第二十四話 勇者の奥の手
お久しぶりです。だいぶ遅れました。
サブタイトル若干かぶってたので変更。
場所は変わり、黒血の森。その中でも異質な、嘆きの湖付近。
ここは比較的生き物の少ない場所に位置する穴場である。ウサギ状態のとき、密かにここを住居にしようと考えていたな、結局できなかったけど。
「ふん、貴様の墓場としては少々豪華過ぎるんじゃないか?」
「ほぉ、こんな苔やらキノコやらが生えてるとこが豪華ってか。おたく、見る目あるんじゃない?・・・俺にはどう見ても大きなダンゴムシの死骸とかありそうだと思うけどな。あ、あと有毒の胞子とか」
勇者はこちらを睨み付け小さく舌打ちをした。いや、煽るのに失敗したからって俺に当たんなよ。何もフォローできないぞ
「・・・そんな減らず口を叩けるのも今のうちだ、後悔させてやる!」
ん、向こうがやる気のようだ。勇者は腰に下げた剣、火の魔法を纏っている刀を抜いた。所謂、魔剣と言うやつだ。
魔剣は、簡単に言うと剣の作成中に魔力を込めて作るとできる、便利な剣だ。斬撃にのせて魔法を放ったりできたりするし、兎に角低燃費。
あれば百人力だが、如何せん値段が高いのだ。まず勇者でも手は出せない物だといっていい。
だからアイツが持っていることに疑問を感じる。しかもなかなかの名刀のようで、存在感が一般の剣のそれと全く異なる。
まぁ剣がどうであれ俺にはとっておきがある。大したことはない、はず。
「僕からいくぞ。・・・簡単に死ぬなよ」
こちらに向かって剣を振るう。どれも単調だが中々の威力がありそうだ。
しかし、当たらなければどうってことはない。というかなめられてる感が凄いです、腹立つな。
「最初は相手の力量を測る、ねぇ・・・まぁ妥当なんじゃない?」
「貴様も女の割によく動くな、さっさと切られれば良いものを」
・・・俺、女じゃねぇよ、勇者くん。
なぜか勘違いされているようだが別に教えてもこっちに得はないので無視。
こちらもそろそろ仕掛けたいが、そんな隙も与えるかと言わんばかりに攻撃が速くなっている。
うん、鬱陶しい。早くへばれ。
「ふん、かすりもしないかっ!じゃあ次はこれだ!」
あちらの魔力の循環が活発になる。遂に魔剣の能力を使うようだ。
「…貴様は精霊を見たことはあるか?ないだろうな、そんなもの普通なら只の伝説、まやかしに過ぎないと思うだろう。
「メアルに来てからそうゆう存在はいるのだと思い込んでいたが、ここでの精霊の扱いは地球で言う未確認生物や幽霊のようなものだ。僕は幻滅したよ。
「僕自体、そういった類いの話は好きだったが、現実にいるかと言われれば答えはノーだった。だった(・・・)んだよ!」
「…おいおい、勝手に話を進めないでくれ」
お前の言ってることがよくわからんのだ。まず理解をさせてくれ。
「理解なんてする必要はない。何故なら貴様はこれから…想像を絶する体験をするのだからなぁぁぁぁ!!」
途端、勇者の手元にある異様な雰囲気の刀が赤く溶け始めた。
それを例えるならマグマ。数十メートル離れているのにも関わらず、痛々しいほどに熱さが伝わってくる。
それは勇者の両手に纏わりつき、次第に形を形成して行く。
「…中々デケェ手だな、蜂にでも刺されたか?」
俺を覆い尽くせるほどの大きさ。長さにして2メートル程の手。
おいおい、オーガでももうちょっとマシな大きさしてんぞ。…マジで洒落にならねぇ大きさしてんな。ウサギなら泡吹いて死んでた。
「感謝しろぉぉぉっ!!貴様ごときが”火の大精霊”の力によって殺されることをなっ!」
戦闘態勢に入ったようだ。紅く輝く瞳でこちらを睨みつけてくる。その瞳には明らかに『勝った』と言わんばかりの表情がうかがえる。
・・・本格的に舐められてますね。
「ちっ!仕方ねぇ、ちと本気を出すとす・・・があ"ぁっっ!?」
走り出すために、出そうとした足を見る。
消えていた(・・・・・)。両足共に。
「ん?貴様、思ったより脆いな」
そして、目の前には肉塊と化した俺の両足を持つ・・・化け物がいた。
…フラグっぽいのたててますもんね。仕方ないよ。