表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: みょんみょん
6/7

親子の絆

「あの……。先輩、ちょっといいですか?」

放課後、一年生の女の子に声をかけられた。ついでに私は二年生。頷いて、屋上まで行った。


「実は……私の家、幽霊のような子がいるんです。小さな女の子です。声をかけると、泣きながら消えちゃうんです。怖いというか、その子を助けてあげたいというか……夜に、決まって私のところに出てくるんです。家族といるときも。家族も怯えてしまって……」

「じゃあ夜、あなたの家に白狼連れて行くわ。その子と話してみる。」

手を振って、帰る。もう夕暮れなので、速く帰らないと間に合わない。


「よ、神楽。」

また来てるよこいつら……。急いでいる私の様子を見て、桜神様が

「あら、お仕事?」

と私に聞いた。

「はい、後輩から。」

いつ?と言うように首をかしげるハクに、

「夜よ。あなたも準備して。」

魔が絡んでいる場合もある。武器も一応持っていかないと。

「俺らも行っていいか?」

「外で待ってるならね。」

短く会話して、さっさと神社を飛び出した。


「先輩!」

チャイムを鳴らすと、一年生の子が飛びついてきた。そのまま入って、リビングに通してもらう。妖怪たちは外にいる。

「先輩。家族です。」

「どうも。」

ペコリと頭を下げられて、私も頭を下げる。

「そろそろ、出てくる時間だよね、姉ちゃん……」

一年生の子の弟が呟いたとき。

スーっと女の子が出てきた。立ち上がって、その子のもとまで歩く。この子は幽霊。それはまちがいない。

「あなたは誰?どうして泣いてるの?」

後ろから一年生の子が声をかける。すると、

「お姉ちゃんについていたのは、巫女の知り合いと知っていたから……迷惑かけて、ごめんなさい……」

女の子が顔をあげた。涙で、濡れていた。説明を促すと、かなりたどたどしいのでまとめると。

女の子は、病気で死んでからも、お母さんを見守り続けた。するとある時お母さんが魔に捕まったため、私のところに来たかったのだという。

「なるほどね……いくよ、ハク。」

「え、先輩!」

「ちょっと魔を潰してその子のお母さん助けてくるってさ。その子よろしく。」

ハクが喋ったので、皆びっくりしていたがそんなことは関係ない。ドアを開ける。

「ちょっと魔を潰してくる。」

「ちょっと待て!」

巨大化したハクによじ登っていた私は、妖怪たちの方を見た。

「私たちが引き付け、お前がその子の母を助ける。それでいいだろう。」

銀雷が提案する。まあ確かに効率はいい。

「じゃあ、それでいいわ。さっさと行きましょう。」


「……あ、もう問題なかったね。うん。」

その子のお母さんはすでに魔をボコボコにした後だった。たくましすぎる。すごいこの人。

「うちの娘の分まで生きるって約束したのよ!こんなところで死ぬわけにはいかないわ!」

それを聞いて、わかった。この人、あの子との約束を力に頑張ってきたんだろう。そして、これは桜神様の力。きっと、毎日お参りに来てくれた人の一人じゃないだろうか。桜神様は、そんな人に、少しだけ、霊力を分け与えてやる。その霊力と、約束の力が合わさって、魔を倒すほどの力になったのだと考えられる。桜神様がしたのなら、私からも一つ。

「娘さんに、会わせてあげましょう。ついてきてください。」

「え……?会えるんですか?あの子に……?」

ハクの背中をさして、乗るように伝える。そのまま、後輩の家へと向かった。


「美佳……?美佳なの?」

「お母さん!」

二人で感動の再開をしている親子とは対照的に、こっちは、

「なにもやることなかった。」

いじけているのが約二名。私は別にいいんだけどな。

「すみませんが、そろそろお別れの時間です。」

告げる。それを合図に、足から美佳ちゃんが透けていく。

「お母さん!元気でね!」

「あと60年くらい先でまた会おうね!」

二人ともにっこりと笑って手を振る。そして、

「ありがとう!お姉ちゃんたち。お母さんにも会わせてくれて。」

じゃあね、と手を振る。美佳ちゃんが完全に見えなくなったあと、美佳ちゃんのお母さんが、

「本当にありがとうございました。」

そう言って、出ていった。

「よかったですね、あの子たち。先輩、ありがとうございました。」

ひらひらと手を振って、私たちも帰路についた。

桜神様も、私をあんな風に思ってくれているのだとしたら、とても嬉しいな、と思いながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ