表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/37

捕食


ここに戻ってくる道中にいた、今、食べている肉と同じ生き物のことを思い出す。

雄と雌の二匹だ。

雄の方は喰うとしたら、中々手こずりそうだと思った…雌の方は簡単に喰えそうだが腹がいっぱいにならないなと感じた。

だが、雄の肉とちがって身は柔らかそうで食欲をそそった。

あの柔らかい肉を齧ることを思い浮かべると涎がでてしまう。

肉は雄より雌のがうまいのは経験から知っている、自分を追放した群れの雌はとても美味しかった。

涎がだらだらと流れてくる。

あの味を思い出してしまうと、今、食べている肉では物足りなくなってしまう。


しまったと思い、少し二匹のことを思い浮かべる。

すると解決方法は思いの他すぐでた、あの二匹を食べよう。

雄のほうは手こずりそうではあるが、偶には歯ごたえのある獲物もいいものだし、俺が負けるはずがないと思った。

この森で仕留め切れなかった獲物などいないのだから。最悪、雌だけでもいい。

涎がでる。

自分を追い出した群れを襲った時を思い出す。生まれてきて一番楽しかった記憶だ、逃げ惑った群れの奴らは一匹も残さずに全部、自分の腹に収めた。

あの興奮が蘇る。

そうだ。俺は、強い。この辺りの獲物飽きてきたし、今、食べている腐っているのよりは新鮮な方がいい。

決めた。食べる。久しぶりの狩だ。

そう考え、楽しそうにリアディノのはぐれは鳴いた。


シンは生い茂る草木を掻き分ける。

朝から森の中を歩き続け数時間はたっていた。

汗をぬぐい、足を止めず水分を補給し進み続ける。

ぎりぎりポータルにつかないぐらいだな…

できることなら野営はしたくない。

はぐれが今どこにいるかわからないが…もしこちらを狙っていることを考えるとやはりしたくない。

後ろを歩くイリアのこともある。


「イリアもう少し歩けるか?」

「…ごめん、なさ…い。でき…ない、です…」


呼吸は荒く今にも倒れそうな顔で歩いている。

無理もない、朝から休憩も挟まず歩き続けているのだ。ここまで歩き続けれただけでも十分賞賛に値する。

だが、歩みを止める余裕はない。少しでもはぐれがいた場所から距離をとらなければいけない。


「こっちにこい」


ふらふらと近づくイリアを抱きかかえる。


「しっかりと捕まっていろよ」

「ごめ、ん…なさ、い」

「気にするな」


どうしようもないことだ、冒険者を続ければこういうことは多々ある。

だが、それが冒険者になりたての奴がいるときに起こらなくてもいいとは思うんだがな。

なんともついてない。


イリアを抱きかかえ歩き続ける。

途中何回か魔物を見かけたが幸いなことに、こちらに気づいてないのばかりであった。

そろそろ日が暮れようとしている時ここに来て初めに野営した場所にようやく着いた。

一端イリアを降ろし思案する、このまま夜も歩き続けるべきか、ここで野営をすべきかである。

夜中に歩き続けるよりは、野営のが安全ではある。


「野営をとるか」


ここで、体力を回復させたほうがいい。

夜中に歩き続け危険な目にあうよりはましではある。なら、ここで休みを取り万全とはいえないにしても少しは余裕を持った方がいいはずだ。

あのはぐれがまったくこちらに興味も持たずにあの場所にいてくれるのを願うしかない。


薪を集め、野営の準備をする。

イリアの顔に疲労が滲み出ているのが分かる。

体の疲れもあるだろうがいつ襲われるか分からないという精神的な負担もあるだろう。

木を背中にさせ寝かす。

シンは今日も寝ずにあたりに気配を配ることにし、昨日と同じように蛮刀を握りしめる。


「俺の取り越し苦労であってくれよ」


獲物を探し走っていた、はぐれはその獲物の匂いが近いことに気づいた。しばらく走っていたから腹が空いているがここに来るまで一度も腹に餌を収めなかった。

狙っている獲物以外を腹に入れる気がないからだ…この空腹の腹には、あのおいしそうな肉だけを詰め込みたい。まるで人間のようにそんなことを思った。


空腹をこんなに我慢したのは初めてかもしれない。

涎がだらだらと溢れ出る。

匂いを追って近づいていくと見える。あの二匹がいる。

雌は木が背中にあるせいで、襲いにくい。雄の方は…無防備に背中を露出している。手こずりそうな奴だったから助かる。

雄からにしよう、まずは後ろから襲いかかり喰う。雌はその後にしよう、それがいい。

おいしいのは後だ。あの時と同じだ、あの肉たちと同じようにすればいい、俺は強い。

そして逸る気持ちを抑え、音を立てずに獲物に忍び寄る。


獲物の背中がはっきりと見えてくる、そしてあの時と同じように牙の並んだ口を広げ獲物に飛び掛る。


そして、悲鳴があがる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ