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仕事


酒場に戻ると寝ていたイリアを起こす。


「とりあえず、服を着替えてこい」

「はい」


イリアが着替えている間に厨房の中に入り、簡単なつまみ類だけ先に作っておく。


「いい匂いがするにゃ」

「だろ」


厨房を覗き込むスフィニャが鼻をひくつかせる。

千切りにしたジャガイモをにんにく、ソーセージと炒め皿に盛っておく。

味見をするが、悪くはない味だと思う。


「あの…」


着替えたイリアが入ってくる。

やはり恥ずかしいのだろう、顔が赤くなっているが、そこは慣れてもらうしかない。

仕事内容を伝える。


「客が呼んだら行って注文をとる、品は忘れないようにこの紙に書いておけ」


そう言って紙を渡して思うことがあった。昼飯のとき、確か字が読めなかったはずだ。


「ところでお前、字書けるのか?」


その言葉に首を横に振る。


「だよなぁ…どうするか…自分が分かる字でいいんだが、ないか?自分達の言語でいいんだが」

「これなら」


そう言って渡した紙に筆を走らせ、紙を渡してくれる。


読めない…何て書いてあるんだ?


「何て書いてあるんだ?」

「オムライスです」

「じゃぁ、これでいい。忘れないようにその文字で書いておけ」


何て書いてあるかさっぱり読めなかったが、自分が分かるならとりあえずはいいだろう。


そろそろ開店する時間だぼちぼち、客がやってくる時間帯だろ。

それまでカウンターの椅子で座って待つ。


ほどなくして、一番初めの客が来た。


「あら、珍しいわね。シンがやってるなんて…お金がないのね?」

「うるせーよ。ほら、さっさと注文しろ」


一番目の客はニーニャだった。


「シンが調理をやってるなら安心ね、簡単なおつまみとワインを頂戴」

「あいよ」

「…何か、ひっかかる言い方にゃ」


首を傾げるスフィニャをよそにつまみを作り始める。

トマトを刻んで軽く炒めるだけだ。後は胡椒を少しだけ振って完成だ。


「ほい」

「ありがと」


ついでにワインを注いでやる。

これがきっかけとなったのか、仕事を終えた冒険者が次々とはいってくる。


「誰かと思ったらシンが調理やってんのか、だったら酒とつまみ頼む」

「あいよ」

「俺は塩のスパゲティと酒」

「はいはい。一応、注文はイリアに頼んでくれ」

「イリア?」

「あ、あのご注文を…」


二人の冒険者は近くにいた、イリアの存在に気づく。


「ん?ダークエルフの奴隷を買った話はホントだったのかよ」

「まじかよ…まぁ、いいや。酒とスパゲティ頼むわ、金ないから塩スパで頼む」


イリアに注文し談笑しはじめる。

メモにあたふたと書きシンに言う。


「お酒とスパゲティです、味は塩です」

「あいよ。ちょっと待ってろ」


注文された品を手早く完成させ、イリアに運ばされる。


「こ、こちら…ご注文の品です」

「おう、待ってたぜ。」


注文を受け取り旨そうに食べ始める。


「いい匂いがするから、もしやと思ったがやっぱシンか」


虎耳の男が入ってくる。


「金がないからな、ほら、さっさと注文しろ」

「んじゃ、ビールと何か腹に溜まるもの頼むわ」

「注文はイリアに言えって」

「イリア?誰だ?新しい従業員でも雇ったのか」

「あの…」


声に気づき後ろを振り向く。


「あの時のダークエルフじゃねぇか、ホントに冒険者辞めたのか?」

「辞めてねーよ。今はただの手伝いみたいなもんだ。それより、注文はイリアに頼む」

「へいへい」


椅子に座り、イリアに注文する。


「ビールと…そうだなディノのステーキ頼む。えーと…イリアちゃんだっけ?」

「はい」

「じゃ、それで」


丁寧にお辞儀をしシンの方に向かってゆくイリアをみてにやつく。


「いやぁ、可愛いもんだな」


エプロンを揺らしながら店内を走り回るイリアを見て席を移動する。


「よっこいしょっと」

「何でカウンターきたんだよ」

「いや、頑張っているイリアちゃんが一番見やすいだろ」

「お前らは、ダークエルフは駄目なんじゃないのかよ」

「冒険に連れてくのが無理なだけだから。可愛いのもを愛でるのに関係ないだろ…しっかし、いいなぁ」

「もしかして、アンタ少女好き?」


隣に座っていたニーニャが眉を潜め呟く。


「ち、ちげーよ!!そんな邪な気持ちはねーよ!!頑張っている姿がいいなって話なだけだ!!」


慌てて弁解をするが、寧ろ怪しさをます。


「とりあえず、ほら注文のやつだ」

「イリアちゃんに運ばせろよ!」

「何でだよ…カウンターにいんだからそのほうが早いだろ」

「うるせーよ、いいから」


イリアを呼び、注文の品を渡す。


「そこにいる馬鹿に渡してくれ」


注文を受け取り虎耳の男に届ける。


「ありがとね、イリアちゃん。はい、これは頑張っているからお駄賃」


そう言ってエプロンのポケットに五千を入れる。


「あ、ありがとうございます。えーえ…あの」

「俺はイリガルって名前」

「ありがとうございます。イリガルさん」


しっかりとお辞儀をするイリアを見てにやにやするイリガルを見て、ニーニャが言う。


「あんた、やっぱり少女好きじゃない」

「ちげーよ!!」

「五千も突っ込んでおいて言う台詞じゃないわよ」


カウンター席で言い合う二人を見ながらつまみ類を作り始める。


徐々に客足が増えてきたな。





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