活気
「まぁ、諦めるしかないな。ここに入れただけでもありがたいからな、文句は言えないしな」
シンはそう言って、近くにあった本を手に取る。
「そう言えば、お勧めの本はないか?できるなら、娯楽小説とかがいいんだが」
「小説か……なら、果実の小人がお勧めだな」
「面白そうなタイトルだな、どこにあるんだ?」
「面白いからな、ぜひお勧めだ。付いて来てくれ、場所は覚えているんだ。何せ十回以上は借りて読んでいたからな」
その後、メロウのお勧めの本を読み、本についての感想を語り合ったりし時間は過ぎていった。
二人が一段落付く頃には図書館は閉館の時間となっていた。
外に出ると夕日が二人を照らした。
「こんな時間まで付き合ってもらってすまないな。こんなにも話が合う人が初めてだ。私はいい友ができた」
そう言って楽しそうに笑う。
「ああ、こっちもわざわざ図書館に入れるようにして貰って悪いな。礼を言わせてくれ」
「気にしないでくれ。初めての友だからな」
そう言って、時計を見る。
「流石にそろそろ帰らねば心配されてしまうな」
「ああ」
「名残惜しいが帰るとしよう……そういえばシンはどこに住んでるのだ?」
「俺か?俺は獣人通りの……魚の骨っていう酒場に住んでるといった方が
はやいな」
「……獣人通りか」
「あ、ああ。知ってるだろ?まぁ、有名だしな」
獣人が多く住んでいるという地域でということでだが。
「そうか。しかし、何故わざわざあそこに?他にも色々とあるだろう?宿場なら」
「まぁ、安いからな」
「……そうか。いや、すまないな。シンには関係ないことだしな……私は聖都区の方に住んでいるんだ……そうだな、区の守衛にハイリア メロウの友人と言えば通してもらえるだろう。是非、遊びに来てくれ」
「分かった、空いていたら遊びに行かせて貰うよ」
とはいえ、守衛に信じて貰える気がしないんだがな。
しかも、聖都区って上流貴族の住んでる場所じゃねぇか……てことは、王宮貴族か?
「では、今日は楽しかったよ」
「ああ」
そう言って、メロウは手を振り表通りの方面に歩いていく。
その後ろ姿を見送りながら、自分も酒場に戻る為に裏通りの方面に歩みを進める。
途中、店じまいしようとしている露店から、ビスケットを買い、イリアの手土産にする。
酒場の看板が見える頃には、完全に日が沈んでしまった。
狭い路地に入り酒場の入り口にようやくたどり着く。
扉の向こうがいつもより騒がしく賑やかな声が聞こえるのを不思議に思いつつも酒場の扉を開け、中に入る。
「ただいまっと」
「あ!!」
シンの声に反応し嬉しそうな声を上げ、シンに抱きつく影がいた。
「っと、何だイリアか……何でそんな格好してんだ?」
前の仕事で着ていたフリフリのエプロン姿であった。
「スフィニャさんがお店のお手伝いして欲しいって言ってたから、お手伝いしてました」
その言葉でスフィニャを見るとばつの悪そうな顔をする。
「そうか。頑張れよ」
「はい!!」
イリアの頭を軽く撫で、そのままスフィニャのいるカウンターまで行く。
そして一言。
「今月の家賃はなしな」
「わ、分かってるにゃ」
その言葉を聞くとカウンター席に座り、酒とつまみを注文をする。
隣で座っているニーニャが笑う。
「だから、やめておいたほうがいいって私は言ったのに」
「ったく。どうせ、イリアを餌に客を釣ろうとしたんだろ」
「悔しいけど正解にゃね。けど、正直こんなに来るとは思わなかったにゃ」
前ほどではないが、それでもかなりの客の数である。
「イリアちゃんパワーね」
「恐るべきだにゃ」
「そんな姑息な手を使ってる暇があるなら料理の腕を磨けって」
そう言ったシンだが、内心客の数に驚いていた。
冒険者やらせるより、こっちのがいいかもしれないな。……一応は頭にいれておくか。
魔物を来なくする力も正直惜しい、あれも使い方次第では大金になる。
ハイエルフだったかよりいい買い物になったかもしれないな。
そう思いながら、注文した酒を飲む。




