手伝い
尻尾を左右に振りながら壁に貼り付けてある、紙を調べていく、スフィニャだが、全て見終えこちらを振り向く。
「ないにゃね」
「一つもないのか?」
「一つもにゃ」
「と言いつつ…」
「ないにゃ、ゼロにゃ」
何てこった…
手持ちの残りは四千しかない、流石に少ない…少なすぎる。
しかも、イリアの食費も合わせると間違いなくすぐなくなる。しかも家賃分をまだ、稼いでいない。
迷宮かどっかに潜って素材集めに行くか…?嫌だな、面倒くさすぎる…それにイリアも慣れたぐらいで迷宮は荷が重すぎるだろ。
となれば…この四千を元手に一発当てて…
シンの顔の変化に気づきスフィニャが忠告する。
「一応言っておくけどにゃ、賭け事を止めておくべきにゃ」
「…しねぇよ」
あれは、完全に賭けをする顔だったにゃ、そう心の中で嘆息する。
しょうがないにゃね…
「久しぶりにうちを手伝うってのはどうにゃ?」
スフィニャの提案に頭を悩ませる…
とはいえこれといった方法はない、となるとその提案を呑むのがベストだ。
なら、やると決めたら次は交渉だ。
「いくらだ?」
「そうにゃね…五、六千でどうかにゃ?」
「もう、二千足してくれよ」
「それはこっちが厳しいにゃ、精々五百が限界にゃ」
「そうだな…イリアに手伝わせよう、これで一万、どうだ?」
「どうだってにゃ、勝手に足して貰っても困るにゃ。二人で九千ならいいけどにゃ」
「後、五百足せよ」
「わかったにゃ。じゃぁ、九千五百にゃ。いいにゃね」
「いいぞ」
お互い握手をする。
「イリア、手伝いだ」
「手伝い…何をすれば?」
「とりあえず…」
スフィニャを見ると、頷く。
「そうにゃね、奥の部屋の棚にある服に着替えてもらおうかにゃ」
「はい」
「俺はこのままでいいだろ?」
「…せめて、綺麗な格好が好ましいんだにゃ…まぁ、いいかにゃ」
奥の部屋に行く、イリアを見てからシンがスフィニャに言う。
「悪いんだがダークエルフが関連する本を数冊、貸本屋から借りておいてくれないか?」
「わかったにゃ」
「金は後払いで頼むわ」
「しょうがないにゃね」
「図書館が使えないってのは不便なもんだな、ほんと」
奴隷は図書館に入ることができないのである、本を読む場合は個人でやっている貸し本屋から借りるしかない。
ちなみに亜人は奴隷でなくても図書館に入ることはできない。
「それは、しょうがないにゃね…ん、着れたみたいにゃね」
恥ずかしそうに、こちらに向かってくる、イリアを見てスフィニャが笑う。
「中々、似合ってるにゃね。サイズも丁度良さそうだし」
白色を基調としたエプロンよりのデザインの服を着ている。
要所要所にレースのふりふりがついており可愛らしく、また、白色のエプロンがイリアの褐色の肌を際立たせ、とても似合っている。
元々、整った顔をしているのでさらに可愛らしさ増す。
「中々、似合ってるな」
「あ…ありがとうございます」
今までの服より肌の露出が多いせいか恥ずかしそうにしており、よく見れば
長い耳が赤くなっていることが分かる。
「そんなに恥ずかしがるほど、露出はないだろ」
「で、でも…そ、の…」
「とりあえず、その格好で今日一日接客するんだから、頑張れよ」
「え、せ、接客ですか?」
「手伝いって言っただろ。ここの手伝いだ」
「で、でも、私一度もやったことないですよ!?」
「誰でも初めは初心者だ。気にするな。それに、客の注文を受けて注文を紙に書いて俺に伝えればいい。それだけだ」
有無を言わせず伝えていく。
「残念だが逃げるって選択肢はないからな、お前の働きが生活に響くんだ、わかったな」
「は、はい…」
「頑張るんだにゃ」
「はい」
シンは首の骨を鳴らす。
「んじゃ、一旦風呂に行ってすっきりしてくるか」
「わかったにゃ…遅刻は駄目にゃよ」
「わーってるって。行くぞイリア…いや、普通の格好に着替えてくれてもいいから。そんな死にそうな顔すんな」
そうして、一旦酒場を出た。




