押し上げた。


「ハル、呼べば敵に感づかれるだけです。そういうことはしない方が得策かと」


 それに、はぁ? と声を上げたのは、同じくハルに同行するアイドだ。


「おい、クソメガネ! ハルちゃんはスカイの野郎のことを心配して言ってんだぞ!? ちょっとは考えろ!」


 イルキは無表情のまま、アイドの青い瞳を蔑むように見据える。


「馬鹿な脳筋が戯言を。今私達は部隊からかなり離れた所にいるんですよ。見つかればこちらは戦力不足。死は確実です」


「んなもん、全力で戦えば済む話だろ! お前もドルイドなら戦いに誇りを持て!」


 イルキは剣を天に突きあげた。


「これだから脳筋は。全力で戦えば勝てるとでも思ってるんですか? 私はあなたの全力を想定しての話

をしてるんですよ。ハルを戦いに参加させるわけにはいきませんから、戦いは避けるべきです。それに、いつからドルイドは戦いに誇りを持つようになったんですか? ドルイドは冷静沈着、常に情報を分析し、完全完璧に勝利を収める者のことでしょう?」


「それって結局戦いが好きってことじゃねぇか! というかなあ、お前はいっつもどんくさいんだよ! 

何が冷静沈着だ! あのときお前がモタモタしてなかったら俺達は光に飲み込まれてこっちに来ることも無かったんだ!」


 イルキが眉間にしわを寄せた。


「納得いきませんね。あのとき自分から光に飛び込んで行ったのは誰ですか? 『新しい治癒魔法かもしれないぞ!』とか訳の分からないことも言っていた気もしますよ」


「俺はそんなこと言ってねぇ! このでっちあげ伊達眼鏡~~っ!」


 アイドがイルキに掴みかかろうとするのを、ハルが既のところで止めた。


「二人とも仲良くしてください! もう、戦いのときみたいに息ぴったりでいられないんですか?」


「無理です」「ムリだね!」


 二人が否定するタイミングが合っていることに、ハルは苦笑した。


 しばらく歩いて行くと、三人は足を止めた。


「なんか、違う魔力があるな……」

「はい、私も気付きましたよ、アイド」


 そう言っていると、突如大きな火柱が、天空に向け、轟音とともに噴き上がった。


「なんだあれ……! 黒い炎だと……!?」


 アイドが舌打ちをする。


「やはり悪魔の力ですか。行きましょう、ハル」

「そこは俺も呼べよ!」


 アイドがイルキに突っ込むが、イルキは無反応である。

 走り出した三人だったが、道を塞ぐようにして、赤ローブの敵が現れた。


「おいおい、さっきまでコイツらの魔力なんて感知出来てなかったぞ」

「それは私もですよ、アイド。でも、たった50人規模ですから余裕でしょう」


 二人は空間からスタッフを取りだす。と、二人は掻き消えるように姿を消した。

 途端、敵の体が文字通り穴だらけになり、炎に包まれた。

 直ぐに灰となった敵を、アイドが見下ろす。


「こんな感じだな」

「いえ、アイド、あなたはもっと魔法の精度を上げた方が良いと思いますよ。一瞬で心臓を貫く位の気持ちで行ってもらわなければ、連携がうまくいきません」

「はあ!? じゃあお前、もっと炎一つ一つに全力尽くせよ! 一瞬で燃やしつくさないと、もしかしたら生きてるかもしれないだろ!」

「だとしたら、それはあなたのミスですね」


 またアイドがイルキに掴みかかろうとするので、ハルが止めに入った。


「いちいち言い争わないでください! 今は黒い炎が現れた場所に行かないと!」


 ハルが言っても言い争いは終わらない。

 双方が口げんかに息を切らし始めた頃、遠くから声が聞こえてきた。


「おーい!」


 三人は、その声の主がスカイであると直ぐに分かった。


「あっちの建物の向こう側か」


 そうアイドが言うと、ちょうど建物の陰からスカイが出てきた。途端、三人とも吹きだした。


「笑うなお前ら!」


 ラーシャが手足をばたばたさせ文句を言っている。


「いやいや、これが笑わずにいられますか!」


 アイドが言うと、イルキとハルが頷く。

 スカイにお姫様だっこされているラーシャなど、滅多に見られない。


「師匠、あんまり動くと傷口がまた開きますよ」


 スカイに言われ、ラーシャは素直に大人しくなった。

 それを見て、また三人は爆笑する。

 ラーシャはむぅと膨れ、「今度確実に半殺し」と小さく呟いた。





 戦闘は初め考えられていたよりも長引いたが、無事魔術師の大勝で終結した。

 現在の状況を整理するため、魔術師の重役で会議が開かれることになった。

 会議では、様々な意見が飛び交った。

 まず、現在の状況については、東西南北の四つの大都市が全て壊滅したとの報告があった。生存者は、魔術師が救出できた以外は全て殺されたと考えられており、その殺され方は、わざと血を地面に流すようなものであったということだった。

 これからについては、北に拠点を置き、悪魔使いなどについて、重点的に情報収集をしていくことで全員が合意した。


 帰還方法は、やはり誰も知らなかった。


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