不穏
深夜をまわり、ようやく店を閉めることになる。
あの後は半ば宴会のようになっており売り上げも相当なものだろう。
「流石に疲れた……」
「ご苦労様にゃ、少しだけ色つけておいたにゃ」
「おおう、ありがとさん……ちょっと寝るわ」
封筒を受け取ると疲れた体を引きずり二階の自分部屋へと行き、その後ろで荷物を持ってイリアがついていく。
その二人を見てスフィニャ達が笑う。
「あの言葉は驚いたけどにゃ……中々、よさげかもにゃ」
「シンがおとうさん、ねぇ…ふふふ」
ニーニャが色っぽく笑う。
「しっかし、駄目な父親に健気についていく娘って感じだな」
「イリガルが言うと嫉妬に聞こえるにゃ」
「失礼だろ」
渋い顔をするのイリガルを見て、スフィニャが喉を震わせ笑う。
「まぁ、でも何だかんだでシンなら、うまくやってけるだろうな。あんま種族間のこと気にしないしな」
「こことは違う別の世界の住人はみんなシンみたいな感じなのかしらね?」
「あれは、シンが特別だと思うにゃ」
「だろうな。あれが特別変わってるんだ」
酔い醒ましの桃を齧りながら断言した。
「イリアちゃんと慈しみの森に行くぐらいだからな……相当な変わり者だよ、あれは」
「ちゃんと無事に戻ってきたしね」
「って言ってもジンクスは……破れねぇしな、俺達は」
「ま、シンが面倒見てるからいいんじゃないかにゃ」
「そうそう。何たって、おとうさん、だからね」
「だな」
そう言って笑う三人。
「ただ、アノン教の武装神官達が怖いにゃね」
「だな」
「そうね」
アノン教が持つ守護隊、神魔討伐隊がある。
魔物などを討伐する部隊なのだが、魔物扱いであるダークエルフも討伐対象に含まれている。
「そうなったら面倒だな」
「私達もアノン神に嫌われてるしね」
その言葉で何ともいえない空気になる。
「それはその時考えるべきにゃ」
「といっても、最近魔物が活発化してるせいで神官共は私達を完全に敵視してるわよ」
「魔物の活発化な、最近変だよな。本来いない筈の場所に魔物がいたりしてるしな」
「ほんとかにゃ?」
「ええ、正直シン達が出会ったリアディノのはぐれ、いたでしょ?最近ああいうのも多いのよ」
「はぐれとはいえ凶暴すぎたりな、魔物でも妙にでかい奴を見たって話もあったし」
「心配ね」
スフィニャは髭を撫でながら不安になった。
何かよからぬことでも起こってるのかにゃ…心配にゃ…
「ここに来た奴には一応全員には話しておいたけど、気をつけたほうがいいわね」
「一応、情報を集めとくにゃ」
「お願い」
目の前の酒を一気に飲み干すとイリガルは立ち上がる。
「んじゃ、そろそろ俺は戻りますわ」
「お疲れにゃ」
「なら、私も帰るわ。お勘定ここにおいておくわね」
「はいにゃ、気をつけて帰るにゃよ」
「はいはい」
そう言って手を振り二人で店を出て行く。
「何事もなければいいにゃね」
スフィニャの呟く声が誰もいない店内に静かに響いた。




