おっぱい小さいが何で悪いとや
TL見てて思いついた駄文。内容はまったくエロくありません。えっちな内容を御期待の方は素直にノクターンへ行くのだ。
「胸がEカップ以下のオンナはオンナとして見られねーなぁ」
残暑も抜けた中秋の正午。某県某高の昼休み。教室の端でアホ共と駄弁るタクミのクソボケが抜かした戯言は、新村ヒマリの耳に届いた。
弁当を突く手を止め、ヒマリは自分の胸元をじっと見る。
平凡な女子用ブラウスとサマーカーディガンに包まれた胸は、平たい。
いや、ヒマリはブラをつけているのだから、胸部には確かに起伏がある。
しかし、その起伏はブラウスとサマーカーディガンを押し上げるほどの隆盛を持たないだけだ。ゆえに平たい。日本最平坦の千葉県みたく平たい。
ヒマリの目玉が動き、机を挟んで向かいに座る吉根ヒビキの胸元へ目線を注ぐ。
ブラウスを大きく押し上げるその丘陵線は、日本海側と関東平野を分かつ越後山地の如く雄大な、G。大怪獣の頭文字と同じG。
身長はヒマリの方が10センチ以上高い。体力テストの数値も全てヒマリが上だ。
然れども、胸囲だけは吉根ヒビキの圧倒的大勝利である。その差は房州で山を名乗る鋸山(標高330メートル)と越後山地最高峰中ノ岳(標高2089メートル)くらい大きい。
ヒマリは光を失った目で吉根ヒビキの荘厳な胸元を凝視しながら、言った。
「何喰ってきたの」
千葉県のモンゴルこと八街市に耐えず吹く砂嵐のような声だった。
「え?」
友人の唐突な物言いに吉根ヒビキは戸惑う。が、ヒマリはお構いなしに繰り返す。
「何喰ったら、そんな育つの」
真冬の千葉県犬吠埼に吹き荒れる太平洋の寒風みたいな声だった。
「え?」吉根ヒビキは愛らしい丸目を瞬かせ「え?」訝しげに細め「えっ?」友人の目線を追って自身の胸元を見て「えー?」
ヒマリは三度繰り返す。
「何を食ってきたら、そんなデカくなるんだよ……っ!」
家康によって房州から追い出された里見氏の怨嗟みたいな声だった。
吉根ヒビキは春の日差しのような慈愛に満ちた微笑を湛え、のんびり調子で告げる。
「胸が大きくても良いこと無いよーヒマリんくらいがちょうど良いよー」
慈愛に満ちた笑みから吐かれる猛毒的マウント発言。女子は怖い。
ヒマリはスンッとなりながら、思う。
こいつ、殺そうかな。
割と本気だった。平らな胸の奥に沸き上がった殺意は7割ほどマジだった。ヒマリが長女でなかったら抑えられなかっただろう。
「お前、チチ絡みになると目つきがヤバくなるの何なん?」
机の下家に座る第三の女、辻村ショーコは呆れ顔を隠さない。その胸は神奈川県民の生活を支える丹沢山系の如く懐深いDカップである。
「うるせえ。殺すぞ」
ヒマリの口から吐かれた声色は、総州印旛沼のほとりで軍神上杉謙信勢へ汚物を叩きつけて撃退したという臼井城守り手衆を思わせる荒振りようであった。
「こわっ! 目がキマッてやがる」
「そんな思いつめることじゃないのにー」
辻村ショーコはドン引きし、吉根ヒビキは群馬県民を田舎者と笑う栃木県民のように微笑む。
かつて千葉県警が総出で対峙した君津神野寺の虎みたく唸るヒマリへ、辻村ショーコは嘆息混じりで言った。週末の大黒PAでバカ共の相手をする神奈川県警のような顔で。
「そこまで気にしてんなら、スマホでチチをデカくする方法を調べりゃいいだろ」
「とっくに調べたわ。殺すぞ」
「調べたのかよ……調べて、それなのか」
辻村ショーコは憐れみの眼差しをヒマリの胸元へ注ぐ。湘南海岸から望む太平洋の水平線みたく、平たい。
「それとか言うな、殺すぞ」
ヒマリはガチだった。東日本大震災で大火災を起こした京葉コンビナート並みに火が点いている。
「そんな目の色変えて気にするのって……」吉根ヒビキはちらりと教室の端でアホ共と駄弁るタクミをちらり「恋だねー」うふふと柔らかく笑う。
「恋じゃねえよ」ヒマリは即座に断じる。
「えー? 違うのー?」
吉根ヒビキはまじまじとヒマリを見た。宇都宮まで来て餃子を食わないで帰る観光客を見るような眼差し。
「ホントかぁ?」と辻村ショーコも怪訝そうにヒマリを見る。「なかなかに熱い視線送ってる時があるぞ?」
「そこまで熱量こめてねーよ」
ヒマリは疎ましげに顔をしかめる。
実際のところ、本当に恋ではない。女子バレー部のヒマリは放課後の体育館でよく顔を合わせる男子バレー部のタクミと“それなりに”親しい。ギャルゲー的好意度で言えば、『好き』になる手前。サイコロの出目が良ければ付き合ってやってもいいかな、と大上段に構える程度。
それなりの好感を抱いている男子が、自身がコンプレックスを覚えている胸周り絡みの戯言を抜かしていたため、ヒマリは非常に、とても非常にイラッとしたわけだ。
「面倒臭い奴」
辻村ショーコは『何県の出身?』と聞いたのに『横浜』と答える横浜市民を見るような苦笑いを返す。
「うるせぇやい」
ヒマリは拗ねた顔で弁当の残りを掻っ込んだ。
○
放課後。女子バレー部の部室にて、小娘共が制服やジャージから練習着に着替えていく。
なお、花咲くハイティーン・ガールの着替え描写に関しては、青少年健全育成の観点から省かせていただく。文句がある方はこんな条例を作った東京都や政治屋にどうぞ。
「胸を大きくするには大胸筋を鍛えると良いと聞く」
部長にしてエース・アタッカーの向井ジュンが練習着に着替えながら言う。
「とっくにやっとるわ。毎日筋トレやっとるわ」
ヒマリは噛みつくような顔で返した。
向井ジュンはヒマリを上回る背丈を持ち、スポブラの胸元は大きな曲線を描く。まるで秩父山地最高峰三宝山(標高2400メートル)のようだ。
「そんな無駄にデケェ脂肪の塊ぶら下げてんのに、あんな強烈なスパイクが撃ちやがってよ。どんな理不尽だオメー」
「そのイチャモンこそ理不尽であろう」
ガルルと唸るヒマリへ眉を下げ、向井ジュンはどんなに街を発展させても市民が地元ではなく池袋へ金を落とす埼玉県南部の川口市みたいな溜息を吐いた。説得を試みる。
「だいたいな。デカい者はデカいなりの悩みがあるのだぞ」
「金持ちの悩みが貧乏人に共感されっと思うなよ。余計に腹立つわ」
説得は通じなかった。人間は分かり合えない。
「マッサージはしてんの?」
着替え中だったリベロの本郷ハヅキが問う。小柄で俊敏な彼女の胸元は筑波山(標高約890メートル)のように慎ましくも、確かな存在感を放っている。北総造成地のように平たいヒマリとは大違いだった。
「毎晩、風呂上りにモミモミしとるわ」と自分の胸元で指をワキワキさせるヒマリ。
「なんでおっぱい揉むんだよ。間違ってるよ。リンパ線やバージスラインを揉むんだよ」
リベロ本郷は牛久大仏を寺院と勘違いしている旅行客を見るような顔で言った。
「ウチはそれでCカップになったよ」
「なぬっ!?」
ヒマリは即座にリベロ本郷の前に跪き、その手を取る。
「師よっ! 私はこれより貴殿を師と仰ぎまするぞ!!」
「また何か変な漫画読んだの? というか、おっぱい大きくする師匠とかヤだよ。勘弁してよ」
リベロ本郷は千葉と一緒くたにされて『チバラギ』と呼ばれることを厭う茨城県民のような渋面を返した。が、スイッチが入ったヒマリには通じない。
「さあ、師よっ! 教えを! 私に教えを授けたもう!!」
「いつまでバカなことやってる。練習にゆくぞ」
向井ジュンはヒマリの首根っこを掴み、リベロ本郷から引き離して部室の出入り口へ引きずっていく。
「HA☆NA☆SE!! そこにBカップがあるんだ! 夢のCカップがっ! 黄金のDカップが見えたんだっ!」
「キマってんのか、お前」
予防注射を嫌がるワンコロのように抵抗するヒマリに、向井ジュンは割と本気でげんなり顔を作った。
京成スカイライナーの如く、時は飛ぶ。
練習が終わり、ノッポな小娘共が部室に戻って練習着を脱いでいく。詳細な描写は省かせていただく。想像力を高めるのだ。人間の想像力は無限大。
妄言はともかく。
人の良いリベロ本郷は『教えを! 教えを!!』としがみついて離れないヒマリへ、仕方なくマッサージ法を伝授する。
「バストアップ・マッサージってのは、よーするに体の肉を胸へ集めることなんよ」
リベロ本郷は語る。
気づけば、胸周りが不毛な小娘共だけでなく、それなりの果実を持つものや最も実り豊かな向井ジュンまで集って“講義”を受けている。もちろん最前列はメモを取るヒマリだ(当初はスマホで“講義”を撮影しようとしたが、万が一に流出したら問題になるから、とリベロ本郷と周りに止められた)。
「えーっと誰かモデルに」
「はいっ! はいはいはいはいっ! 師匠っ! 立候補します!!」
「師匠はやめて」
リベロ本郷はしかめ顔を作りつつ、ヒマリを受講者達の前に立たせて話し始める。
「まずは二の腕のお肉からね」
ヒマリの長い腕を水平に伸ばさせ、二の腕を掴んで体へ向かって強く撫でていく。
「イメージとしては腕のお肉を肩口へ押し込んでいく感じね……ヒマリは締まりすぎ。筋肉ばっかで移すお肉ないじゃん」
両腕が終わり、次はお腹。リベロ本郷はヒマリの引き締まった腹筋周りを揉み始め、
「師匠! 手つきはもうちょっとエロくても大丈夫ですか!?」
「好きにしなよ」
ヒマリの軽口を冬の鹿島灘のように一蹴し、続けた。
「おへその辺りからお肉を胸まで上げていくイメージでやって。ただ、女性は子宮と腸の位置である程度の膨らみは必ず生じるから、お腹のお肉があまり引っ込まなくても気にしないこと……ヒマリ、持ち上げるお肉ないじゃん」
それから背中と脇へ。
「腕を回して、肩甲骨の辺りから脇のアバラの上を通って胸へ運ぶイメージね……ねえ、ヒマリ。あんたどんだけ筋トレしてんの? 運ぶお肉が全然ないんだけど」
潮来から先に高速道路が通らなかった頃の茨城県民みたいな困り顔を浮かべるリベロ本郷。
受講者の一部から『新村先輩、後は胸があれば完璧なのにね』『ヒマリは胸さえあればなぁ』『つまり胸も備えた向井センパイが最強だ』と声が上がり、名前が挙げられた向井ジュン自身はどこか羨ましそうに「ヒマリの身体は無駄がない。あれこそアスリート体型の理想ぞ」。
微妙な顔になりつつ、リベロ本郷は講義を継続。
「えーと。最後に集めたお肉を胸に馴染ませるように、リンパ腺や胸の筋肉に合わせてマッサージするの」
おっぱいを下から持ち上げるように揉んで大胸筋を解し、乳房を寄せるように揉んで肋間筋を解し、左右鎖骨の中心から左右のデコルテを通って乳房へ掛けて揉んで解す。
「とりあえずはこんなところかな。ひと月も続ければ、効果が出てくるよ」
『おお~』と小娘共が簡単を上げる中、人の良いリベロは京葉工業地帯の夜景みたく顔を輝かせるヒマリへ正直に言った。
「あー……ヒマリ? ヒマリは効果があるか分かんないよ?」
「なぬっ!?」ヒマリは目ん玉を引ん剝き「どういうことですか、師匠っ!?」
「今、説明しながら言ったでしょ。あんた、脂肪が少なすぎ。胸に集めるお肉がないんだよ」
「なん……だと……」
千葉ロッテマリーンズが悪夢の18連敗した時のファンみたいな顔になるヒマリ。わななきながら震える唇の間から苦悩をこぼす。
「こうなったら暴飲暴食して太るしかねえ……っ!」
「ふざけるなタワケ。太って動けなくなったらどうする気だ」
向井ジュンが割とガチ目の叱責を放ち、部員達が思わず背筋を伸ばす。なにせ本校女子バレー部の当代はノッポな向井ジュンと新村ヒマリの二枚看板からなるチームだ。その片翼がおっぱいを大きくするために太って動けなくなりました、とか笑い話にもならない。
「分からんのだっ! 持てる貴様には、持たぬ私の苦しみが分からんのだっ! 悪魔に魂を売ってでも救済を欲する我が心、貴様には決して分からぬ!」
「……お前、また何か変な漫画を読んだろ?」
唐突にシェークスピアの悲劇紛いな物言いを始めたヒマリに、向井ジュンはクルド人問題に頭を抱える川口市民のように眉間を押さえる。
「たかがチチに大袈裟な……」
「なんだとコノヤロー! ならオメーのチチを寄越せやコノヤローッ!」
ヒマリは眉目を吊り上げ、向井ジュンのたわわな実りを鷲掴みした。
「ひゃんっ!?」思わず可愛らしい悲鳴を上げる向井ジュン。
「でけえっ! 超柔らけえっ! ふっざけんなオメー、なんだこれチクショーッ!!」
向井ジュンの雄峰を乱暴に揉みしだきなが怒声を放つヒマリ。周りが慌てて止めに入る。
「新村先輩、御乱心!」「落ち着け、ヒマリっ! ジュンの胸を揉んでもオメーの絶壁は膨らまないっ!」「うるせえ、殺すぞッ!」「わああ、喧嘩はダメですよ先輩達っ!」
荒ぶる雌ゴリラと化したヒマリ。雌ゴリラに胸を揉みしだかれて半ベソの向井ジュン。ゴリラを止めようとする周囲。なんだこれと言葉もないリベロ本郷。
ぎゃあぎゃあと姦しく喧しい部室のドアが蹴破られるように開き、顧問の中城教諭(31歳、バツイチ)が怖い顔で乗り込んできた。
「お前ら、いつまで残ってんだっ! さっさと着替えて帰れっ!!」
○
日の沈んだ秋の夜。ヒマリは自宅を目指してママチャリを漕ぎ倒していく。
道中、アスリート的燃費のヒマリはコンビニに寄って給油する。ホットスナックや甘味ではなく、タンパク質とカロリーの豊富なエナジーバーをぼりぼり。
ちなみヒマリの帰宅スタイルはジャージである。可愛い制服姿なんて無かった。
色気もへったくれもない貧乳ノッポなヒマリが駆るチャリンコが自宅近くに差し掛かれば。見知った顔が二つ、バイクを弄っている。
小学校3年生から中学卒業まで同じ学校を通い続けた近所の古馴染みとその彼女だ。
古馴染みは篠塚ユウゴ。詩でも書いていそうな優男で見た目通りに物腰穏やかな好青年。ただし、病的かつ狂気的なスピード中毒者。
その彼女。橘和リコ。やはり小学校から中学卒業まで同じ学校だった。地元でも有名な変人女で、その見た目はマイルドヤンキーそのもの。
「こんばんは。新村さん。久し振り」
ヒマリに気付いた篠塚ユウゴは作業を止め、優男然とした容貌通りに丁寧なあいさつを寄越す。リコの方は軽く会釈を寄越すだけ。
「そーだね。久し振りだ」
チャリンコを止め、ヒマリはサバサバとした調子で応えた。
ヒマリとユウゴは男女の古馴染みではあるけれど、両者の間には愛情はおろか友情さえ乏しい。近所の顔見知り以上でも以下でもない。いわんやリコとの関係は互いの顔と名前を知っている程度に過ぎない。
なので、ヒマリはさっさと立ち去ろうと思ったが、昼飯時から延々続く“アレ”を他人同然の知り合いにも向けてみる。
「篠塚。ちょっと聞きたいんだけど」
「? なんだい?」ユウゴが相槌を返せば。
「あんた、おっぱいのサイズについてどう思う?」
「は?」想像の斜め上を越える質問に、ユウゴは思わず固まった。
「ほぅ?」リコは道端で財布を見つけたような顔になり「そいつぁ興味深いテーマだ。“俺”も是非ユウゴの意見を拝聴したいね」
ユウゴの端正な顔が悪名高き千葉県鎌ヶ谷市の渋滞地獄に掛かったドライバーみたくひん曲がる。傍らのカノジョの目つきに砂を噛んだような顔で沈思黙考した後。
「……女性の胸の大小は気にしたこと無いです」
「つまり、“アタシ”の胸に満足してるってことだな。よろしい。大いによろしい」
リコは詰まらん回答しくさってと言いたげに鼻を鳴らし、小癪なサイズの胸を誇る。セクハラ同然の問いを寄越したヒマリへ顔を向けた。
「まあ、フェミニストがどんな戯言抜かそうが、胸のサイズは女の人生を左右するってのは厳然たる社会的事実だからな。そのうえで言おう。大事なのは胸のサイズじゃあない。トータルバランスだ」
「ト、トータルバランス?」思わず鸚鵡返しし、ヒマリは自転車を降りてリコの前に赴く。「そ、それはいったい?」
リコは小癪な胸を抱えるように腕を組み、身を乗り出すように食いつくヒマリへ語る。
「パリコレモデルを見ろ。痩せすぎてド貧乳なんて珍しくねえ。だが、誰もが『美女』と判を押す。逆にどんだけ巨乳でもだらしない腹やケツをしていたら意味がねェ。アメリカのニュースに出てくる豚オンナ共を見てみろ。西瓜並みにデカチチでもアレを美女と呼ぶ奴ぁ偽善者とデブ専の奴だけだ。胸なんぞ一要素でしかない。重要なのはトータルでイイ女であることだ」
「おぉ…」
アクアラインが本当に実現した時の千葉県民のような感嘆を漏らすヒマリへ、リコは勢いを増して続けた。その勢い、首都高を通すためにあらゆる無理無茶無謀を押し通した御上の如し。
「新村。お前は胸が小さい。だが、その長身、その腰つき、その引き締まった尻。その長い手足。トータルバランスは既に一級品。トリプルAランクだっ! 自分の容姿に自信を持てっ! 自信こそ女の美貌と魅力を完成させる究極のピースだ!」
「おお……っ!」
ヒマリは蒙が啓かれた感動に身を震わせた。チョロすぎて将来が心配になる。
「なんなんだ、このやりとり……俺は何を見せられてるんだ?」
置き去りにされたユウゴの疑問は、少女二人に届かない。
空で月が苦笑いしていた。
○
「胸がEカップ以下のオンナはオンナとして見られねーなぁ」
昼休み。教室の端でアホ共と駄弁るタクミのクソボケが戯言を抜かし、新村ヒマリの耳にも届いた。
が、ヒマリは気にすることなく弁当箱を突く。
「あら。ヒマリん、今日は発狂しないの?」さらっと酷いことを吐く対面の吉根ヒビキ。
「分かってないな、ヒビキ」ヒマリは余裕しゃくしゃくに物知り顔で「大事なのはトータルバランスだ。胸なんぞ乳離れできん小僧共が執着する要素に過ぎん」
「なんか変なもんでも食ったのかお前」真顔で心配する上家の辻村ショーコ。
「まぁ聞けよ」
余裕を垂れ流すヒマリ。その様子は『まぁウチにはディズニーランドや国際空港や海があるから』と埼玉県にマウントを取る千葉県民のよう。
「胸はデカい方が男受けがいい。けどな? 胸がデカくても腹がたるんでたり、尻が垂れてるような女は相手にされない訳よ」
「た、たしかに」最近お腹周りが気になる吉根ヒビキは反論を持たない。
「それは男側の好みの問題だろ」
辻村ショーコの指摘は波に乗ったヒマリに届かない。
「ゆえに私はこう言おう」
ヒマリはバッと関東平野のように平たい胸を示し、不敵な顔で、言った。
「おっぱい小さいが何で悪いとや」
「おぉ~」
何やら大覚を得た友人に讃嘆を漏らす吉根ヒビキ。
辻村ショーコは怪しげな宗教にハマった友人を案じるような顔で、言った。
「お前、絶対なんか変な漫画かなんか読んだろ……」
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