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  作者: みょんみょん
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桜神と妖怪

「「いただきまーす!」」

真人と友達が朝ごはんを食べ始める。メニューは、冷やっこと、味噌汁とご飯、焼き魚。ここに暮らしている中で料理ができるのは私しかいないのでいつも私が作っている。

「姉ちゃん。遊園地行ってきていい?」

つまりはお金がほしいということなのだろう。財布を持ってきて、お金を渡してやる。

「ありがとう!!」

笑ってそう言った後、食事を再開した。


「「ごちそうさまでした!」」

この二人は本当に息が合うのだなと思う。同時に食器を台所に持っていくところなど、本当に似ている。


「いってきまーす!」

ブンブンと手をふる二人に、小さく手をふる。

二人が境内から完全に姿を消したところで、今日しようと思っていたことをする。妖怪の看病はハクに任せといて、私にはやることがある。武器を置いてある祠に向かうと、なぜかハクがいた。少し首を傾げて、疑問を表す。

「私はね、ちょっと桜神様に能力をもらったのよ。前から桜神様とは話してたんだけどね。」

「……?」

あれ、普通に喋ってる?ハクは、心を通してしか会話ができなかったはず。

「だから、これが能力。普通に喋れるの。」

桜神様そんなのできたのならさっさとやってください。

「用があったんじゃないの?」

あ、そうだった。桜神様に用があったんだった。ハクは、私の横を通って妖怪のところへ行った。

祠の扉を開ける。そこにあるのは、鏡。それに触れて、

「桜神様、お話ししたいことがあります。」

「なにかしら?」

後ろで声が聞こえて、くるりと振り返る。そこには、きれいな女性が立っていた。この人が、桜神様。

「二つあります。一つ目は、今日は満月ですので、お月見をします。ご参加されますか?」

「わぁ、お月見?もちろん参加するわ。楽しみねぇ。」

無邪気に答える桜神様。桜神様は、境内に捨てられていた私を拾って育ててくれた、母親代わりの人。四つある神社では、生まれた子供が巫女になる。が、その年は四つの神社すべて、霊力の弱い子供が生まれてしまい、巫女が絶えた。そして、その子供たちも出ていってしまったらしい。そのとき、捨てられていた子供が、丁度四人いて、みなそれぞれの神社の条件に当てはまった。そして、巫女となった。そのため、桜神様だけには普通に喋れるし、笑ったり、泣いたりできる。二人だけの時のみだが。

「で、もう一個は?」

そう、もう一つある。これは、相談。

「神楽舞を舞ったばかりだというのに、魔を感知できず、怪我人が出ました。私の責任です。もっと、もっと霊力を高めたい……いったいどうすればいいのでしょうか……」

声が小さくなっていく。そんな私の頭を、桜神様の手が撫でた。

「大丈夫よ。私作ったお守りをあげる。神が作ったんだから、かなり霊力高いはずよ。」

そっと手渡してくれる。

「ありがとうございます。これ、大切にしますね。」

お守りを受け取る。本当の娘になれたようで、とても嬉しかった。

ハクがするりと入ってきた。

「あの妖怪、目が覚めたわよ。」

「あら、また静かで感情を出さない神楽ちゃんに戻っちゃうのかしら?」

桜神様にからかうように言われて、ちょっとだけ睨む。桜神様とハクと一緒に妖怪のもとへ歩き出した。


その妖怪は、布団に入ったまま上半身だけ起こしていた。

「ここの神様と巫女、連れてきたわよ。」

ハクが話しかける。

「悪いな、迷惑かけただろ?」

伺うような顔で訪ねてくる妖怪に、ゆっくり首を振る。

「ねえ、あなた名前は?私ね、ここの神の桜神よ。ほら、あなたも。」

桜神様に促されて、口を開く。

「桜木、神楽。」

ぽそっと言って、また口を閉じる。

「俺は静水。蛙の妖怪な。」

「今日は満月でしょう?神楽が作るお団子は美味しいのよ?一緒にお月見しましょ?」

「迷惑でなければ。」

桜神様と静水が話してる間に、

「……お団子作ってきます。ついでに御夕飯も。」

「俺も手伝った方がいいか?」

手をひらひら振って、しなくていい、という意味を表す。今度こそ席を立つ。先ほど桜神様と他にも雑談したので、そろそろ真人が帰ってくる頃合いだろう。友達はそのまま帰るそうだ。ちなみに真人も私と捨てられていた。桜神様が親代わりで、いつもお参りを忘れていないが、真人に桜神様の姿は見えない。


「いただきまーす!」

パクパクご飯を食べる真人。食事をしながら遊園地でやったこと、見たことをすべて教えてくれた。桜神様と静水は私の部屋で食事をしてもらっている。妖怪や神の姿が見えない人間がいると食事しにくいからだ。お月見は午前0時にやるのでそのころ真人は自室で寝ているだろう。


「おやすみー。」

「おやすみ。」

真人の部屋の扉を閉めて、下に降りる。もうちょっとでできる、という所でやめていたので、出来立てが食べられるように工夫している。

ささっとお団子を仕上げて、お皿に盛り付けて縁側に置く。ハクと、桜神様、静水を真人を起こさないように呼ぶ。

縁側に座って、夜桜と月を眺めながらお団子を食べる。(桜神様が喉につめて咳き込むのは一回だけあったが)

それは、とてもきれいで、まるで幻のようだった。

「ここの桜と、月。かなり綺麗だな……」

静水が呟く。手を伸ばせば届いてしまうような月と、風に揺れて、波のように波打つ夜桜を見ながら、もう一度お団子を口に入れた。

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