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  作者: みょんみょん
3/7

魔の秘密と妖怪たち

今回ちょっと桜神様怖くなっちゃいました。

「静水!!」

境内を掃除していると、二人の妖怪が神社に駆け込んできた。大方静水の迎えだろう。私から行くといったのに。

名前を呼ばれた静水は神社から顔を出した。

「お、豪石と銀雷じゃねーか。」

あれから一週間たった。正確には6日である。

「まったく、君も人様に迷惑ばかり掛けないでくれよ?」

私の近くの木に狐の妖怪が座っていた。が、無様に転げ落ちた。その様子を見ていたハクと桜神様が後ろを向いて笑っている。堪えようとしているのだろうが、肩が震えているので無意味である。ちょっとだけ言葉が溢れる。

「本当に、無様。」

私の言葉がとどめになったか少ししょんぼりしている。豪石、銀雷と呼ばれた妖怪も呆れたような顔をして、静水の方を見てから、私に目を向ける。これがなにを求めている視線なのかよくわからない。

「説明を頼めるか?」

意味を考えていた私に答えを教えるように、視線の意味を銀雷が表す。なるほど、そういうことか。神社の方に向かって歩いていくと、ハクにトン、と触れて、

「お茶入れてくるわ。」

「え!?私!?私狼だよ?そこは人間であるあなたがしなさいよ!ちょ、神楽!?神楽~!」

ハクの訴えを無視して、お茶を入れにいく。説明しなかったのは、喋りたくなかったら。ハクもそれは察したのか、追いかけては来なかった。


お茶を用意して、ちゃぶ台に置く。そして、私も桜神様の隣に座る。

「説明はしたわ。後はあなたに聞きたいことがあるんだと。」

それは薄々感づいているであろうハクは、わざとおどけた感じで私に告げる。でも、

「ねえ、その前に。私、神社から見てたからあなたたちの名前がわからないのよ。教えてくれない?」

桜神様がごっちゃにしてよくわからなくなったので統率すると。

蜘蛛妖怪は、豪石。蛇妖怪は、銀雷。狐妖怪は、炎尾らしい。静水の捕捉説明によると、ここにいる四人皆がそれぞれ妖怪のグループを作っていて、全ての妖怪が、四つのグループどれかに入らなければいけないらしい。

その他にも、彼らが出すであろう質問に答えたくないのか、桜神様は話題をそらし続けた。

「あら、こんなに遅くなっちゃったわね。そろそろ帰ってもらっていいかしら。明日はいろいろとあるの。」

ちなみに明日は四人の巫女が集まる予定だ。

桜神様は、帰るように促す。このまま帰ってくれれれば……。

「そういうわけにもいかねぇんだよな。さっきも言ったが、聞きてぇことがある。」

桜神様は、なら後でごまかせばいい。そう思ったのか、黙りこんだ。

「あの魔を絶やす方法はなんだ?」

私の方を向いて、銀雷が鋭い目で尋ねてくる。それを私は黙ることでその質問に答える意思は無いと表明する。

「なんだ、知らないのかい?」

「それは……」

明らかに馬鹿にした目付き。妖怪たちの間で桜木神社はあてにならないとでも噂を流されたら、桜神様への信仰が薄れ、桜神様は……消えてしまう。それはとても困る。言葉につまった私。あれ、ちょっと待って、この状況ってまさか……

「それを知ってどうするの?ねえ。ねえねえ。教えてよ。ほら、早く教えてよ。ねえねえねえねえねえ……、ホラハヤクハヤクハヤク……」

「「さ、桜神様!!」」

炎尾につかみかかろうとした、桜神様を慌てて押さえつける。ものすごい力だ。ハクは、狼。力が強いはず。そのハクが、必死に押さえつけて、それでも完全にはできないのだ。私もかなりの力を使っているはず。必死にハクが説得をするが、効果はなし。桜神様は、私の母親代わり。私は、小学生のころ、この姿のせいでいじめられた。その時、かなり疲れるのに人間の姿をして参観日に来ていた桜神様は、先生からその話を聞いて、激怒した。そして、その子と両親を呼び出して……今のように、狂ったのだ。その場はなんとか押さえつけて、次の日登校したところ、いじめをしていた子達に、土下座された。でも。私は、それを許さなかった。だって、自分に危険が及んだ時だけ謝るなんて、都合がよすぎる。そしてそれから、私は感情を出すことをやめた。

なんてことがあったのだ。きっと桜神様は、私に向けられた炎尾の視線に反応したのだと思う。そして、私を守るために、狂った。それにいち早く気づいた静水が、慌てて炎尾に謝るように言う。そして炎尾が、

「か、神楽悪かったよ。」

そう言った瞬間、ふっと桜神様がおとなしくなった。

「それでいいのよ。」

目は、狂ったままで。口元には、微笑みを浮かべて。かなり怖がっているかと思えば、豪石や銀雷は座っていた場所も表情も変えずにこちらを眺めている。この人たちもかなり物静かな感じがする。

「で、答えは。」

豪石がもう一度、尋ねてくる。今度は、桜神様に。私だって、答えは知っている。だが、それは、この四人には辛いことだと思う。

「そんなの、神や神に仕える者たちに任せておけばいいのよ。」

桜神様は、にこりと微笑んで、答えを濁す。

「んな答えいらねえんだよ。神楽だって知ってんだろ?」

静水が少し喧嘩腰になる。さっきの桜神様を見ていっているのだから、けっこう怖いはずだ。

四人に見つめられて、考える。少し長い言葉だけど、桜神様は私を守るために狂ったんだ。このくらい、いいだろう。それに、こんな感情なら……大丈夫。

「なら……言ってやればいいじゃないですか、桜神様。この人たちが聞きたいというなら、私たちが気を使っても意味ないですよね?だったら……言って、聞かなければよかった、やめとけばよかった、なんて後悔して傷ついてもらいましょうよ。」

さらさらと流れるように言葉を紡ぐ。さて、どうするの?

「それでもいい、教えてくれ。」

あらあら、まあ、いいけど。

「じゃあ簡単に言うわよ……?」

四人が頷く。

「策は、たった一つ。この世から、この町から妖怪を、抹消すること。それだけよ。」

「なっ……」

四人が声を揃える。

「それ以外に方法はないのかい?」

炎尾が私に尋ねる。ちょっとしゃべりすぎたので、目も口も閉じて完全な沈黙を意味する。その代わり、ハクが口を開く。

「それだけよ。だから、私たちは皆黙っていた。あなたたちを傷つけないように。」

シーン……と部屋が静まりかえる。

「お前たちは、魔を絶とうと……妖怪を消そうとしているのか……?」

「妖怪も、人間も、全てこの世に必要なものよ。消しはしない。」

桜神様が答える。

「なあ、もう一つ。そもそもなぜ妖怪を消すしかないんだ?」

静水の質問に、再び静まりかえる部屋。この答えは、私しか知らない。なぜなら……

「それは、わからないわ。この方法は、神楽が教えてくれたものよ。予想はついているけど……」

「神楽?どういうことだ……?」

こういうことだ。私が発言する他、無いらしい。

「魔の退治をしに行った時のこと。気配を感じて行ってみたら、魔ではなく、妖怪がいた。そして、私の見ている前で、魔に変化した。調べてみたら、魔は、妖怪が魔に憑かれてなるものだってことがわかった。だいたいは襲われたとき。憑かれて一時間の間に巫女が祓わないとそいつは三日後、魔になるわ。静水の場合はもとから憑かれてなかったから大丈夫。そして、全ての憑かれた妖怪を祓うことなんて絶対不可能。だから、こうするしかないの。わかった?私もう喋りたくないから。」

フンッと顔を背ける。そして四人は、

「……そろそろ帰るぞ。明日もくる。」

「明日はダメ。明後日以降にしてちょうだいな。」

桜神様が断る。四人が頷いて去ったあと、桜神様が、

「ほら、皆のご飯作らないといけないんじゃない?あと明日の準備もね♪今夜のご飯なあに?」

「オムライスにしますよ。」

「美味しそうねぇ。」

桜神様の顔がほころぶ。

「そういえば、桜神様鏡に帰らないんですか?」

ハクが疑問を口にする。そう、それは気になっていた。

「ここにいた方が楽しいのよねー♪」

本当に楽しそうな桜神様。元気だなぁ、なんて思っていると、私も手を引っ張られて一緒に走る。ハクも後ろにいたし、ちょっとだけクスリと笑ってしまった。

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