表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/8

恋人と初めてをたくさん③

「お泊り!?」

「えぇそうよ。嫌だったかしら?恋人なら当然だと思うのだけれど」

「いや嫌、ではないんだけど…」


急、というか…。もっと早く言ってほしかったと言うか…。

でもよく考えてみれば付き合ったの今日か。

じゃあ仕方ないの、か…?


「てか桜凪さんのほうこそ大丈夫なの?突然恋人を家に泊めるって、その、ほら親の許可とか」

「親は滅多に帰ってこないわ」

「さようで…」


ということで半強制的に私は桜凪さんの家で一夜を過ごすことになったらしい。ちなみに母にこのこと(流石に友だちと言っておいた)を伝えると、イマジナリーフレンドを疑われた。


わ、私にだってリアルの友だちくらい!!!あ、いなかったわ。

いるのはお互いに互恵関係を結んだ恋人だけ。カナシイネ。


時刻は午後7時。

ちょうどお腹が空く時間帯である。


「食材を買いに行きましょうか。切らしていたのを忘れていたわ」

「え、あ、うん」


てっきり使用人の人が夜ご飯も作っていると思っていたが、そうではないらしい。


「ご飯は桜凪さんが作ってるの?」

「そうよ。うち、料理人は雇っていないから」

「そーなんだ」

「ええ。うちに来てくれるのは屋敷を掃除してくれる使用人の人だけよ」


外に出る。

制服のまま、私たちは並んで歩く。

4月。頬を撫でる夜の風はまだ少し冷たい。


「そういえば、言ってなかったわね」

「え、なにが?」

「なんで私が貴方に恋人関係を求めたか」

「あっ、たしかに。例の告白現場に偶然居合わせたのが私で、その私を恋人にすると何かと都合がいいからかと思ったんだけど…どう、かな」


例の告白現場。

そう、私は顔立ちの整ったバスケ部の先輩が桜凪さんに告白するところを目撃してしまったのだ。それで私が身代わりになった、というのが私の予想。


「半分正解で、半分不正解よ」

「半分正解かあー。ちなみにもう半分はなんなの?」

「それはまだ言えないわ。どうせ言ったところで分からないだろうし」


どうやら教える気はさらさらないようだ。


「けれどそうね、確実に言えるのは私は貴方をあの人から逃げるための隠れ蓑として利用した、ということよ」

「あの人って、桜凪さんに告白してきたあの男の先輩?」

「女よ」

「は…?」


女…?あのバスケ部のイケてる先輩が…?

たしかにあの人の隣を通り過ぎるときにいい匂いはしたけど。

いやキモいな私。


「昔からボーイッシュな見た目なのよ彼女」

「そーなんだ。昔からってことは、1年違いの幼馴染、とか…?」

「ああ、それも言ってなかったわね。一ノ瀬有栖。2年の女バス。そして一ノ瀬七海の実の姉よ」

「一ノ瀬さんのお姉ちゃん!??」

「そ。彼女の家は近所でね、昔から家族ぐるみで仲がいいのよ。まあ今は有栖姉さんとの関係が少しぎこちない、というか気まずいのだけれど」


昔からの付き合いってことは家族みたいなものか…。たしかにそんな人から告白されたら気まずくはなるだろう。


とにかくわかってきたぞ…。


「なるほど、それで居合わせた私に白羽の矢が立った、と」

「だって、まさか有栖姉さんから告白されるとは思わないもの。非常事態だったのだから」

「はぁ…」


やがて住宅街を抜けて商店街に出る。

数分でスーパーに行けるとは、立地も最高らしい。


「そういえば夜ご飯何作るのー?」

「貴方が食べたいものならなんでも作ってあげるわよ」


どうやらなんでも作れるらしい。

あらやだなにその自信分けてほしいわ。


「じゃ、じゃあ肉じゃが、とか…?」

「肉じゃがすきなの?」

「あっはい、まあ」


適当に思い浮かんだ料理を口に出しただけなんだけど…。


「私も好きよ、肉じゃが。味は濃いめがいい?それとも薄め?」

「濃いめがすき…」

「ふふっ、一緒だわ。和風は濃い味に限るのよね~」


なぜか上機嫌に微笑む桜凪さんの横顔を伺う。

やっぱり綺麗、だなぁ…。


「料理、好きなんだね」

「え?」

「だって、すごい楽しそう」

「そう、かしら…」


自分では気づかなかったとでも言わんばかりに、頬をむにむにし始める桜凪さん。


店内に入る。

桜凪さんは慣れた足つきで野菜コーナーに赴く。

じゃがいも、にんじん、いんげん。

色とりどりの野菜がカゴに入れられる。


そのままレジへ。


「お会計1206円で~す」

「あ、桜凪さん私出すよ。作ってもらうんだし」

「いいわよ。私も食べるのだから」

「いや、でも…」


桜凪さん、全然譲らない…。

私が全額折半するか割り勘にするか揉めていると、どこからか夫婦の声が聞こえてくる。


――母さん見て、あの子たち。


――あらやだ友だち同士で同棲しているのかしら。


――でも高校生っぽいし、友だち同士で同棲するかなあ


――じゃあ、カップルだったりしてね~


「…っ~~」


顔を赤くして俯く女の子がいた。

結構初心なのかな。

かわいい。


「と、とりあえずここは私が払うね!!割り勘ならあとでいいから!!」

「そ、そうね…」


髪の毛を指でいじりながらそっぽを向く桜凪さんを横目に、金額ちょっきしをレジに出す。


割り勘率は後で計算することにして、そそくさとスーパーをあとに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ