退院
「では、お二人で一万六千になります」
「は?まじで」
「はい」
治療院の受付でシンは信じられないものを聞いた。
今まで一度も来たことがないから知らなかったが、いくら何でもこの値段はとりすぎだ。
何せここに来てやって貰ったことと言えば、回復魔法をかけて薬草をぬって貰ったこととベッドを貸してもらっただけだ。ちなみに、ご飯はなかった。
「じょ、冗談だろ。回復魔法をかけて貰ったが、あんな五分もかかってないじゃねぇか」
「技術費でございます。それに、シン様は冒険者ですのでちゃんと差し引いた金額になっております」
「差し引いてこれかよ」
「お支払いにならない場合は冒険者の資格を剥奪となっておりますが…いかがなさいます?」
美人だが意外と腹黒い受付に何も言わずお金を支払う。
「これで、いいんだろ?」
「はい、確かにお預かりいたしました。では、またのご来店お待ちしております」
涼しい顔の受付に見送られ治療院を出てゆく。
何が、またのご来店を、だよ。そこは、普通お大事にとかだろ…
しかも一瞬で残金が四千になっちまった、割とシャレにならんぞ。赤字も赤字、大赤字だ。
糞っ!最悪すぎる!!
考え事をしながら歩くシンを不安そうな顔で見上げる。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、ああ大丈夫だ…少し考えることがあってな…それより、お前その格好で歩きづらくないのか?」
イリアの格好はフード付のローブを体全体を覆うように纏い、顔が見えないように隠して歩いていた。
視界があまりいいとはいえない格好である。
「だ、大丈夫です。ちゃんと、歩けますから」
そう言って歩くがやはり歩きにくいようでシンとの距離が少しづつ離れていく。
そして距離を詰めようとして走りこけた。
「大丈夫じゃねぇじゃん」
「ごめんなさい」
「ほら、こっちこい」
イリアを呼び、近づいてきたのを両手で抱きかかえる。
「わっ」
驚きの声をあげるイリアを抱いたまま、そのまま歩き始める。
「面倒だからこのまま行くぞ」
「は、はい」
ローブですっぽり覆われた子を抱きかかえながら歩くシンに道行く人々の視線を集めたが、酒場につくまで降ろさなかった。
酒場の扉を開けると客はおらずスフィニャしかいなかった。
「相変わらず、飲を喰ってる客はいないな」
「昼過ぎだからにゃ」
「どう考えても不味いからに決まってるだろ」
「失礼な話だにゃ。後、退院おめでとにゃ」
「かなりぼったくられたがな」
カウンターに座る。
「何立ってんだ?ほら座れよ」
シンの後ろで立っているイリアに声をかける。
「でも、私…汚いから」
「別に汚くねーだろ。一ヶ月迷宮に篭ってた奴とかのが汚ねーよ、俺らなんてたかが七日ぐらいだろ。それに向こうでも俺達はちゃんと水浴びとかして清潔に保ってきただろ」
「そうじゃなくて…」
「よう分からんが…座るのが嫌いじゃないなら、座ってろ」
スフィニャの顔をちらっと見て軽く頷かれると、恐る恐るシンの横に座る。
その様子を横目で見てスフィニャに尋ねる。
尋ねることは勿論…
「いい仕事ないか?」




