魔の終わり
「は?魔を絶つ方法が他にあった?」
この四人にあってから、半年がすぎた。あれやこれや魔を潰しに行ったりしている間に、いつの間にかこんなに月日がたっていた。そんなとき、この四人がこの話を持ちかけてきたのだ。
「巫女の首を切ってその血を捧げるんだと。」
「いやそんなの私が許さないよ!?」
「冗談に決まっているだろう……」
なんかすごく明るい人たちがいるんだけど。
「別に本当でもいいけど。」
「いやお前死ぬぞ?」
「死ねばいいよ。」
思ったことを言っただけなんだけど。なんか静まり返っちゃった。えーと。
「まあ実際は龍の持つ宝玉をその季節の巫女が持ち、霊力を分け与える。そして、魔の巣窟を見つけ出し、そこに宝玉を置く。で、封魔陣と神、妖怪、神に仕える獣の力を合わせ、魔を封じた宝玉を割る。」
季節の巫女と聞いて、私もかなり顔が暗くなっていることだろう。
「まあ君は春の巫女。出番はないよ。」
炎尾のふざけた態度に、桜神様も、誰も突っ込まない。ただ、膝の上で手を握りしめるだけ。さすがにいつも追い回してくる桜神様が来ず、違和感を感じたのか、いつも表情を変えない豪石や銀雷までもが戸惑った表情を浮かべていた。横を見ると……桜神様が、泣いていた。
「いま、動ける、巫女は、神楽しか、いないわ。」
泣きながら話すので途切れ途切れだ。私が話すしかないだろう。ハクもうつむいているし。
「魔が現れたとき。そのとき私は、他の町で妖怪退治。蛍は風邪をこじらせて寝込んでたらしいわ。それが結構強力な奴でね。氷柱も援護したらしいんだけど二人とも霊力をかなり使ってしまって、昏睡状態。私も蛍も責任を感じたけど結局立ち直れたのは私だけ。一応他の神とも契約を一時的にしたから霊力は高まってる。で、話の続き。」
「あ、ああ。魔の巣窟は見つけたし、今の私たちなら力を合わせることも可能だろう。ただ龍の持つ宝玉がな……」
「あるよ。友達の龍がたまたま死んでしまったとき、くれたの。好きなように使えって。」
いつの間にか立ち直った桜神様がさっと宝玉を差し出す。
「じゃ、行こうか?」
うわあ皆から殺気がみなぎってる~!私もだけどね。桜神様、私、ハクは三人の仇討ち。ま、死んでないけど。妖怪四人は自分のところの妖怪達が魔の犠牲になってしまったことで、まあこちらも仇討ち。皆でギラギラ殺気をみなぎらせて境内を出た。
「ここね。てかかなりひどいわよこれ。」
「じゃ吹っ飛ばしまーす。幻想蝶桜!」
扇子から大量の蝶が飛んでいく。これは爆発しない。それ以上の力がある。よく見ると、蝶の羽は、桜の花びらだ。おっと、蝶たちが魔たちに到達したようだ。ほら、触れた魔からどんどん消えていく。
「これどういうことだ?」
「死蝶。触れたものを死に至らしめる。」
ハクが説明する。入り口に魔はいなくなった。
そこに宝玉を置く。ズルズルと中にいた魔たちが宝玉に引きずり込まれ、宝玉は、まがまがしい色に染まった。それに皆で手を置く。
「いくわよ!せーの!」
桜神様の掛け声で力を入れる。霊力、水、炎、土、雷。全てが宝玉の中で渦巻いて……音もたてずに、宝玉は割れた。
神社に帰っていつも通り四人が帰っていく。ひとつ違うのは、私が大きく手を振ったこと。いつもは小さくだけど、今日は、そうしたかった。少し驚いたような顔をしていた静水も手を振り返してくれた。素直に、嬉しかった。だから、笑った。
「変わったね。神楽。」
ハクが尻尾を振る。桜神様も微笑んでいる。
「姉ちゃん!ご飯作っといたから食べよー!」
真人が叫び、私も走って神社に戻った。魔はいないけど、いたずらをやらかす妖怪がいるのは変わらない。それを取り締まりながら、楽しくくらそうと思う。




