昼食
大衆浴場へ続くのいつもの道を歩く。
金のメドが少しとはいえついたのはありがたい、仕事の前にどこかで飯を喰ってもいいな。
そんなことを考えながら、歩いていた。
そのせいでイリアが立ち止まっていたことに気づかなかった。
「どこかで喰いに行くぞ…ん?」
後ろを振り返るといない、来た道に視線を戻すと…少し離れた場所にいた。なにやら立ち止まって見ているようだ。
呼んでも気づいていないようで近づくが、それでも気づかない。
何を真剣に見てんだ?
気になり、イリアの視線の先を見ると貴族らしい格好をした親子が目に映る。
親子で買い物をしているらしく、会話がここまで聞こえてくる。
「ねぇ、パパ!これ買って!!今日は誕生日だからいいでしょ!!」
「さっきプレゼントは買ったばかりだろ…まったく、仕方がないなぁ。誕生日だから特別だぞ」
「うん!ありがとっ!!」
そう言って、熊のぬいぐるみを買ってもらい、大事そうに抱きかかえる。
手を繋いで人ごみの中に消えていった。
その様子を羨ましそうに見つめていた。
なんだ、ぬいぐるみを見てたのか。
子供だしな欲しくなってもしょうがないか…どれ、買ってやろう。
そう思い店の店頭に並んでいるぬいぐるみを見て驚愕する。正確には値札を見て。
四万五千だと…高いってもんじゃねぇ。貴族様ならともかく貧乏冒険者の俺に買える代物じゃねーよ…
すまんが無理だ、イリア。
心の中で謝罪をし、イリアの肩に手をかける。
「おい、行くぞ」
「はっ!はい!!」
まるっきり気づいていなかったらしく、驚きの声を上げる。
「さっさと風呂いくぞ」
「はい」
「後、飯喰っていくけど何が喰いたい?あんま高くなければ好きなの頼んでいいぞ」
「え!い、いいんですか?」
「お前が喰いたいの選んでいいぞ、特別にデザートもつけていいから…」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに返事をし、シンの手を握ろうとする。
「あっ」
慌てて手を引っ込める。
「さっさと、行くぞ」
シンが引っ込めたイリアの手を握る。
「あ」
自分の手とシンの手を交互に見つめる、心なしか喜んでいる様にも見える。
近くの飯屋にはいる、そこそこ手頃な値段と種族差別をしない店で、たまに利用する店である。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「二人だ、テーブル席で頼む」
店員に案内され、席に座る。
テーブルの上のメニュー表をイリアに渡し、自分も反対側からメニュー表を見ながら何にするか悩む。
「何にすっかな」
肉も悪くないが…麺類もいいな…
「ミートスパにしとくか。イリアは決まったか?」
目の前でメニュー表をジっと見つめるイリアに聞く。
「こ、これで」
そう言って小さな指でメニュー表を指差す。
指差した先はビール、と書かれていた。
「は?」
「こ、こっちにします」
シンの声で慌てて違う品を指差す、赤ワインとかいてある。
「いや、アルコールじゃん。飲むの?飯はいいのか?」
「ま、間違えました。これです、これにします」
一番隅っこを指差す。
「タバスコ…」
「…あ、ああ」
フードで顔を隠しているのでよく分からないが、何となくだが泣きそうな表情でいるのが頭に浮んだ。
「字、読めねぇのか」
「…はい」
気づいたら奴隷だったとか言ってたな、そういや…
「俺が選んでやるよ」
「はい」
メニュー表に目を走らせる。
「オムライスでいいか?」
「おむ…らいす?」
「卵をな…米の上に乗せた食べ物だな」
想像がついてないのがわかるが、説明するのが面倒だ。
「とりあえず喰ってみろ」
「わかりました。おむらいすをお願いします」
店員を呼び、注文をする。




