ダークエルフ
シンの声で震えながら、入ってきた少女を見て酒場にいた全員が絶句した。
「どうだ」
にやりと笑うシンを見る酒場の連中達。
「何ていう体を張った冗談だよ」
「前から変わってるとは思ったがここまでだとは…」
「いくら何でも体を張りすぎだろ」
「おいおい、すげーな」
「俺には真似できねーわ」
「異世界の奴ってのはぶっ飛んでんだな」
やがて、カウンターの向こうのスフィニャが問いかける?
「そのなんだにゃ…どうしたんだにゃ?」
「どうしたって何が?これか?」
エルフの少女に指をむける。
うなずくスフィニャ。
「買ったんだよ、昼間に話の種になっていたエルフを。二十万で」
「…そ、そういうことかにゃ」
何かを悟った顔する、スフィニャ。
「おい、お前もしかして冒険者辞めるのか?」
「いきなりなんだよ。辞めるかどうかは決めてないけど、まぁ辞めるかもしれねーな」
「だよなぁ、こんなん買ってくるぐらいだし」
「まぁな。これで一躍大金持ちよ」
笑うシン。
「まぁ、お前が決めたなら文句は言わないし。誰も止めないだろう」
虎耳の男に全員がスフィニャを除く全員が頷く。
「しかし、辞める意思表明にダークエルフを買うとはな、やっぱ変わってるな、シンは」
「まぁ、エルフで一攫千金を狙おうと思ってな」
シンに向かって、口を開く。
「一応一つ聞きたいことがあるんにゃがいいかにゃ?」
「いいぞ、別に。気分がいいからな」
「シンはこの娘をエルフだと思ってるかにゃ?」
「エルフだろ、こいつは」
「そのにゃ、この娘はダークエルフって知っておるかにゃ?」
「あ…あぁ、奴隷商も言ってた気がしないでもないな、まぁ、エルフには違いないだろ?」
「そのにゃ、シン。聞いて欲しいんだにゃ」
「さっきからどうしたんだよ」
「この娘はにゃ、昼間話してたエルフとは違うんにゃよ」
「は?」
「だからにゃ、昼間話してたのはハイエルフにゃ。この娘はダークエルフにゃ、違うのにゃよ」
スフィニャとシンの会話を周りで聞いていた、連中もおぼろげながら分かってきた。
ようは間違えたのだ、よりにもよってハイエルフとダークエルフを。
「そのなんだ、シン元気だせよ」
黒い体毛に覆われた男が慰めの声をかける。
「おいおい、全員俺を担いでるんじゃ…なさそうだな」
周りの雰囲気で察する。
悲痛な声がでそうになるが堪え、必死の思いで何ともないような表情を作り出す。
「っても、あれだろ少しぐらいの価値はあるんだろ?」
その言葉にスフィニャが頭を振る。
「ないにゃ、銅貨一枚の価値もないにゃ」
「いやいや、待て。それはおかしいだろ、曲りなりとも一応はエルフなんだろ?そら、偽者かもしれないが…」
「シンにゃ、ダークエルフって種族はにゃ…この嫌われた存在なんにゃよ」
「どういうことだよ」
「アノン神は、不浄なる存在を嫌うという話を聞いたことないかにゃ?」
「あるな」
「その不浄なる存在の代表は魔物なんだがにゃ、ダークエルフもその中に入ってるってことになってるんにゃよ、この国のアノン教では」
「なら、他の冒険者に買ってもらえば…」
「それも無駄にゃ、冒険者は絶対に買わないにゃ」
その言葉に周りはうなずく。
他の男が口を挟む。
「聞いたことないか?ダークエルフは光を閉ざすっていう逸話。ギルドにはいったりすれば一回は必ず聞くだろ」
「シンは基本ソロだから、知らないんじゃないか?」
「それなら知らないか」
「…どういう逸話だよ、教えてくれよ」
「ダークエルフと一緒に組んで無事だったやつはいない、ダークエルフは光を閉ざすから来た道が分からなくなって死んじまうとかな、他にも色々あるぞ」
冒険者はジンクスを大事にする者が多い、こんな逸話がついているダークエルフを買う冒険者はそうそういないだろ。
俺みたいに知らずに買った奴は別として。
「悪いことは言わねぇ、捨てたほうがいいぞ」
「まぁ、子供って言ってもしょうがない、これを連れてりゃぁ他のギルドに入れてもらうのはまず無理だし、冒険者やてるのにダークエルフ連れてるなんていいことないぞ」
「アノン教会に連れてきな、そうすれば少しばかりの謝礼なら貰えるかもしれないぞ」
口々に言う。




