はぐれ
こちらを窺っているのはリアディノだった。
でかいな…普通のリアディノの二倍はある、二メトールはゆうに超えてるんじゃないか、あのサイズは。
こちらを見ているが襲ってくる気配はない。
視線を逸らさずにリアディノに目を見返す。しばらく睨み合うが一鳴きしリアディノは後ろを向き木々の向こうに歩いていく。
リアディノのはぐれか。
人と同じように群れて生活する生き物なかで集団の和を乱したり、協力し合わない、群れの厄介者がいる。
そういう奴は大抵、群れを追放され、そのまま餓死するのだが、稀に一匹で生きていける様に変化するものがいる。
それが、はぐれだ。
群れにいた頃より、大きくなり凶暴性がまし、共食いもするようになる。
下手したら魔物以上に恐ろしい相手でもある。
「イリア、大丈夫か?」
足にしがみつき、震えているイリアに声かける。
頷いてはいるが…体が震えている。
おそらくだが憲兵団をやったのもアイツだろう。
リアディノのはぐれにしては規格外の大きさだ…とりあえず、テントに戻ろう。
ここで、撤退するべきだな。
震えているイリアをもう一度、抱きかかえテントに戻る。
その頃には日が落ちていた。
テントに着くと、まずは火を起こし水を温める。
「落ち着いたか」
「はい…大丈夫です」
震えがようやく収まったイリアに砂糖の入れたお湯を渡す。
「とりあえず、これでも飲んでろ。茶葉を買う金がなかったから、湯で悪いな」
「い、いえ全然、大丈夫です!ご迷惑かけてすみません…」
「誰でもあんなん見たらびびるさ。俺も足が震えた」
そう言って安心させる為に笑う。
その様子を見てイリアは安心した顔になる。
さて、どうするか…
リアディノは群れで生きる頭がいい種族だったからな。俺達を見逃す可能性は低いだろうな…
魔物じゃないから、イリアの道を消すのも通じないし、手詰まり感が半端ないな。最悪一人ならどうにかなるかもしれないが…
口に手をあてて考える。
「あの、これ」
そう言って、イリアが果実を手渡す。
「一個しかないだろ、これ。お前が喰え」
「で、でも…パートナーだから。命を…預けあう…」
その言葉に思わず笑ってしまう。
しばらく声をあげて笑い、笑い終えると果実を二つに割る。
「だな。なら、半分だ」
半分の果実をイリアに手渡す。
パートナーか…自分で教えておいてなんだが、悪くない言葉だなと思った…
思ってしまった。
このダークエルフを捨てて、囮にでもして逃げる手段も考えていたのだが…コイツは、イリアは俺を信じてるらしい。
割った果実を齧る。
なら、裏切る訳にはいかないだろう。信じあえるパートナーを捨てるのはもったいない。
「イリア、ここで寝ていろ。俺はあのはぐれが来ないか外で見張っている」
「交代で…」
「明日のこともある。イリアは体力は全快にしておけ、俺なら一日寝なくても大丈夫だ」
「わかりました…役に立てなくて、ごめんなさい」
「いや、十分役に立っているから、安心しろ」
「ありがとうございます」
「ああ、お休み」
「あっ、お、お休みなさい!」
毛布に潜り込む、イリアを見てこちらも準備をする。
蛮刀を握り締めテントの外にでる。
できることなら相対はしたくない、勝てるかどうかは分からないからだ。
ふと、昔みた恐竜の映画を思い出す。
しっかりとは覚えてはいないが無人島に不時着し恐竜に襲われるような内容だった様な気がする。
あの映画にでてきたヴェロキラプトルとかいう恐竜にあのはぐれは似ているな、だとすればこの状況は映画のワンシーンだな。
最後まで見てなかったのがおしいな…主要人物が死んでなければいいんだがな…じゃなきゃ、気分が悪い。
蛮刀の柄をしっかりと握り締め、神経を尖らせ、夜が明けるのを待つ。
ようやく日が昇る、随分と長かった気がする。何も来なかったのを考えると興味がないことも考えられるが…油断はできない。
自分の部屋につくまで油断するものではない。
そう思い、欠伸を一回するとテントの中のイリアを起こす。
「起きろ、イリア。準備するぞ」
「…はい」
目を擦るも、寝ぼけてはいない。
撤退を開始する。
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